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第50話 急展開

 冬も近づき、外はすでに暗い。

 そして、吐く息が白くなる。

 ハッキリ言って寒い。だけど、そんな寒い時期になったのに僕の顔は焼けそうなほど熱い。


「会長、僕はあなたの事が好きですよ」


 会長の目を見て、ハッキリと言葉にする。

 ここで恥ずかしさを持って目を反らしてしまえば、会長は冗談だと受け取るだろう。

 だから、絶対に目を離さない。そして、逃がさない。


「え、あ…え…えっと…じょ、じょう」

「冗談じゃないです」

「……で、でも」

「もう一度言います。僕は藤堂綾乃さんの事が好きです。僕の彼女になってもらえませんか?」


 今にも逃げ出しそうな顔をしている会長に向かって、改めて目を見て言った。



 僕がどうしてこんな急に会長に告白したのは2つ理由がある。

 まず、1つの理由として我慢が出来なくなったからだ。


 文化祭が終わった時、僕と会長はハプニングながらも軽くキスをしてしまった。

 それが僕にとって会長の存在が爆発的に大きくさせてしまう。

 今までは会長が好きだと言っても、一緒に居て楽しい。彼女だったら楽しいだろう。会長の隣に立ちたい。といったような感じだった。

 しかし、あの時から僕の中の会長は…あまり言葉にしたくはないんだけど、他の人に取られたくない。みたいな感情が湧くようになった。


 そして、2つ目の理由としては会長の近くに現れるようになった男性のせいだ。

 藤堂綾乃を守る会の会長職に就任した宮崎和也みやざき かずや

 3年生であり、勉強に関しては東大も確実だと言われている。

 そして、性格も顔も良い。悪い噂も聞かない。会長にも守る会独特の神を崇めるような話し方をせず、友達感覚の話し方をする珍しい人だ。


 そんな人が生徒会室に何故か出入りするようになり、会長とよく話すようになっていた。

 もちろん、話す内容は僕には分からないような勉強の話などなど。

 ただでさえ、会長のファーストキスを奪ってしまい、気まずい関係になっていた所に宮崎さんの登場だ。

 会長にとって、僕と距離を取るには最適の人だったのかもしれない。

 だけど、会長にとっては最適の人でも僕にとっては最悪だった…。


 自分と話している時には見せないあの笑顔。いや、一緒なのかもしれない。僕が勝手に考えているだけで違いは無いのかもしれないけど、僕には見せない笑顔のようで……それが、僕の心に針がズバズバと刺さっていくのだ。

 あれは地獄。本当に地獄だ。

 それも、修学旅行のプランを教職員などと考えている時だ。

 宮崎さんが出す意見はすべて僕の上を上回る。会長もその意見を通す。

 それが凄く悔しい…。どんなに努力をしても宮崎さんには敵わない…。

 色んな努力をした。過去の書類も穴が空くほど見たし、教師にも修学旅行での問題なども聞いた。3年生にも去年はどうだったか?と聞いた。

 だけど、そこまで頑張っても宮崎さんの意見を上回れないのだ。

 彼は僕の数段上を行く。


 しかし、そんな程度で僕がこんな大冒険するわけない。

 一番の原因は岩瀬先輩からの情報だった。


「今までに見た事が無いなぁ、今の綾乃の表情は」


 この発言により、物凄い危機感に囚われた。

 もしかしたら、会長が自分の前から居なくなるかもしれない。それが頭の中を駆け巡り、夜も眠れなくなってしまったのだ。

 そして、我慢できなくなった僕は今、こうして会長に向かって自分の気持ちを吐き出させてもらっている。



「そ、その…急に…えと…えっと…」

「すみません。ずっと会長の事が好きだったんです」

「え、えと…い、いつから?」


 興味ありげな目で僕に向かって上目づかいをしてくる。

 本当にこの人は可愛い。


「好きなのかなぁと思ったのは夏休みの頃からですね。でも決め手になったのは文化祭ですね」

「そ、それは…あの」

「いや!あれは偶然ですから!狙ってやったわけじゃないですよ!これだけは絶対に!」

「あ、そ、そうなんだ」

「それで、会長の気持ちを聞かせてもらえないですか?」

「………」


 困ったような顔をしないでほしい…。

 その顔はあまり見たくない…。


「そ、その今すぐじゃなくてもいいですから。えっと、そう!修学旅行が終わる頃に答えをください!それまで僕は待ちます。それまでに会長に相応しい男になりますから!」


 あぁ…僕、弱いな…。

 逃げないと思いながらも自ら逃げ道を作ってしまった…。

 肩を落としそうになるのを耐え、会長の目を見る。

 そして、自分の気持ちが伝わるように心をこめて言った。


「だけど、もう一度言わせてください。 会長、僕はあなたの事が好きです」

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