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第44話 逆カップル

 

「ワンちゃん、早く早く!」

「ちょ、まっ!僕嫌ですよ!絶対に!」

「ダメダメ!もう受付終わっちゃうでしょ!ほら、走って!」


 11時。僕は休憩を終えて、スケジュールに従って、文化祭の見回りをしていると会長に捕まった。

 そして、ロクな説明も無く、体育館へと引っ張られてるのだ。

 これから何が起きるかは検討ついている。

 もうすぐ受付が終わる。つまり、今日何か体育館であるということであり、僕が会長に参加させられるとなれば1つしかない。


「嫌だって言ってるでしょ!」

「大丈夫。ワンちゃんはきっと似合うと思うよ!」


 そんな自信を持った顔をしながらグーサインを出さないで…何も嬉しくない…。

 会長の思うがままに引っ張られ続けると、ついにイベントの受付につく。


「え?生徒会長も参加するんですか?」


 受付に座っていた男の子がビックリしたような顔で会長と僕の交互を見る。

 もちろん、僕に対しては殺意のある視線だ。


 とりあえず、この生徒会主催のイベントについて説明。

 普通のカップルは男性と女性がお付き合いしていることを言う。

 しかし、今回は逆カップルというのがコンセプトだ。

 男性が女性役を、女性は男性役を。

 つまり、女装と男装カップルだ。


 正直、傍から見れば楽しいイベントだろう。

 しかし、参加する側としたら…最悪のイベントだ。


「女性役は副会長。男性役は私でよろしくお願いします!」

「え?」


 受付の人はポカーンとした顔をして会長を見る。

 その会長はドヤ顔をしている。

 そして、僕はすぐにツッコミを入れる。


「いやいやいや、どうして僕が女装しないといけないんですか?」

「どうしてって私もワンちゃんも参加するんだよ?」

「誰が進行するんですか」

「私」

「じゃ参加できないじゃないですか」

「ううん、男装した姿でするから大丈夫だよ」

「それなら僕必要ないじゃないですか」

「っちっちっち。私だけ男装してたら変な人じゃない。そこにワンちゃんに白羽の矢が立ったわけ。女装のワンちゃんが横にいれば、私の男装も変じゃない」

「…いや、男装しなければいいだけじゃないですか?それに別にイベントがイベントなので男装で出ても違和感無いと思いますけど」

「それは違うよ、ワンちゃん。参加してくれる人が皆変装してるのに進行の私が変装しないのはおかしいもん。それに私も彼女役の子欲しい」

「…ちょっと意味がわからないですけど」


 つまり、公式で男装がしてみたいと…。

 僕に対して精一杯、男装の必要性を話す会長を見ながら勝手に納得する。

 しかし、僕の必要性は全く納得できないし、納得もしたくない。


「岩瀬先輩にでも頼んだらいいじゃないですか。あの人なら」

「奈央はダメ~、確かに似合うと思うけど」

「へぇ~、キミらにとって私は女では無いと。そういう意味で取ってもいいのかな?今の会話は」

「あ…」

「ひぃっ」


 後ろから今の会話を聴かれたくない人の声がする。

 そして、振りかえると物凄い怖い笑顔をした岩瀬先輩が立っていた。

 今の状態の岩瀬先輩にはさすがの会長も引きつった笑いになる。


「な、ななななな、奈央は可愛いよ!美少女だよ!」

「なに慌てているのか、私には理解ができないなぁ」

「そそそ、そんな私は慌ててはないよー」


 動揺を隠せていない…。

 岩瀬先輩は会長の動揺する姿が面白いのかニヤニヤ度が増していく。

 よかったかも…。会長があれだけ動揺してくれなければ僕に飛び火が来ていた所だ。

 この時間を使ってこのままどこかに行こ…。


「さっきから他人のように振舞っているけど、君も同罪なんだけど?」

「僕は岩瀬先輩なら楽しんでやるんじゃないかなぁと思っただけですよ。ほら、男装と男装だと男友達みたいなのできるかなぁって思ったので」

「口だけは達者だね」

「嬉しい褒め言葉ですね。それじゃ僕は巡回を」

「なに逃げようとしてるのさ!ワンちゃん!」


 ガシッと人の手を掴み、逃がさないように必死な会長。

 目の奥には「殺される…」と言った言葉が浮かんで居たりするけど、これは会長のせいだ。

 ニコッと笑って会長を油断させ、掴まれた手を解く。

 そして、頭を下げてこの場から離れようとすると、岩瀬先輩という悪魔がこう言った。


「犬塚くんも変装するんでしょ?私がとびっきりカッコいい可愛い子にしてあげるよ」



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