カムバック!我が日常!!(3)
大変遅くなりましたが第三話です!!お楽しみ下さい
「それでは今日の講義はここまでだかんね」
教授の「終わりだかんね」の声と共に部屋がざわつき始めたと同時に俺はカフェの指定席へと向かうため手早く荷物をまとめ席を立つ。
「やぁやぁ、小鳥遊くん♪ 」
「んあ、あーっと、式野さんだっけか」
「相変わらず気の抜けた挨拶だねぇ」
「まぁ、性分だからどーしようもないんで」
「まぁ、小鳥遊くんの気力がないのは置いといて、約束したでしょ?カフェでなんか奢るって」
「そうでしたね...」
屈託の無い笑みをこちらに向けてくる小動物式野さん。ゆるふわ代表ともいえる可愛い容姿、そして八坂が片恋慕している相手でもある。俺にもうちょっと気力があれば惚れてるレベル。だがしかし、そんな気力はとうの昔に廃品回収か何かに出してしまったようで...
「まぁ、俺の懐具合を考慮してくれることを願うわ」
「ははっ、小鳥遊くんらしいや」
らしい...って式野さんよ知り合ってまだ2時間たってないのだが、やっぱりハイスペックな女子は恐い。
「おら~まてお前ら~!」
「んあ?」
「あぁ~、八坂くん」
「ういっす!てか、小鳥遊おいて行きやがったな?お前が出てった後色々聞かれたんだがどうしてくれる」
「良かったじゃねーか、八坂にも春が来て」
「モテ期かぁ~いいねぇ~♪」
「違うんだよ、こいつこいつ」
万年モテ期であろう式野さんがゆるふわな語尾でゆるふわな内容を呟いた後に八坂が続けた。何故か八坂の指が俺を指している。
「なんで俺が話に出てくるんだよ?」
「こっちがききたいわ、『小鳥遊君って合コンとか興味あるのかな?』とかさ色々訊かれてたんだよっ」
八坂が俺の額を小突く、本日二回目。
「やめろっつの、でも今さらだな俺は枯れてるって事になってるんだろ?」
「まぁ、友達と喋ってても小鳥遊くんって枯れてるよねっていう話はよくでるけどね」
「こいつ、高校からすでにそうなんだよ式野さん」
「あらら、青春じゃなくて、沈黙の春だったんだね」
「...おっしゃるとおりで」
さて、俺こと小鳥遊文弘が通っているここ県立 高山大学はそれなりの規模とそれなりの生徒数そして、地方ながらもそれなりの有名校...らしい。そんな高山大の特色を挙げるとするならばカフェの多さだと感じている。キャンパス内にある3つの棟の近くにそれぞれひとつ、そして食堂に併設されているものがひとつの計4つもあるのだ。そして、俺たち一行はその中でも人の少ないC棟のカフェテリアへと足を運んだ。
「さて、指定席指定席と...」
「席とられてんじゃん」
「へぇ、小鳥遊くんあの席が指定席なんだ」
指定席をとられていることはさして問題では無い、よくあることである。では、何が問題なのか...座っていた方々が向かってくることである...
「八坂、お前なんかした?」
「なんもしてない、てかあいつお前の前の座席だろーが」
「あ~!さわちゃんと岸部君!」
流石、いかにも顔の広そうな式野さんやはり、かなりの人脈の持ち主である。この人が今、噂を広げたら晩飯の時間にはブラジルまで伝わっている気がする。
「おー、式野。と枯れなし、と八坂だ」
「あー、岸部は知ってるわ。小鳥遊の前の席のやつ」
「そそ、枯れなしの前だ」
「枯れてねぇって」
俺のことを枯れなしと呼ぶこのスポーツ刈りの失礼な奴が岸部である。名前はまだ知らない。
「小鳥遊くん、八坂くん。紹介しよう!この綺麗な黒髪の美少女が永沢 凛子さんなのです!」
式野さんに紹介されたのは、白い肌と背中の真ん中程まで伸ばした黒髪が印象的な女性、永沢凛子さんである。
「な、永沢です。よろしくお願いします」
「え、あー、よろしくお願いします」
俺がそう言ったとき八坂がニヘッっとした顔でこちらを見ながら、
「永沢さん、こいつ恥ずかしいとき首の後ろに左手当てるんすよ」
ハッと思ったときには遅かった、既に左手は首の後ろに...これだから古い付き合いの奴は油断ならない。
「へぇ!」
「へぇ...」
「へぇ♪」
(小鳥遊わかりやすっ!)といった目で見てくる3人の目線を逃れるべく二人が座っていた窓際の席につく。
「小鳥遊くん、私はBセットで!」
「お値段するんでAセットじゃ駄目っすか」
「仕方ない、Aにしてあげよう♪」
「小鳥遊、俺はコーラな」
「自腹な」
不甲斐ない俺の財布事情を考えてAセットにしてくれた天使式野に便乗しコーラを奢らせようとした悪魔の手先八坂の攻撃をかわした後、
「なぁ、枯れなし。永沢が話があるって言ってたんだけども」
「んあ?えと、永沢さんどした?」
「その、今度の休み都合がよかったらどこか行かない?もちろん、八坂君とか式野さんも一緒で...」
「え?こ、今度の休み?」
「どうかな?」
普通の男子なら永沢さんのようなお方に誘われたならば二つ返事で受けるだろう。OKしたいとこだが、休日を返上する気力は残っていない。さらに、休みといえば俺には一日ボーッとするという大事な用事がある。ここはやはり丁重に..
「あ、いいね!ちょうどこいつも用事無いし」
なっ!八坂ぁ...またである、八坂の得意技『貴方の休みは用事と共に去りぬ』だ。何故かこいつは俺の予定を把握しているからたちが悪い。
「で、でも何故に俺を?」
「いや、その、今日の講義前のやり取り見てたら思ってたよりも喋りやすそうな人だなと思って...」
「そ、そっかそっか!」
八坂ぁぁ~~!!俺の休日...お休み...
「じゃ、俺も一緒に行くからな!小鳥遊」
「私もご一緒させてもらうね!小鳥遊くん」
「枯れなしも八坂も式野も行くならいっその事この5人で行こうぜ!」
岸部の提案にみんないいね!と声を揃えて同意する。ツイッターかよ。
「久しぶりの用事だなっ!小鳥遊!!」
こうなったらもう、どうにでもなれだ。さらば我が休日、我が日常。
おでかけ用の服あったっけ?