厨二病でもいいじゃないか
「ククッ……、如月創きさらぎはじめなど所詮人間界での仮の名に過ぎぬ……、我が真名は[寿座蒼龍]。2000年もの刻を生きる蒼の使い手なり……。」
「あっ、おにーちゃんがまたイタい事言ってる……、どんな精神病院に連れてけばいいんだろ……。」
なんか俺がかっこよく気持ちよく自己紹介をしている時に口を挟んできたバカ妹がいるが気にせず続けるぞ。
「……って、おにーちゃん!今のは口に出ししちゃダメだよね!?ライトノベルでいう所の地の文ってやつだよね!?」
「ああっ?俺、今、声に出してた……?」
「出てた出てた!(バカ妹がいるけど)とかなんとか言ってた!!」
「ああー、わりーわりー」
「んもー、相変わらず心がこもってないなぁ……、つくるちゃん悲しいぞ。」
……、このバカが[寿座 つくる]、一応俺と血が繋がった唯一の存在だ……。前世では盟友だった……。
「ちょっと待って!私は寿座とかいう変な名字じゃなくて如月つくる!盟友とかじゃなくて普通に妹!!しかも(血が繋がった唯一の存在……)とか言ってるけど普通に親いるじゃん!なんで勝手に親の存在なかったことにしてるのよ!!」
ゴホン、さすがに寿座つくるの件くだりは冗談だとして、こいつはこいつ自身が言ってる通り俺の妹だ、自分のこと『ちゃん』付きで呼ぶ残念なやつだが一応俺の妹だ……。
「ところでおにーちゃん、今日学校はないの……?」
「相変わらず痛いところを突いてくる妹だ……、女の子なんだから突くんじゃなくて突かれるべきだろ!!」
「急な下ネタで誤魔化さないで!しかもさすがにその下ネタは無理があるよ!?おにーちゃんの残念な下ネタのセンスの無さ露呈されても困るんだけど!?」
はあ、俺のこの超最高級大草原不可避な下ネタのセンスを分からないなんて……、つくるには後でみっちり俺の下ネタの素晴らしさを知らしめてやる必要があるな……。
「んで?下ネタも言えない残念な創さんはどうして今日おうちにいるのかな?」
「やめろ!急な名前呼びやめろ!!俺はおにーちゃんって呼ばれたいんだ!!そのためにわざわざ普段からつくるに話しかけてもらえそうなフラグを立てまくってたんだぞ!」
……、何故だ?何故つくるはこんなにも嫌そうな顔をしているんだ?兄が妹に『おにーちゃん』って呼ばれたいなんて、そんなの妹を持つ世界中の兄の共通理念だろ?つくるもそれを分かって俺の事『おにーちゃん』って呼んでくれていたと思っていたのに、分かってくれていなかったということか……?、創おにーちゃんは今泣きそうです。いや、もう泣いてます。
「……、おにーちゃん?どうしたのさ急に泣きだしたりして……、気持ち悪いよ?流石のつくるちゃんでもちょっと引くよ……?」
「ああ、ごめんな我が妹よ、これからも末永くおにーちゃんと呼んでくれ……。」
「……、よくわかんないけどいい加減質問に答えてよ、どうして創おにーちゃんは今日学校に行ってないの?」
「フッ……、その可愛くてちっちゃい頭でよく考えてくれ……、学校というものは週に5日、朝の8時半から夕方の5時まで……、それに交通時間でプラス1時間としよう、これは完全なるブラック企業だと思わんか……?つくるはこんな生活耐えられるか……?」
「耐えられるも何も、つくるちゃんは今日はたまたま学校の創立記念日だから休みなだけで普段は学校ちゃんと行ってるよ?しかも、帰宅部のおにーちゃんと違ってつくるちゃんはちゃんと卓球部に入ってるからおにーちゃんより朝早くから夜遅くまで学校行ってるよ?部活あるから土日もあるし、朝7時から夕方の7時まで、交通時間でプラス1時間だとしたら、おにーちゃんの高校よりつくるちゃんの中学校の方が完全なるブラック企業だよ?」
はあ、どうしてつくるはたまにこうやって頭の回りが早くなるんだ……、仕方ない、真実を伝えるとするか……。
「よく聞け我が盟友よ、実は俺は蒼の使い手として地球を救っている、それにはこんなに偉大な俺だとしても多大なる魔力を使うんだ……、よってその魔力を蓄えるために週に6日は家でその魔力を蓄える必要があるんだ……。」
「週に6日って……、じゃあ学校には週に1日しか行かないの?」
「そういう事だ。水曜日のみ学校とかいう戯れに付き合ってやるんだよ(魔力……の辺りに突っ込まないなんてつくるもようやく俺の偉大さが分かったようだな……、ククッ……。)」
「はぁ、そうですか……、これはいろいろ突っ込んでも無駄だろうからあとで精神科探してあげるねおにーちゃん……って、あっ!水曜日って明日だよ!明日は学校行くんだよね!?」
「そんなぁ……。あと、俺は病気じゃないからできれば精神科は勘弁して欲しいな……。」
《水曜日》
可愛い妹が寝ている俺の上にまたがっていた、全裸で。
いやいやいや待て待て待て、ありえん。ありえんだろぉ!?ちょっと落ち着け自分。よく考えたらここはベットだ。そうだ、これは夢だ、夢に違いない。とりあえず薄目でみる。つくるに俺が起きてるのがバレるとめんどくさそうだからな、まあ、夢だろうけど。
「おにーちゃん、はやく起きてよー♡」
そういってつくるは俺に顔を近づけてくる、全裸で。
待て待て、落ち着け夢だ夢だ。ああ、それ以上顔を、というか身体を近づけるな。あああぁぁ胸が近い胸が近い、いくら妹とはいえどもう中学生だ。それなりに身体も発達している。これ以上女子中学生の裸体をみるのは辛い。ちなみに目を閉じても香りが……!って香りを感じるって事はこれ夢じゃないやん現実やん!!もう無理やめてやめてよぉぉぉぉぉ!
