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第51話 宣戦布告!

 

「やぁ、犬塚くん」


 嫌な人に会った…。

 人を見下すような身長、キリッとした目、整った顔。

 笑顔になるとその整った顔が可愛く崩れる。

 それが人気なのだ。まぁ、要くんがこの学校に居るからあまり目立たないんだけど…。


「こんにちわ、宮崎さん。今日も生徒会室に行くんですか?」

「そうだよ。君はどうなんだい?」

「どうとは?」

「修学旅行のプランも終わったみたいだからやることは無いだろう?」

「あ~…そうですけどね…」


 なるほど…、来るなってことか…。

 2人きりで何かしたいわけか…。

 守る会の会長にしては生徒会長に執着しない人だと思ってたけど…やっぱり守る会の人だ。

 今までの守る会会長に就任していた人と同じような目で僕を見てくる。

 だけど、もうこの人にも守る会の人らにも躊躇はしない。少しでも躊躇してしまえば会長に言った言葉が嘘になる。

 それに……。


「確かにやることは無いかもしれないですけど、僕は行きますよ。だって、僕、会長の事好きですから」


 僕の今の顔はどんな感じだろう?

 守る会の会長の前でこの発言は絶対にしてはならない事だ。

 特に僕のような生徒会に所属している、この学校で最も会長に近い位置に居る人間は言ってはいけないだろう。


 目の前にいる宮崎さんの顔が徐々にキツさを増していく。

 手に力が入っているのだろう。小さくだがプルプルと震えている。

 だけど、彼もバカじゃない。ここで僕を殴ってしまえば守る会会長という地位も無くなり、生徒会長とも今後会えなくなるだろう。

 四條学園において、絶対的な権力を持っている生徒会メンバー相手に暴力などあってはならない。


「君は何を言っているのか分かっているのか?」

「なんのことでしょう?それでは、僕は先に行かせてもらいます」

「っ」


 頭を下げて、生徒会室へと向かう。

 先手を打った。これであの人がどう行動するかなんてどうでも良い。

 守る会のメンバーを総動員させて、会長に伝わらないように僕を苛めるか?それとも、あの人も告白するか?

 いや、どちらもできないだろう。守る会は生徒会長を好きな人が集まる所ではあるが、告白をするようなことは禁忌とされている。

 ましてや、そのトップの人がそんなことをすれ周りも一斉に告白をし出す始末だ。

 ただでさえ、彼は会長と接触しすぎているのだから、ここで告白するようなことをすればターゲットは間違いなく僕では無く、彼に向く。

 まぁ、そういうことがあるから僕は彼に言ったんだけど。


 生徒会室のドアを開けると会長は居らず、岩瀬先輩がポテトチップスを食べながら漫画雑誌を読んでいた。


「校則ではお菓子も漫画も持ってきたらダメなはずですけど」

「コーヒーを毎日タダ飲みしている犬塚くんには言われたくないな」

「部活でスポーツドリンクをタダ飲みしているよりはマシだと思いますけど」

「…うん、それも一理あるね。どう?食べる?」

「いただきます。何か飲みますか?」

「コーヒーで」


 所詮校則だもんね。関係ない。それにここは生徒会室だし、法外地区でもある。

 インスタントコーヒーを入れて、岩瀬先輩に渡してポテトチップスに手を伸ばす。


「そういえば、修学旅行もあと1週間かぁ」

「そうですね」

「綾乃はそれまでに答えをくれると思う?」

「さぁ?どうなんで…………なんで知ってんですか」


 会長にはこれは岩瀬先輩にも要くんにも相談しないでほしい、自分で答えを決めてほしいと言ったはずだ。

 さすがの会長もそこまで言われて他の人に相談するような人では無い。俺の知ってる会長だったらの話だけど。


「普通に綾乃の反応を見ればわかるでしょう?」

「…まぁそうですよね」

「それで?最近、綾乃の周りに纏わりついている男はどうするんだい?確か守る会の」

「あぁ、それならさっき宣戦布告してきました」

「へぇ~、君も変わったね」

「もうどうにでもなれって思ってますからね。それにあの人たちが僕に危害を加えられないのも知ってますし」

「それはどうして?」

「体育祭の時に、要くんが言ってたんですよ。僕に危害を加えたらさすがの会長でも気が付くぞって」

「なるほどね。でも、気が付かないようにできるよ?陰湿ないじめとか」

「それは無理でしょう。一般生徒ならバレないかもしれないですけど、僕は生徒会の副会長ですし、先生もよく見る対象です。それに僕が会長に相談する可能性も捨てられない」

「相談するの?」

「するわけ無いじゃないですか」

「なら、できるんじゃない?先生の目を掻い潜るぐらい難しい事じゃないでしょ」

「確かにそうなんですけど…ほら、要くんがね」

「あぁ、そういうことか。いつもクラスに居る彼の彼女を通じて伝わるわけね」


 宮地志乃。

 要くんの彼女であり、僕のクラスメイトである。

 藤堂要。

 彼は藤堂綾乃の弟であり、女子に絶大的な人気を誇る。

 僕の後ろにはこの2人が付いている。


 そして、要くんは僕が会長に告白をしたことを知っていて、応援してくれている。

 つまり、もし僕に危害があった場合、同じクラスの宮地さんを通じて要くんに伝わり、要くんが動くということになる。

 僕的には他人任せになってしまうため、嫌なんだけど……元々、要くんが会長を守る会っていうのを快く思っていない部分もあるらしい。


「あの人を崇めるのは別に良い。だけど、気持ちを伝える行為を邪魔する奴は絶対に許さない。何が守る会だ、誰かに綾ちゃんを取られるのが嫌。だけど、自分が告白して振られるのが怖いからしないっていう臆病風に吹かれた集団だろ。気持ち悪い」とのことらしい。

 ホント、そう思うんだけど…それを守る会に所属している人の前で言うんだから彼は本当にカッコいい。


「まぁ私も犬塚くんの恋は応援しているから、君に何かあった時はそれなりにするけどね」

「それは嬉しい言葉ですけど」

「まぁ手を出されるのは嫌だと思うけど、相手が相手だから諦めた方がいいよ。綾乃を彼女にするんだもん、それなりに後ろ盾は必要」

「まだ答えは貰ってないんですけどね」


 僕は大きくため息を吐いて、ポテトチップスを口に運ぶと、さっき廊下であった宮崎さんが生徒会室のドアを開けた。




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