第4話 生徒会長さんのお仕事。
「会長、さっさと働いてください。今日は各部活がしっかりとやっているかの視察です」
「えぇぇ~、めんどくさいよぉ。ワンちゃん、勝手に1人でやっといてよぉ」
生徒会長のみが座ることを許される高級な椅子の上にお行儀悪く体育座りをしながら携帯ゲーム機でゲームをする会長。ちなみにパンツ的なモノは見えていない。
今日は各部活の視察の日。
この学校の部活は数が多く、専用の教室が無い部活が多い。
そこで、現在教室を利用している部活がちゃんと活動をしてなかった場合、生徒会の権限で退去してもらうことができるのだ。そうすることで部活の質を上げられる効果もある。
しかし、やる日を決めてしまえばその日だけやる輩が出てくるため、これは抜き打ち。
本来、生徒会長が日程を考えるのだが、今の会長はこんな感じなので僕が担当している。
なぜこんな生徒会長を連れていくかって?それはこの人の見た目で「生徒会だからって調子乗ってんじゃねぇよ!!」と暴力をしてくる輩を無傷で黙らせることができるから。
「いいから早く働いてください」
「今、良い所なの。もう少しで倒せるんだ」
「そんなの知りませんよ。こっちはそのゲームよりも重要な仕事です」
「村人が困っているの。それを助けるのも生徒会長の役目と思わない?」
「ゲーム内の人物を現実に持ち込まないでください。もっと現実に生きてください。…黙ってれば綺麗なのに…もったいない」
「あっ!?あ、あっ…だ、ダメっ!ダメぇぇ!!!」
「エロい声を出さないでください!」
生徒会室は他から離れているから聞こえはしないだろうけど、もし聞こえてたら僕の命は無い。
しかし、そんな僕の考えは会長にとって関係なかったみたいだ。
「ワンちゃんが急に私を褒めたりするから照れてミスしちゃったじゃない」
「普通、そういうことは言わないで照れてください…」
「ふぅ~…もう、1回死んじゃったらやる気無くなっちゃった…しょうがない、ワンちゃんくんのために働こうかな」
「僕のためじゃなくて学校のために働いてください。教室が欲しくても無いからしっかりと活動できてない部活が山ほどあるんですから」
「は~い」
会長は子供のように手を挙げて返事をする。
その姿は本当に子供のようで似合っていると思ってしまう。
しかし、そんな姿はすぐに変わり、天下の生徒会長の顔になる。
そうなるとこの人は子供という言葉とは無縁だろう。キリッと動き、ビシッと言うことは言う。もちろんさっきみたいな普段高校生が使うような言葉では無く、ちゃんと生徒会長らしいピシッとした言葉で。
「前々回、前回、今回と活動が見られないので生徒会長の権限によりこの教室の使用許可を停止します。
よろしいですね?」
「ちょ、ちょっと待てよ!そんな抜き打ちでたまたまやってなかっただけで」
「たまたま?この教室を使用する際に確認したはずです。3回の確認のうち、変化が見られない場合は強制退去を命じると。そして、今回も変化が見られません」
「なんだよ!生徒会だからって」
あらまぁ…天下の生徒会長様に盾をつく人がまだいるとは思いもしなかった。
今回の教室退去部の部員たちは不良グループと言われる所に属する人たちだ。だから僕では無く会長が相手にしてくれているのだけど、さすがの彼らもオアシスだった教室が無くなるのは生徒会長が相手でも納得できないらしい。
しかし、彼らがどう足掻こうがすでに時遅し。生徒会長は教室内を確認して私物だと思われる物に「私物」と書かれた紙を張っていく。
これは警告であり、この教室を使う次の部活者達が入る時にまだ残っていた場合は私物放棄とみなし排除するのだ。こうすることで無理やりこの教室に残ろうとする輩を一斉排除する。
また、今回のような不良グループが次の部活に対して無理やり奪おうとした場合、生徒会長の権限で数日間の反省室行きとなる。
反省室とは四條学園の中でも恐怖の部屋であり、そこに入れば人が変わると言われている。ちなみに中の様子は校長と生徒会長、あと反省室担当の教師以外知らない。
自分たちの私物に紙を貼られていく様子を僕が見ていると1人の不良っぽい人がなんと抵抗しようとする。
彼は命が惜しくないんだろうか…。
「抵抗するんですか?」
「抵抗するも何も俺達のもんだぞ。生徒会長だからってそれは無いだろ」
「……なら今日持って帰ってもらえますか?」
うわぁ…ここで会長スマイルか…。
完璧に作られた笑顔は例えさっきまで敵視していた不良グループ相手でも容赦なく心の壁にダメージを与える。
「私もこんな権力に身を任せるようなことはしたくないのです…ごめんなさい。でも…私は女の子だから…だから、こんなことしかできないの…」
そして、涙目+上目使いで相手の心にダイレクトダメージを与えるのだ。
不良グループもその攻撃に心を奪われてしまい、もう彼女の言うことを聞く召使同然。
会長は「お願いしますね」と言うとさっきまで敵視していた不良さん達は素直に私物を持つと教室を出て行った。