「んごふぁ!」
うっわ、やっべ、変な声を上げてしまった……、俺はそんなに耐えれなかった。男子高校生として当たり前だとは思うが。
「なんだぁ、おにーちゃん、ちゃんと起きてるじゃん、今日は水曜日だよー?学校行くよね?」
「はいはい行きます行きます精一杯学業に専念させていただきます!ですので早く離れて下さい俺が法に触れる前にっ!!」
「法に触れる……?なんのこと?」
どうやらこいつは本気で分かっていないらしい。
「頼むから……、服を着てくれ……」
「……、へっ?」
そういってつくるは自分の身体(全裸)を凝視する。いやまて、どうしてそんなにまじまじと自分の裸体を凝視する?なんなんだ我が妹は……。
「……、おにーちゃんのバカッ!」
「……、はっ?」
「おにーちゃんのバカバカバカ!!なんなのなんなのなんなの?!バカバカバカバカ!!どうせ妹の身体みて発情してるんだろこの破廉恥高校生!そんなに妹の裸体が面白いか!?今もそんな困ったような顔しておいてどうせ心の中で(つくるちゃんの裸だグヘヘ、えっちスケッチワンタッチ✩お触り大好き♡)とか思ってんだろ!?服を着忘れたつくるちゃんもバカだけど!!!」
「いやいやいや!!服を着忘れたってなんなんだよ!!そもそもワンタッチって、俺まだ触ってねーだろ!!」
「今『まだ』って言ったー!いつか触るつもりだったんだな!?おにーちゃんのバカバカバカ!!ぎゃぁぁぁぁー!!!」
そう言い残しつくるは俺の部屋を出ていった。何なんだ一体……。俺、何も悪くないよな……?それにしても服を着忘れたって、我が妹ながら残念すぎる……。そんな事でなんで俺がこんな思いしてるんだよ……。まあいい、魔術を使えばつくるの機嫌を直すことなど難しい事ではないからな……ククッ。
それにしても、水曜日か……。昨日言っちまったもんな「水曜日に学校行く」って。さすがに妹に嘘つくなんてそんな罪深き事はしたくないな。仕方ない、学校とかいう戯れに付き合ってやるとするかククッ……。
つか、時計を見たらまだ5時半だ。なんでこんなに早く起こすんだ……。二度寝しようとも思ったけどまた起きる時につくる(全裸)とご対面するハメになったらそろそろ俺が持たない。残念だが、二度寝は諦めよう。
朝の5時半につくるに全裸で起こされた俺は、とりあえず制服を着て台所へ向かう。言い忘れていたが、俺達の親は大学の講師としてフランスで働いている……。ちなみに両親共にだ。なんでそんなハイスペックな親から残念な俺と、もっと残念なつくるが生みだされたのかよく分からないがまあいい。そんな訳だから家事全般は俺が請け負っている、ちなみにつくるの作る飯は食ったことがないし、つくるが洗濯やアイロンがけをしている所も見たことがない。(めんどくさがりだからな、あいつ……。)
てなわけで俺は眠い目を擦りながら台所へと向かっている……って、えええ?!
まてまて幻覚だ、ありえん、ありえんぞ!我が妹がいっちょまえに調理をしているなんて!!
