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第35話 出続ける会長さん。

 

 本当に会長は何でも出ているな…。

 さっきは騎馬戦にも出ていて、このラストの競技「クラス対抗リレー」も出ている。

 それもアンカーという役割で他の1人よりも100m長いのだ。


 会長が今まで出てきた競技は100m、200m、1000m、二人三脚、大玉転がし、騎馬戦、綱引き。そしてクラス対抗リレーだ。あ、僕の借り物競争も入れれば9種目になる。

 正直言って、休憩時間なんてあったもんじゃない。

 ずっと出っぱなし状態でさすがの会長も疲れ気味なのだけど、そんなのは表に出さずずっと楽しそうな顔をしながら自分の番が訪れるのを待っている。

 少しぐらい休憩させてあげれば良いのに…と思ってしまうけど、会長自身が自分で出たいとかなんとか言ったんだろう。


 僕は会長の見え隠れする会長の疲れた表情を見ながらため息を吐くと横で要くんがニヤッと笑った。


「心配してんの?綾ちゃんの事」

「違う。普通にあの人はバカだなぁって思っただけ」

「それを心配っていうんじゃない?普通」

「ん~違うでしょ。分からないけど」

「まぁそういうことにしておきますか。それにしても、綾ちゃん疲れてるねぇ」

「どうして他の人は何も言わないんだろ?」

「ん~…普通言わなくない?」

「え?」

「いや、だって体育祭は確かに面白いけど動くの面倒じゃん?部活してる俺らでも面倒だと思うんだもん。勉強ばっかしてる人にとったら見てる側でいたいと思うのは普通だと思うよ、俺」

「…ん~、でも会長ばっかりってのも」

「それを言えるのが真也の良い所だと思うよ。俺」

「な、何急に言ってるのさ」


 急に真顔で褒められたりしたから顔が赤くなりそうになる。

 要くんはおかしそうに笑い、「まぁ良いじゃん。綾ちゃんだって頑張ろうとしてんだから」と言い、クラス対抗リレーを見る。


 そろそろ会長の走る番が来る。

 会長のクラスは苦戦しながらも3位という順位で回っている。

 しかし、第3走者が思ったよりも遅いのだ。

 せっかくさっきまで良い位置に居たのに次々と抜かれていく。


「あちゃ~…綾ちゃんのクラスの人おっそいなぁ」

「最下位になっちゃったね。でもこれで本気で走らなくても大丈夫」


 すでに会長が本気で走った所で巻き返すには難しい差ができている。

 今まで体育祭の準備や色んな競技に出て疲れているんだから最後ぐらいはゆっくり走って…。


「あらら、綾ちゃん本気じゃん。速いなぁ」


 確かに速い…けど、苦しそうじゃないか…。

 会長はバトンを受け取ると全力で前に走る人を追う。

 その顔は今まで100mや200m、1000mを走っていた時の余裕のある顔じゃない。

 まさに全力だ。

 会長は苦しさで一杯という感じで僕たちの前を通り過ぎる。

 しかし、他の人たちはそんなことに気が付くわけがない。

 会長が本気で走ることでレース自体が面白くなっているのだから。

 残り100mで前に走る走者に追いつき、そのまま外から抜くと歓声が湧きあがる。

 そして、ラスト50mの直線。

 会長は前半からのスピードを維持しながら前に走る走者と並ぶ。


「頑張れーーーー藤堂会長!!!」

「イケイケ~!生徒会長~!」


 周りからの歓声に答えるかのように会長はスピードを上げようとする。

 ほんとあの人は化け物というかバカというか…盛り上げるためなら自分の疲れなんて気にしないらしい。

 ゴールテープ手前で会長が前を走る走者に並ぶ。

 そして、最後の最後で身体を投げ捨てるかのように頭を突きだす。


 会場が一旦静かになり、皆が固唾をのむ。

 その静寂を破るかのように放送部のアナウンスが流れた。


「えー、今のゴール判定の結果……生徒会長が先にゴールしてます!!!」


 会場全体に流れるアナウンスの声が聞こえないぐらいの、地面が揺れるんじゃないか?ってぐらいの歓声が一気に会長へと注がれる。

 そして、会長はそれに答えるかのようにピョンピョンと跳ねながら満面の笑みで同じクラスの人たちと喜びを分け合っていた。


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