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第9話 犯人は?

 

「あれ?ここに置いてたのが無いぞ…?」


 誰も居ない生徒会室の中をガサガサと探す。

 いつも僕の座る席の前に置いているコップが無い。あのコップはお気に入りだったのに。


「ん~…持って帰ったってことは無いはずなんだけど…」


 今、考えられるすべての可能性を検討してみる。

 僕がどこかに置き忘れたという可能性、持って帰ったという可能性、掃除した時にゴミ箱に誤って入れてしまった場合だ。

 1つ目は可能性として高いけど、2つ、3つ目はまずないだろう。あのコップはこの生徒会に入った時に学校内専用として買ったものだ。だから持ち帰るなんてのは無い。そして、普通に考えてもゴミ箱なんかに入れない。


 ということはどこかに置き忘れたか?という可能性しか残らないのだ。

 まぁ本当は会長が何かしたんだろうなぁという可能性しか浮かばないんだけど…。

 この生徒会室に出入りしている生徒は会長と僕ぐらいだ。つまり、会長が何かした事を考えれば良い。

 最有力候補は会長が何かをしている時に僕のコップを壊して、それを隠すために捨てようとしたけど僕に悪いと思い、謝ろうとしたけど怖くて自分の机の中に仕舞っている。これが一番あり得る。

 でも、会長の机を勝手に開けるなんてことはできない。変なのが入ってたら怖いから。


「はぁぁ…今日の帰りにでも買いに行こうかなぁ」


 これ以上、コップで時間を潰すのも惜しいのだ。

 GWが明けて中間テストも近く、何より四條学園クラス対抗野球があるからだ。

 このクラス対抗野球は勝利したクラスは食堂のタダ券1000円分が人数分、校長から渡される。

 つまり、学生たちは命がけで戦いに来るのだ。

 もし、ここでの運営にミスをすれば生徒会の運命は暗闇まっしぐら。それだけこのイベントは四條学園にとって恒例であり、生徒会の見極め行事でもある。


 会長が校長から貰ったというパソコンを開いて、計画書を書いていく。

 普通はこれも会長の仕事なんだけど…何もしてくれないから仕方がないのだ。


 カタカタと過去の書類を見ながら文字を打っていく。

 今年の1年生はいつもより多いため、予算は少し多めにしてもらおう。

 それに応援席も両親たちが来るので大目に場所を確保。

 でも、そうすると生徒側の場所が少なくなってしまう…それに生徒が多い=負傷者も多くなる可能性もあるため救護スペースも多くしておかないといけない。


「くそ~…場所が足りない…」


 この無駄に広い四條学園のグラウンドが狭く感じるなんて始めてだ。

 野球は予想外の場所に飛ぶから何も考えずに応援席を置いてしまえば怪我人が出てしまうし…これはまさに生徒会の腕の見せ所だな…。

 生徒会室の中でう~んう~んと唸りながらスペース確保を考えているとガラッとドアが開く。


「あ……お、おはよう!!!ワンちゃん」

「もう夕方ですよ?」

「あ、うん!そうだよね。あは、あはははは」


 明らかに僕に対して何かあるな…これは…。

 会長の顔は笑っているけどかなり無理がある。

 会長は何故か僕から距離を取るように歩き、自分の席に座る。そして、机の中を開けようとして、僕が見ていることに気が付くと物凄い音を立てながら閉めた。

 なるほど…僕のコップはあの中か…。


「わ、ワンちゃん?何してるのかな?」

「何って今度やるクラス対抗野球の計画書を」

「あ、それならもう私がやったよ。はい、これコピー」


 会長から渡された紙には校長などの必要な先生のハンコがすべて押されている。

 それに書かれた内容を見てみるとさっきまで僕が悩みに悩んでいた応援スペースなどが綺麗に収まっているのだ。


「え?これ…会長が?」

「そだよ。頑張ったんだからね、褒めて褒めて~」

「いや、まぁ…凄いとは思いますけど…」

「私なりに頑張ったんだよ~、早く褒めて~」

「えっと~…お疲れ様です。さすが会長ですね」


 こんな感じで良いのかな?


「ふっふ~ん、ワンちゃんもやっと私を会長と認めたわね。ふふふ」


 あ、こんなのでよかったんだ。

 本当に嬉しそうにする会長を見ながら内心ほっとしていると、心の端の方からコップの反撃をしてやれ。という囁く。

 そして、その声は僕の好奇心を刺激していき、つい口からポロリと言葉を漏らした。


「さすが会長です。これで僕のコップの件をちゃらにできると思っている所が本当に凄いです」


 僕なりの最高の笑みで会長に言うとその場の空気がピタッと止まる。

 もう時計も止まったんじゃないか?ってぐらい空気が止まり、目の前に居る会長も嬉しそうな顔をしながら時が止まったように微笑み続けた。



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