第二話 モテモテ薫
続きです。
キーンコーンカーンコーン
昼休み。昔は至福の時だったが今は気の休まる暇がない。
「大野君、一緒にお弁当食べない?」
早速来た。クラスメイトの女子から食事のお誘いだ。
「いや俺弁当ないし」
丁重にお断りする。
「!…もしよかったらこのお弁当食べない?じつは間違えて二つ作ってきちゃって…」
「わ、私もちょっと作りすぎちゃって、一緒に食べない?」
「ちょっと、一緒にお弁当を食べるのは私よ、」
「なんなのアンタ」
ものすごい険悪なムードになってきた
「俺、山野辺と学食を食べる約束してるから…武、行くぞ」
「ええー、小等部の教室はここから一番よく見えるからここがいいんだけど」
「い・く・ぞ」
俺は巨体を引きずって急いで学食に向かった。
「うう、昼休みは教室で幼女たちを見ながら飯食うのが日課なのに…」
「そんな日課は今すぐやめろ」
武の抗議を一言で切り捨て、学食のメニューを見てみる。
うちの学校の学食は味がイマイチだが、種類は多いんだよな。
ランチセットでおかずが選べるようになっていたり、おかず単品で頼むこともできる。
だから弁当が足りなかった人は学食で余分におかずを食べたりする。味が普通だから、ほかの面でいろいろ工夫しているのだろう
「よし、俺はAランチでおかずは鯖味噌にする、武は?その弁当だけでは足りないだろ、単品のおかずたのむか?」
武に聞くと、しばし考えるように腕をくみ、言った。
「おかず?あぁ、給食で嫌いなものが出たときの幼女の苦悶の表情とかね、もう最高のおかずね」
「今から飯をて食べるってのに下ネタ言うんじゃない!」
「え?下ネタ?なんで?」ゴソゴソ、ピラっ
懐からなにかを出した。幼女の写真である。
「よし、いただきます」
「幼女の写真をおかずに飯食な!」
「ううん、まいうー」
ほんとうに白米だけを食し、目線は写真から外していない。
その写真に身をぼえのある姿が…
「…おまえ、その写真に写っているの…」
「薫の妹だね、あいかわらず、可愛いん」
「俺の妹をおかずにめしをくうな!というかこの写真…し、下着がみえてるじゃないか!」
「下着?あぁ、ちょっとパンツが見えてるだけじゃん。」
「没収!」
「なぜだっ、俺のおかずぅ~」
「やかましい変態殺すぞ」
放課後になった。
黒川に呼ばれていたが
…見つかる前にとっとと帰ろう。
「武、一緒に帰るぞ」
「え?俺今日小等部の方によって写真とってから帰ろうかと…」
「よし帰ろうすぐ帰ろう、というか帰らせる」
念の為に裏門から帰ろう。人も少ないはずだ。
「うがァー、写真、写真、小学生、小学生、しょーがくせー」
「やかましい変態」
変態を引きずりながら裏門までやってきた。
ふう、やっと学校から出れる
「薫」
名前を呼ばれ振り向くと見知った顔だった。
「林檎じゃないか、どうした」
「ちょっと薫に用事があって」
木島林檎、学年が一つ下。小等部からの付き合い、また家が近所ということもあり付き合いが長い。妹みたいなものだ。
「林檎ちゃん、ひさしぶりぃ!」
「寄るな」
汚物を見るようなめで武を睨んだ。
林檎は武とも不幸なことに腐れ縁だ。
しばらく前に
「このまま成長が滞ったまま二、三年経てば合法ロリだ!」
と発言したため見た目が幼いことを気にしている林檎には嫌われている。
「ああ、なんか罵倒されるのイイ」
「私の友達なんだけど、薫に要があるんだって」
武の存在は完全に無視されている。このスルースキル欲しい。
「要?なんだ?」
「……」
林檎の後ろには大人しそうな女子がいた。
俺と目が合うと頬を赤く染めうつむいた。
嫌な予感。
「じゃ、あとは若い者同士で~」
「林檎ちゃん、林檎ちゃん、あめちゃん食べる?」
「子供扱いするな、お前も邪魔だからこっち来い」
「あめちゃん・・・、美味しいのに」
ずるずるずる…
あんな小さな体のくせして、いとも簡単にバカの巨体をひきずっているはなかなかすごい画だった。
女生徒「………」
薫「…………」
まぁこっちの方も、画になるような状況だが。
しかし、見ない顔だな、一年だろうか?
