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第63話 藤堂綾乃

 

 会長が自爆をした後、僕と岩瀬先輩はしばらく2人でお菓子を食べながら色んな事を話した。

 いや、正しく言えば取り調べのようなものだろうか?

 ただ、ひたすら「どうして綾乃を?」「綾乃の好きな所は?」「何が引きつけたわけ?」「綾乃はめんどくさいよ?」などなど。

 この人は、顔には見せていないけど、本当に会長の事が好きなのだろう。

 もし、僕が今まで会長に告白してきたような、表面上でしか見ていない男なら、この場でどんな手段を使ってでも別れさせるつもりだろう。

 例え、会長との仲が切れてしまっても。

 だから、今まで僕と会長をくっつけようとしていた岩瀬先輩がこうして再確認をするかのように質問をしてくる。


「ふぅ、長い事質問攻めにしてごめんね」

「いえ。終わりですか?」

「うん。まぁ心配は無かったけど、やっぱり心配はするんだよね。自称だけど綾乃の親友だし」

「自称ですか。それ会長が起きてたら怒りますよ?」

「あはは、それなら嬉しいけどね。それじゃ私はそろそろ帰るよ」

「あ、それじゃ僕も」

「君は泊まるんだろう?ここに」


 岩瀬先輩がニヤニヤとした厭らしい顔をする。

 ったく、この人…嫌いだ…


「泊まるわけないでしょ」

「くくっ、まぁ冗談だよ」

「学校でそんな冗談は絶対に止めてくださいね」

「大丈夫。生徒会室でしか言わないからね」

「言うなって言ってるんですよ…」

「まぁ良いじゃない。それよりも、今のうちだよ。綾乃に聞きたいことがあるなら」

「………」

「気になるんだろう?どうして綾乃がこんな所に住んでるのか。まぁ気にならないって言うなら質問はしなくても良いけどね。でも、聞きたいなら質問してあげて。質問してあげた方が答えやすいだろうからさ。でしょ?綾乃」

「え?」


 岩瀬先輩が立ちあがり、ニコニコとした顔をしながら僕の横に寝ているはずの会長の顔が真っ赤になっている。

 僕は会長と岩瀬先輩の両方を交互に見る。

 もしかして、この人らグルか?と言う意味の視線を岩瀬先輩に送ると頭を横に振り、「綾乃は腹黒いよ」とだけ言って家を出て行く。

 本当に今までの会話をずっと聞いていたのか…。


 岩瀬先輩が出ていってからしばらくしても会長はまだ倒れたままの状態で微動だにしない。

 まだこの人は恥ずかしさで倒れた状態を続けるつもりなんだろうか…。


「会長、さっさと起きてください。全部お菓子食べちゃいますよ」

「うっ……た、食べる」


 少し恥ずかしそうにしながら起き上がる。

 しかし、さっきまでベタベタとくっ付いていたのが嘘かのように、僕と正面を向き合うような場所へと移動する。

 そして、目も合わさずにお菓子に手を伸ばし、パクパクと食べていく。

 その姿を見ながら、僕もお菓子に手を伸ばし、岩瀬先輩が言っていた通り、質問をすることにした。


「会長、さっきのこと聞いてました?」


 顔が赤くなっていく。

 やっぱり聞いていたんだな。


「それじゃ今から僕が質問するので答えてくれますか?」

「…わかった」

「まずは~、僕の事を好きになったのはいつですか?」

「えっ!?そこから?!」

「え?軽い話からの方が良いかなぁと思ったんですけど。だって、その…」

「どうして私がこのボロボロな家に住んでるのかって?」

「…はい」

「んーっと、何から話せばいいのかなぁ…すごく長くなっちゃうんだけど…時間が」

「大丈夫ですよ。夜遅くまで掛かっても」

「でも、ご両親が」

「大丈夫、メール送りますから。ほら、ね?」


 母さんに「今日は遅くなる」という内容のメールを送り、そのメールを会長に見せる。

 今日の機会を逃してしまえば、いつになるか分からない。それにもう受け入れる覚悟はできた。

 スマホをポケットの中に入れ、これから始まる会長の話に耳を傾けた。



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