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第十五話

*****************************************

side袁紹


「それでは袁紹殿、これにて失礼いたします。」


そう言うと周瑜は見事としか言いようの無い礼をして袁紹陣営を去っていった、


「姫~あれで良かったんすか?」

姫と袁紹の事を呼ぶこのショートカットの娘は文醜、

袁家二枚看板のうちの一人、

脳筋の残念な方と影で言われて居るとか居ないとか、


「何がですか? 猪々子(いいしぇ)さん。」

猪々子とは文醜の真名である、

「だってほら、確か孫策ってあれだったでしょ、えっと何だったっけ? 斗詩(とし)~。」

と隣に居るおかっぱの娘に抱きつく、

「ちょ、ちょっと、文ちゃんこんなところで抱きつかないでってば。」

「ここじゃなきゃ良いんだ。」

「他の場所でも止めて。」

そう言いながら文醜を引っぺがす、

斗詩と呼ばれた彼女は顔良、

袁家二枚看板のうちのもう一人、

脳筋の可哀想な方と言われて居るとか居ないとか、

そして斗詩とは彼女の真名である、

「麗羽様、孫策さんは今袁術様、美羽様の所で客将をしていたはずです、それなのにあんな約束をしてしまって良かったんですか?」

麗羽とは袁紹の真名、

「功の有る者に報いるのは当然のことでしょう? それを美羽さんが出来ないのでしたら袁家の代表として(わ・た・く・し)が変わりに口添えする事に何の問題もありませんわっ!!」

そう言って立ち上がり口元に手を当てオーホッホッと高笑いした、

袁紹は金髪で、もみあげも巻き髪、

後ろ髪に至っては四つの巻き髪の派手な髪型だった、


つまりは周瑜に散々持ち上げられて孫家の独立の後押しをすることの約束をしてしまったのだ、


「そんなことより斗詩さんもお飲みになったら如何です、と~~っても美味しいですわよっ!!」

そう言って再びオーホッホッと高笑いした、






*****************************************

side蓮華


「華雄将軍、張遼将軍、孫権殿がいらっしゃいました。」


「孫堅だとぉっ!!」

そう言って立ち上がったのは華雄、

銀髪のショートカット、

一昔前の戦隊物の女性幹部のような出で立ちである、

「ちょ、待ちいな、確か孫堅は数年前に死んだって聞いてるで、華雄だってその報告を聞いてるやろ。」

関西弁の彼女は張遼、

紫髪でサラシと袴姿に羽織を引っ掛けただけの露出の多い姿である、


「失礼します。」

そう言って蓮華、思春、歩が入ると、


「孫堅ーーーーっ!!」

華雄が今にも襲い掛かりそうになるところを張遼が羽交い絞めにする、

「阿呆っ!! 冷静になりいっ!! 似ているけれども別人やっ!!」

華雄の声に即座に反応したのは張遼だけではない、

甘寧や祖茂も即座に孫権を庇う様に前に出る、


「相変わらずだねぇ華雄、もう少し成長しているかと思ったけど…」

そう声をかけたのは祖茂、

「孫堅ではないのか?」

「俺は祖茂、堅は数年前に死んだよ、お前とまた戦えないのが心残りだって言ってたよ。」


「そ、そうか、失礼した、すぐに椅子を用意させるから座ってくれ。」

華雄は配下の者に椅子を用意させると座るように促した、


「母は亡くなる前に華雄殿と再戦出来なかった事が心残りだった様で、しきりに残念だといっていました、そして…」

孫権が俯く、

「どうしたのだ? 孫権殿。」

華雄の問いかけに答えたのは祖茂、

「堅はな、お前が後数年もすれば自分すら凌ぐ良将に成るだろうってな、目標にするようにって策嬢や権嬢によく言ってたんだが、お前あんまり変わってねぇな、これじゃぁ、目標にさせられねぇよ。」

と祖茂が毒吐く、


「うっ。」

これには華雄も言葉が詰まる、


「だからよ、華雄、お前さん、もうちょっとだけ冷静になることを覚えな、猪のまんまお前さんに何かあったときには堅も実は大した事が無かったって言われちまうからよ、お前さんもそれは本意じゃないだろう?」

ニヤリと笑いながら祖茂が華雄に問う、

「当たり前だっ!!」

声を荒げ華雄が立ち上がる、

「ほら、そう言ったところを直せって言ってるんだよ、熱くなるのはいい、激情に駆られるのも良いだろう、しかしそれだけじゃぁ駄目だ、一歩引いた所から自分を見つめられる様にならなければ格下に負ける事になっちまうぞ、ま、これ以上は自分で考えることだ。」


しばしの沈黙の後口を開いたのは孫権、


「で、では、戦勝祝いのお酒を持ってきましたので、」


「酒っ!!」

即座に反応したのは張遼、


(張遼殿もか…)

そう感じたのは甘寧、


「えっ、ええ、うちの軍師が最近作ったお酒です、是非ともお納め下さい。」


「うん、うん、納める納める。」


「おいっ、運び入れろ。」

甘寧の声で樽が運び込まれる、

その内の一つを開け杯に注ぐとグイと一息に飲む、


「あーーん、そんな毒見なんぞせんでええのに。」

うちもうちも、と言いながら自分の椀を取り出し注ぐ、

「へーー、綺麗な黄金色や、んっ、んっ、んっ、っはーー、それに美味い。」

「おいっ、張遼っ!!」

華雄が咎め様とするが、

「堅い事言いなさんな、これだけの物を見せられて手を出さん方が失礼っちゅうもんや。」

ほれ、と華雄にも注いだ椀を差し出す、

華雄もそれを飲み干すと、

「確かにこれは美味いな、先ほど軍師が作ったと言っていたがこの酒に名前はついているのか?」


「軍師はこの酒を【美しさに魅入られる】と称し、美入(びいる)と名付けると申していました。」


「美入、美人の仲間入りが出来そうな良い名前やね。」

張遼はそう言いながら何杯目かを飲み干していた、


「それでは、董卓殿にもよろしくお伝え下さい、っと、こちらを。」

そう言いつつ孫権は小さな巾着を取り出した、


「それは?」

「軍師が董卓殿へと、中身は私も知りませんが危急の折にはお空け下さいとの事です。」

「おおきに、今後ともよろしゅう。」






「これで良かったのかしら?」

帰り道に蓮華は歩に尋ねる、

「嘘も方便、打てる手は打っておく、やれるだけの事はやりました、嬢は自分の仕事は十分以上にやりましたよ、堅も喜んでるはずです。」

歩は白い歯を見せてニカリと笑った、

蓮華はそんな歩を見て亡くなった母の面影を見た気がした、


しばらくすると曹操陣営から帰ってきた穏たちと合流した、

「穏の方は如何だったのかしら?」

「うふふ~上々です~上手くいけば美入も産業になるかもしれませんよ~。」

こうして他勢力に向かっていた使者もそれぞれ成功していた。

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