なかなかに綺麗な顔立ちをしている。男子にモテるだろうなぁ。
顔を赤らめたままずっと下を向いていたが、意を決したようで、顔をあげ、いった。
愛花「い、一年D組の早乙女愛花です。あ、あのっ、わたし、ずっと前から先輩のことがす、好きでした。よかったら、付き合ってください!」
D組ということは、林檎と同じクラスか、
・・・まぁ、雰囲気的にこうなるのは予想していたが。
「…あー悪いんだけど、ゴメン」
この子には申し訳ないが、答えはもう決まっている。俺は付き合えない。
「っ!お付き合いしている人がいらっしゃるのでしょうか?」
「いや、いないけど」
「ならっ」
「ほんとに、すまん。でもこうして気持ちを伝えてくれて嬉しく思う。」
「っ、…はい」
この後、この子をなぐさめ、別れた。
つ、疲れた。
女の子の涙ってのは何度みても心に刺さる。
「いい子だったでしょ?」
茂みから林檎と武が出てきた。
「まぁ、そうだな」
「しかしあんたも大変ね、毎日、毎日呼び出されて告白なんて」
「ほんとだよ、女なんてめんどくせえ、」
「うわ、わたしが男だったらあんたのことぶん殴ってるよ」
「うるせえな、お前も俺のおかげでイイ思いしてるんだろ」
「えへへ、まあね」
林檎はレズである。俺に振られて傷心した女の子につけこみ、色々してるらしい。
詳しいことは知りたくないが。
「林檎ちゃんで百合の妄想してたら鼻血が出てきた。」
バキッ、バシっ、バカっ、ドゴっ
「ちょっ、まっ、」
二メートルある巨漢を足蹴にするちんまい女子高校生。
なかなかお目にかかれるものではない。
「くぉラー!!」
聞き覚えはあるが聞きたくない怒鳴り声が聞こえた。
「げ、黒川っ」
「大野っ、山野辺っ、お前ら放課後残っとけといっただろう!」
黒川が鬼の形相で追いかけてきた
「やばい、にげろっ」
「了解」
「あ、ちょ、まって」
「ぜぇ、ぜぇ、くそ、老女分際で、なかなか、ぜぇ、やるではないか。」
「スーツとハイヒールでなんであんなに足が早いの・・・」
「化物か・・・」
二人共苦しそうに顔を歪め息を切らしていた。
俺も深呼吸して息を整える。
途中、黒川は追って来るのをやめた。
流石に学校から離れればまずいのだろう。他の仕事にも差し支えるのだろうしそもそも俺たちばかりにかまってはいられないはずだ。
だがあのまま追いかけられていたら確実に捕まっていただろう恐ろしい。
普通スカートが避けたり、ヒールが折れたりするのではないか?
「何者なのあの先生?」
林檎が心底困惑した顔で聞いてきた。
「俺たちにもわからん、だが来年はお前の担任になるかもな」
林檎は嫌そうな顔をした。
まぁその反応が普通だろうな。
「はぁ、はぁ、どうせ追いかけられるなら幼女がいい・・・ハァハァハァ」
林檎は嫌そうな顔をした。
まぁその反応が当然だろうな。
「この後真っ直ぐ家に帰るの?それともどっか寄り道してく?」
息を荒げている変態は無視すると決めたらしい。
「イヤ、疲れたし、帰るよ」
今日はなぜかいつもより疲労感があった。
早く帰って寝たい。
「じゃ、またあしたな」
「ええ、さよなら」
「妹ちゃんによろしくね」
この三人を遠くから眺めている男がいた。
「大野…薫…」
まだ続きます。よかったら読んでクダサイ。