第33話 体育祭開始!
パンっ!!と空砲が鳴らされると4人が一斉に走りだす。
その中でもずば抜けて速い人がグラウンドの人の歓声を浴びている。
そして、その人は一番手でゴールをすると両手を挙げて歓声に応える。
「ほんっと綺麗だよなぁ…藤堂会長」
至るところからそんな声が聞こえてくる。
女子からもそんな声が聞こえてくるから怖い所だ…と思いながら手を振る会長を見る。
改めて考えてみると、本当にどうしてあんな人に惚れたんだろうか…。
見た目だけはかなり良い。でもそれだけなんだよなぁ………我が儘でゲーム中毒で……ほんっと中身は良い所無いな…。
「真也、どーして運営の方やらないの?」
要くんが違うクラスからわざわざ椅子を持ってきて話かけてくる。
「体育委員さん達が、ぜひやってほしいって」
「ふ~ん、それにしても綾ちゃんは楽しんでるね~」
「そうだね。沢山種目出るらしいよ」
「ふ~ん……一つ言っていい?」
「何かな?」
「綾ちゃんの方見過ぎじゃない?確かに可愛いのは認めるけど」
「み、見てるわけじゃないよ」
「いや、見てたよ?まぁ惚れてるならしょうがないけど」
「ちょ!それここで言わないで」
「っぷぷ、大丈夫だって。それよりも守る会の現会長ってどの人か分かる?」
「藤堂綾乃を守る会の?」
「そっ」
「え~っと、岩瀬先輩が言うには3年生のBクラスで委員長してるって言ってたけど?何するの?」
「まぁその菜緒ちゃんに頼まれたんだよね。犬塚くんがなかなか行動に起こしてくれないから君にやってもらいたいって」
「………あ~、ごめん」
「くくっ、別に大丈夫だよ。これでも一応あの人の弟だし慣れてるから。ほら、それに俺って何気にイケメンでしょ?あと俺のバックに綾ちゃんと女の子を付けてるから手出しできないしね」
要くんはニヤニヤしながら笑う。
この人が言うと嫌みを感じるより納得させられてしまうから不思議だ…。
要くんはカチカチと携帯を触り終えると僕の手を取る。
「さぁて、鬼退治と行きましょうか!」
「ちょ、ちょっと待って…僕も行くの?」
「当たり前じゃん。真也も副会長だし、綾ちゃんに良い所見せたいなら頑張りどころだと思うよ」
「そんなことは別に…」
「まぁまぁ~、いいじゃんいいじゃん。ほら、行こう」
要くんは僕の手を離さずにズンズンと3年生の応援席の方へ進んでいく。
ほんと…注目を浴びる姉弟だな…3年生の女生徒は皆、彼を見ている。
「え~っと、柏さんですか?」
守る会の会長さんがこっちを睨むように見てくる。
最初っから敵と認識されてるのか…僕らは…。
「何かな?君は確か綾乃様の弟さんだよね?」
「あらまぁ、よくご存じで。それなら話は早い、うちの綾ちゃんに迷惑のかかること辞めてくれません?
すっごく迷惑なんだよね。他の生徒がビビってるし」
「それは別に私に関係なくないか?」
「関係ないなら俺来ないもん。あんたら間接的に会長に迷惑かけてんだよね、学校の風紀が乱れると生徒会に迷惑かかることぐらいわかるでしょ。いい加減にしてくんないとこっちも手を打たせてもらうよ?」
要くんは守る会の会長さんに対し、周りに聞こえないようにコソコソと話す。
そして、ニヤッという笑顔を作ってから離れると会長さんの顔色が凄く悪くなっていく。
なんと言ったんだろうか…要くん…。
「それっじゃ、そこんとこよろしくお願いしますね」
怖い子だ…この要くんは怖い子だ…。
後ろでボケ~っとしながらそんなことを考えていると急に要くんが僕を前に出す。
「副会長もこう言ってるので自重してください。んじゃ俺達行きます」
「ちょ、ちょっと要くん!」
「大丈夫大丈夫、もし真也に危害を加えたら鈍感な綾ちゃんだって気が付くって。それに、真也に何かやったら俺が許さないから」
要くんが僕の後ろにいる守る会の会長さんに睨みを利かせているらしい。
この人は本当に顔もイケメンだし、性格もイケメンだよ…。
要くんと僕は3年生の応援席を抜けて自分たち1年生の所へ戻ると、ちょうど今から200m走が始まる所らしい。
「いやぁ、俺もやるときはやるよなぁ。さっきの人に言った言葉なんてほぼ告白じゃんよ」
「え…?」
もしかして友達としてじゃなくてそっちのが…。
「違う違う!そんな後退りしなくてもいいから!ったく…まぁいいや。ほら、次は借りもの競争。真也出るんでしょ?」
「あ、うん。それじゃ行ってくるよ」
「借りやすいモノが当たるといいね。好きな人とか」
「それだけは絶対に引かないことを祈るよ…」
というか、そんなものも入ってるのか…あの箱の中身は…。
嫌な予感が出そうになるのを振り払うかのようにブンブンと頭を振ってから集合場所へと向かった。




