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第34話 我が儘なんです。

 

「よーーーい!ドンッ!!!!」


 一斉に借り物競走に参加した人たちが箱に向かって走り出す。

 僕もその1人で何十番目かは分からないがようやく箱に辿り着いた。


 辺りを見回せばすでに紙を取り、探しに行っている人。

 声を出して相手から出てきてもらおうとする人。

 引いた紙が悪かったのか軽く舌打ちをする人。

 そして、明らかに落胆している人。


 落胆している人はたぶん守る会の人だと思う。

 美少女とか美人とかそういう紙を取った時に会長の所へ行こうと思っていたんだろう。

 僕は箱の中に手を入れ、たくさん入っている紙の中から1枚、紙を取る。

 そして、その中身を見るとこう書いてあった


「学校の中で一番我が儘だと思う人………」


 僕の中で1人しか出てこないのはどういうことだろう…。

 知り合いは少なくない方だけど…一番となると1人しかいない。

 岩瀬先輩でも要くんでも無く、会長だ。

 あの人の我が儘度は僕の今まで生きてきた中でもトップに君臨する。

 でも、どうしようか…この借り物競走はちゃんと紙に書いたものかどうかを判断するために体育委員さんがゴール地点に立っている。

 この一番我が儘だと思う人。というテーマで会長を連れて行ってOKがもらえるんだろうか…。

 そもそも、判断の付きにくい紙なんて入れないでほしいよ…、この紙を取った人の感性で決まるもんじゃないか…これ。


「ん~……まぁとりあえず連れて行ってみようかな」


 紙をポケットの中に入れて、2年生の所へ向かう。

 会長は一番前で自分のクラスの人を応援していたのかワーワーとはしゃいでいる。

 本当にこの人で良いんだろうか…。そんな不安を残しながらも会長の所へ向かうと僕の事に気が付いてくれた。


「あれれ?ワンちゃんどうしたの?」

「いや、ちょっと会長を借りようかと」

「わ、わたしっ?」

「はい、お願いしてもいいですか?」

「うん、いいよ」


 会長の手を取ると周りから恐ろしい殺気を込めた視線が飛んでくる。

 その視線は僕の心臓を握りつぶすような痛みだけどここは耐えるべきだ。

 借りモノ競争のルールで、紙に書かれた物は手に持ちながら。ってのが書かれているからしょうがない。

 一刻も早くこの殺気を込めた視線から逃れるために会長を引っ張るようにゴールへ向かう。

 そして、手早にゴール地点に立っている“女性”の体育委員さんに紙を渡して、確認してもらう。

 こんなの男性の体育委員なんかに見せたら殺されてしまうからだ。


「すみません、これ良いですか?」

「はい。…………えっと…」


 やっぱりそういう反応になるよね…。

 体育委員さんは困惑したような顔をしながら紙を会長を見比べる。

 悩むならこんなテーマ書かなければよかったのに…。


「…まぁOKです。はい」

「ありがとうございます。会長、さっさと行きますよ」

「ちょ、ちょっと待ってよ。なんて書いてるのか見せてよ」

「そんなの後です。今はゴールが先ですよ」

「でもでも気になるんだもん。見せて見せて」

「あ、でもあの」


 会長が無理やり体育委員さんから紙を奪おうとしているのを無理やり引っ張って距離を離す。

 あの紙を見られたら後がメンドクサイ。拗ねた時には何されるか分からない。

 さすがの体育委員さんもそれを感じてくれたのか、紙をさっさとクシャリと握り潰してポケットの中に入れてくれる。

 そして、少し納得したような顔をしながら僕たちをゴールへと促す。


「ゴールはもう少しですよ、頑張ってください」

「ほら、会長いきますよ」

「あぁ~、気になる」


 残念そうな顔をしながら会長は諦めたように僕の後を付いてきてくれて、無事ゴールをする。

 しかし、これからが大変なのだ。

 大変なミッションの攻略法は………。


「ワンちゃ」

「会長、ありがとうございました。無事ゴールできました。それじゃ僕は帰りますね」

「ちょ、ちょっと待って」

「すみません、トイレに行きたいので。それじゃ!」


 シュバッ!!と手を挙げて別れを告げる。

 そう、攻略法は逃げることなのだ。

 僕の後ろから何か会長が「教えてよ~!!!」と叫んでいるが僕は振り向くこと無く逃げた。



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