第40話 ふぇっくちょん???
「ふぇ…ふぇっくちょん!!!!」
「は?」
なんだ今の?
辺りをキョロキョロと見渡して見るが生徒会室の中には僕と会長しかいない。
ということは、さっきのは…。
「ふぇっくちょん!!!あ~…ティッシュ…」
女子高校生とは思えないな…今の会長は…。
会長はティッシュを何枚か取り、物凄い勢いで鼻を咬む。
普通、女子高校生なら…というか、女の子なら恥じらいは持ってほしい。僕と言う男がいるんだから。
「あぅ~…しんどい…」
「だったら、帰ってください。文化祭は明日なんですから」
「でも、今日は最終準備期間だから夜泊まるクラスも」
「それは僕が管理しますし、先生も残ってくれるので大丈夫だって何度も言ってるじゃないですか」
「ふぇっくちょん!!!…でもやっぱり残りたい」
会長は鼻を真っ赤にしながら僕を睨む。
まぁその睨む力も全くと言っていいほど無いので怖いどころか、むしろ可愛く思えてしまうんだけど…。
それにしても、僕が風邪を引いた時にあり得ないぐらい惚れてしまったとはいえ、こうやって同じ空間に居るとあんまり意識しないもんだなぁ…。
むしろ、一緒に居る時の方が安心できて気が楽だったりする。
だけど、今回ばかりは帰ってほしいと思うのだ。僕に風邪が移ったら大変だし。
「さっさと帰ってくださいって」
「うぅ~…私は生徒会長だぞ~」
「それとこれは関係ないでしょ。家に帰って風邪を治してください」
「い~やっ!今日と明日と明後日はここに泊まる!」
会長はノロノロと動き、ここから一歩も動かない!と言いたいのか寝袋の中に入る。
なんだこの人は………普段からおかしな人だとは思っていたけど、今回ばかりは意味が分からない。
僕は散々悩んだ末にこの場で一番最適な人に電話をする。
「あ、要くん?」
「ん?どーしたの?真也くん」
「えっと、今はまだ学校だよね?」
「ああ。おでんの煮込み作業担当だしね」
「ごめん、君のお姉さんを家に強制退去してもらいたいんだけど」
「綾ちゃんを?」
「うん。鼻風邪で変なくしゃみしてるし」
「ん~…あ~…ごめん、俺無理だ。奈央さんにでも頼んで」
「へ?」
「ごめん。呼ばれたから行くよ。じゃよろしく」
プツンと電話を切られると僕はスマホの画面を見る。
どうして拒否………別に会長と要くんは仲が悪いわけでもないような気もするんだけど…。
「ふぇっくちょん!!!…あぅ~、さっき誰にかけてたの~」
「要くんにですよ。断られちゃいましたけど、要くんに何かしたんですか?」
「何にもしてない、そういうものなんだよ。ふぇ…ふぇっくちょん!!」
「あ~…も~!その寝袋に鼻水付けないでくださいよ!それ高いんですから!」
「ふぇ、ふぇっくちょん!!!あ~…ワンちゃん、ティッシュ…」
「…………どうぞ」
ダメだ…もう諦めよう…。
綺麗な顔から鼻水を垂れたバカっぽい顔になった会長の顔を見ながら僕は大きくため息を吐いた。