「ど、どうしたつくる!とうとう頭がおかしくなったのか?!俺の治癒魔法ヒーリング・マジックをかけてあげようか!?」
「なーに言ってるのさおにーちゃん、私だってたまには調理くらいするよー。」
「たまにはって、お前、今まで調理した事あるっけ……?」
「おかーさんがフランス行く前に一緒にクッキー作ったことあるもん……。」
いやいやいや、親がフランス行く前って……、
「……、お母さんフランス行ったのいつだっけ?」
「…………、私が8歳の時。」
8歳……、ちょっと想像以上でした……。
「そ、それで?なんでまた急に調理なんかしてるんだ?」
「べ、別にいいじゃん!さっきから漂う変な空気を何とかするために『料理できる可愛い妹』のレッテルを貼ろうとしてた訳じゃないんだからね……。」
「最後の方よく聞こえなかったが?」
「どうでもいいでしょバカおにーちゃん!!いいから早く食べて!冷めちゃうよ!!」
食卓を見るといろいろな料理が所狭しと並んでいた。
「って、多くね?こんなに沢山いつ作ったんだ?」
「えー?さっきだよ?」
……、こいつはもしかしたら凄い才能を秘めているのかもしれない、さっきの全裸事件から今まで15分くらいしか経っていない、なのに我が妹はこんなに沢山の料理を作っている、しかも8歳の時以来だから約10年ぶりくらいの調理だった事だろう。あ、あれか、もしかしてめっちゃ不味いのか……、
「って、ウマっ!なんだこれ!!」
「隠し味っていうの?そんな感じのをいろいろ入れてみたからねー。」
つくるは超ドヤ顔だ、でも確かにこれはドヤ顔に値するかもしれない、めっちゃウマい。15分で作ったとは到底思えないクオリティだ。
「お前、料理人になったらどうだ……?」
「えへぇ、パティシエで良ければ考えとくよ!それよりおにーちゃん、早く食べて!一週間ぶりの学校遅れちゃうよ!!」
「つくるの作った料理ゆっくり食べたいから今日学校行かないことにするわ。」
「嬉しいけどダメ!!!学校行くよ!!」
「そう焦んなって、瞬間移動ワープを使ったら一瞬なんだからさ……ククッ。」
「早く!早く!」
「あ、無視ですか……。分かりました、早く食べます……。」
「「ごちそうさまでしたー!」」
はぁ、つくるの飯美味しかったなぁ、これからは調理はつくるにやらせるとしよう。俺に褒められて天狗になってるだろうし。
「おにーちゃん!これからは調理はつくるちゃんが担当してあげるからね~♡」
ほらみろ、俺の毎日の仕事が一つ減った、嬉しいこった。こいつは褒めとけばすぐ調子乗る、単純だなぁー。
「じゃあ、学校行こうねおにーちゃん!」
「行くけども、つくるの中学校と俺の高校逆方向だろ。」
「おにーちゃんの高校ついてくー!中学校はその後でも行けるもんねー!」
「まあ、中学校遅れないんだったらなんでもいいけど、まあ、遅れそうになっても俺の力でなんとかなる。」
「おにーちゃん……、ううん、なんでもない……、もうおにーちゃんの性格の事は諦めるってつくるちゃん決めたの……。」
なんだこいつ、まあ、何でもないって言ってるからまあいいか。
「じゃあ早く準備しろ!俺が久しぶりに戯け事に付き合う日なんだからな、ククッ……、俺の魔力が暴走しないようにしなくてはな……。」
ふふっ、久しぶりの学校だ。
「おにーちゃん!準備かんりょー!行っくよー!」
「おおおー!!」
明るい空が眩しいな、久々に外に出る俺を歓迎してくれている。
「つくるちゃんとおにーちゃん、どっちが早くチャリでおにーちゃんの学校まで行けるか競走しよー?」
「つくる、お前さ、俺の高校どこだか知ってんの?」
「あったりまえじゃーん!偵察済みだよぉ!」
いやん怖い、なんだこいつ。まあ、俺もつくるの中学校偵察済みだけどな。
「じゃあ、位置について、よーいドンっ!」
俺は全速力でチャリをこぎだす……が、
「おにーちゃんおっそーい!!」
つ、つくる、速くね……?
「つ、着いた……、長き道のりだった……。」
「お、おにーちゃん……、家からここまで2キロしかないよ……?まあいいや、つくるちゃんは今から中学校行ってくるね。おにーちゃんも来る?」
「え、遠慮させていただきます……。」
ちょっともう疲れた……。
「じゃあ、バイバイおにーちゃん!」
そう言ってつくるは颯爽とチャリをこいでいく。
まあ、何はともあれ、戯けの場に着いたぞっ。俺の魔力の暴走を防ぎきるぞっ……