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第39話 帰ってください!

 

「ほんっと何もしなくていいので帰ってください」


 座布団に座る会長に僕は頭を下げて言う。

 しかし、会長は僕のお願いなんて聞きいれる訳も無く、人の部屋をキョロキョロと見渡す。


「へぇ~、男の子の部屋ってもっとこう…アイドルのポスターとか壁に貼ってると思ってたのに貼ってないんだね」

「知識偏りすぎですよ…」

「あ、漫画は一杯あるんだね。へぇ~、ワンちゃんはこういうのが好きなんだね」

「ちょ、勝手に漁らないでくださいって」

「大丈夫大丈夫、高校生の男の子はエロ本の一つや二つは絶対あるものだって奈央から聞いてるし、安心して。私はそういうのじゃ動じない自信ある」

「そんなドヤ顔で言われても。それにエロ本なんてそう簡単に見つかるものじゃありません」

「そうなの?なーんだ…面白くない」


 何を期待してこの部屋に来たんだ…この人…。そんな簡単に見つかる場所に置いているわけないだろう。

 というか、なんのためにこの家に来たんだろう?そして、どうやって僕の家を知ったんだろう?

 僕の部屋を漁るのは飽きてきたのか、次は僕の勉強机の上に置いてあるノートを見始める。

 そして、間違っている点をしてきしてくるのだ。


「相変わらず計算間違いが多いね」

「ちょっといい加減に、げほっげほっ」

「ほらほら、シンドイんだから寝てないと」

「あなたがいるから寝れないんですよ。ほんと何しに来たんですか」

「お昼を作りに」

「母さんがすでに作ってくれてるんで別に良いです。早く帰ってくださいよ」

「えぇ~、せっかく来たのに」


 会長は頬をぶーっと膨らませるけどここは心を鬼にしなければならない。


「会長、僕は今風邪を引いてるんです。だから移してしまうかもしれないので早く帰ってください。僕の風邪が治っても会長が風邪を引いたら本末転倒です。治そうと思ってここまで来てくれてたのは感謝してます、てか気持ちだけで十分ですから。だから帰ってもらっても良いですか?」

「……ん~、ヤダ?」

「…はい?」

「だって私は学校をずる休みしてまで来たんだよ?それにワンちゃんの家を調べるために生徒名簿を見せてもらったり、色々大変だったんだから」

「え~っと…僕の話聞いてました?風邪が」

「私、風邪とか引いたことないから大丈夫だもん。それにワンちゃんのだったら移ってもいいしね~」

「………」


 この人はなんて言えば良いんだろう…、人の心を掴むのが上手いというか、やっぱり天才なんだろうか?

 風邪が移ると言われたら離れるのが普通なのに、この人は自分に移せば良いという。それも自分は風邪なんかに負けない。とまで言うんだからカッコいいの一言である。

 というか…反則だろ…。


「わわ、ワンちゃん顔が赤くなってるよ」

「っ、もう風邪移っても知りませんから!あと、うちの家のキッチンは特別なので触らないでください」

「それじゃお昼作れないよ?」

「じっとしててください。それだけで十分ですから。少し疲れたので寝ます。カギはカバンの中にあるので帰る時は玄関閉めてください。カギは学校で返してもらえばいいので」


 カバンの位置を指差して、布団の中に潜る。

 これ以上会長の顔は見てられない…本当にこれからどうしよう…。

 ちょっと会長の事を本気で好きになりすぎたかもしれない…。






「っぷ、あははははは。あの人らしいわ」


 僕の目の前で大爆笑しているのは要くん。

 今日までの4日間分のノートをコピーしてくれて家まで持ってきてくれたのだ。

 そして、会長が来たことを話すとこのように大爆笑している。


「いやぁ~、綾ちゃんは相変わらず面白い行動するな~」

「何も面白くないよ…風邪が移るって言ってるのに帰ろうとしないし」

「大丈夫大丈夫、綾ちゃんはある意味バカだから風邪なんて引かないって」

「そういう問題じゃないと思うんだけど…」

「はぁ~、ほんと綾ちゃん面白いわ~。あの人が…っと、それよりも~はい、これノート」

「ありがとう。ホント助かるよ」

「いやいや、俺はノートをコピーさせてもらっただけだから。そのついでだよ」


 要くんの言う通り、ノートを見てみると女の子っぽい可愛い字で書かれていて、とてもじゃないけど要くんが書いたとは言えない。

 でもまぁ、こうやってコピーをしてくれるんだから感謝だ。


「そーいや、風邪の方はもう大丈夫なの?」

「うん、だいぶ楽になったよ」

「へぇ~、やっぱり惚れてる子が来ると元気出るもんなんだ」

「それたぶん違う。単純に会長の相手をして疲れてよく眠れただけだと思うけど」

「いいなぁいいなぁ~、俺も風邪引いて志乃に来て貰おうかなぁ」

「宮地さんだと疲れないと思うけど?」

「ん~確かに。でもそういう恋もありっちゃありだよね」

「もっと落ち着いたのが良いな…僕は」

「まぁ頑張ってよ。弟の俺が応援してるからさ」

「面白がってるの間違い?」

「それもある」


 当然っ!と言いたげな笑顔で言われると何も言えなくなる。

 要くんは先生から預かった伝言などを僕に言うと「そろそろ帰るよ」と言って荷物を片付け始めて、あっという間に帰っていった。

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