〜Day1その二〜 入学式、先生イケメン
キーンコーンカーンコーン
学校のチャイムが町全体に鳴り響く。入学式が始まった。入学式は体育館の中で行われた。保護者、生徒合わせ三百人程か。
「皆さん御入学おめでとうございます」
校長先生の話が始まった。頭に少し寂しさがあるけど優しそうな先生だ。でも相変わらず校長先生の話は長い。何処でもそうなんだなと、僕は少し思ってしまう。
ん?なんか腰が重たい。もうそんな歳?ふと目を下にやると何だこいつ。白い毛がふわふわ、もふもふで暖かい。でも腹巻みたいに平べったく巻きついている。そのうえについてるつぶらな瞳で僕のことを見ている。なんか可愛い。
「ご主人様、これはなにやってるのです?」
「これは入学し……ってお前誰だよ。ご主人様ってなんだよ」
つい大きな声を出してしまった。やべっと身を小さくしたが案の定周りの目が僕一点だった。校長先生の話が一回止まったが続けてくれたおかげでなんとかなった。今度は小声で小さなもふもふに聞いてみる。
「お前誰?なんで僕に巻きついているの?」
「申し遅れました。わっちの名前はブール・ザ・べベールなのです。此処に巻きついているのはわっちにも分かりません。目が覚めたらここに。」
見た目可愛い割になんか凄い名前。自分の事[わっち]って言うのか。そこも面白い。
「そっか。それでご主人様って僕の事?」
「はいなのです」
「なんで僕がご主人様?」
「わっちにも分かりませんが、なんか運命と言いますか、直感と言いますか、」
「そ、そうか……」
「あ、後みんなの目が僕以外見えてないみたいな感じだったんだけど」
「はい。そりゃもちろん。わっちはご主人様以外には目に見えませんし、聞こえもしないのですから」
って事は僕は……さっき一人で叫んだ変人ってことか……。みんなの僕に対する第一印象は何になったんだろう。
そんな事考えていたらいつの間にか入学式が終わる頃だった。
これから何事も無く暮らせたらいいけど……。
「それでは皆さん、自分のクラスへ向かってください」
入学生がクラスごとに列になり一組から順番に自分の教室へ向かう。
「ご主人様は何組なのですか?」
「僕は三組」
周りの人に聞こえないよう小さな声で囁く。名前順に並んで二階にある教室へ向かう。教室に入ると木の机と椅子、机の上には教科書の山。
中学校の教室とあまり変わらないな。
自分の席に座り先生を待つ。なんだか落ち着かない。
「ねぇ、君。俺と友達にならない?」
後ろを振り返るとにこにこと笑っている元気そうなクラスメイトが。急で少し返事に困ったがそんなのお構いなしに言葉を続けていた。
「俺、松山 元気!よろしく!」
「え、あ、うん。よろしく」
僕は覚束無い返事を返した。それもそのはず中学生の頃は友達なんて無かった。最初はいたけど何度も裏切られた。でも高校は違うのかなと希望を持てる。なんでだかは分からないけど。
「君の名は?」
「え、あ、ファール・ルーシェ」
「へぇー、君外国人?」
「え、いや、お父さんは日本人でお母さんはアメリカ人」
「じゃ、君はハーフなんだね!その目きれい。」
「あ、ありがとう」
初めて友達から言われて少し照れる。ん?友達?もう友達になったの?
「ね、僕達友達なの?会ってすぐなのに」
「なんだよ、俺達友達!あって気があったら友達!」
僕はなんだか今までにない暖かさに包まれた。嬉しい。こんな人が後ろにいてよかった。
「お母さんどんな人?」
「え、金髪で僕と同じオッドアイで髪が胸ぐらいまであって……胸も大きい」
最後の言葉は声が小さく籠るように言った。
「え?なに?最後聞こえなかった」
「いいよ聞かなくて。最後のは何でもない」
顔を下に向かせたまま話す。すると前の扉がガラガラと音を立て横に開く。
「皆さんこれからよろしくお願いします。このクラスの担任の神道 沙汰と言います」
そう言いながら黒板に自分の名前を書いている。ふむふむ。[じんどうさた]と言うのか。なんか神々しい。見た目は若く、声は穏やかで聞きやすい。女子達がこそこそと何か話している。女子から見ればイケメンなのか?そんな事僕にはわかんない。
「なぁなぁルウシェ、あの先生かっこよくねーか?」
「え、あ、うん」
お前もかっこいいと思ってるのかよ
最後まで読んで頂きありがとうございます。まだ日常生活が続いてつまらない部分もあるかと思いますがよろしくお願いします。