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第7話 抜き打ちテスト!

 

 え?何これ…あり得ないほど難しいんだけど………。


 教室の中はカチカチという時計の動く音とシャーペンの芯を出す音だけが響いている。

 というか…さっきから周りを見る限りではシャーペンの芯をカチカチと全部出して、またシャーペンの中に入れると言う無駄作業に徹している。もしくは寝ている。

 しかし、僕はなるべく解こうと頑張っているのだ。そこらへんは評価していただきたい所である。


「はい、そこまで。皆ごくろうさまでした」


 嬉しそうに微笑んでいるんだろうと想像できる生徒会長 藤堂綾乃の終了の合図が放送で流れる。


「今回の抜き打ちテストは難しめに作ったので大変だったと思いますが次のイベントも楽しく受けてくださいね。ちなみにテスト結果は明後日までに発表しますのでそちらの方もお楽しみに。以上、生徒会でした。あ、あと副会長 犬塚真也くん、生徒会室に来てください」


 …普通の人ならこんな酷い事はしない。

 テストが終わる=天国に訪れる、それなのにその天国に行く道を閉ざされたんだから…。

 しかし、一般の人はそう言う風に取ってくれなかった。


「ずるいぞぉぉ!!!犬塚ぁ~~」


 まぁ藤堂綾乃を支持する会の人。だけね…。

 ちなみにこの後にあるイベントは食堂で2食までタダ。

 会長曰く「飴と鞭だよ」らしい。僕には飴すら無い上に、学校側にこのイベントをする資金要求などなど…様々な働きをしてたりするので、鞭と鞭、さらに鞭のような感じだ。


 クラスメイト達(守る会メンバーは除く)は落胆する僕を軽く無視して教室から食堂へと向かっていく。その中、僕1人だけ生徒会室へ足を向ける。


「ようこそ、ワンちゃん」


 生徒会室のドアを開けると嬉しそうな顔をした会長が椅子に座っている。

 そして、会長の手には3枚の紙がヒラヒラと揺れていた。

 言わなくても分かるだろうけど、おそらくあの紙はさっき受けた僕のテスト用紙だろう。

 先生がさっさと教室を出て行った所を見ると、僕のだけ先に渡してもらうように言っていたんだと思う。


「うふふ。副会長の実力を会長直々に採点してあげるよ。もし、点数が悪かったら………ね?」

「…ね?ってなんですか…、あんなの難し過ぎますよ!」

「そう?ちゃんと1年生の今までに習った内容だよ?難しいのは認めるけどしっかりと授業を受けてるならできちゃうよ。実際に私もやってみたけどスラスラと」

「いやいや、それは会長が自分で作ったからですよ。自分で作った奴をスラスラできないとかあり得ないですよ」

「そうでも無いんだよ?難しく作りすぎて私も290点だったもん」


 290点って…たった5問間違いか…あの難しいテストを…。

 ニコニコとしながら赤ペンを机の中から出し、僕のテストにマルを付けていく。

 採点される間、僕の気持ち的には地獄行きの船の上に乗っているようなものだ。


 さっきやったばかりのテスト。会長が望んでいる点数に及んでいないことぐらいは分かる。

 どんな内容の罰を与えられるのかは考えるだけで凹む。そこで僕は変なことを要求された場合、すぐに逃げられるようにドアの近くの椅子に座る。もちろん、ドアのカギは開けたままだ。


 それにしても…さっきから物凄いペースで採点しているけど、ちゃんと回答を見ているのか?

 今日の英語はかなり文章を訳すのが多かったから合っているか見るのはメンドクサイはずだけど…。


「ん~、英語の訳はちゃんとできてはいるんだけど、訳が堅いかなぁ。もう少し柔らかくしていった方が分かりやすいよ。数学は時々計算間違いがあるからしっかりと確認するように。国語に関しては言うこと無いかなぁ。……英語72点、数学58点、国語82点。合計212点かぁ…まっ合格でしょう」


 会長はニコニコしながら僕に3枚の紙を渡す。

 これが212点か? 

 自分の予想では150を切ると思っていただけにこれは驚きだ。というか、自分がここまで賢いとは…。


「まぁ、事前にテストやるよって言ってたからこのぐらいは普通かな。私的にはもう少し取ってくれると思ってたけど、まぁ期末テストに期待しよっと」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。もしかして毎回テストの度に」

「そうだよ。生徒会メンバーは10位以内が絶対で、もしメンバーの1人でも10位内に入らなかった場合は連帯責任で悪くて生徒会解散、良くて補習だよ」

「な………」


 そんなの聞いたこと無いぞ…。

 副会長になってから何度も生徒会に関することを先生から聞いたりしたけど、そんなのは一切耳にしていない。

 会長が勝手に言っているのか?と思ってしまう所だけど…なんだか本当の事っぽい感じだし…。

 まぁ普通に考えれば、この生徒会は学外でも有名だから、そんな生徒会に入る人がバカだったなんて話にならない。学校側にとっても許せないことだろう。


「まぁ私が認めたワンちゃんだから間違いはないと思うけど、頑張ってね」


 満面の笑みは僕にとって悪魔のような笑みに見える。

 これだから天才ってのは嫌なんだ…皆が自分と同じかのように思っているんだから…。


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