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第31話 逆カップル?

 

「会長、この前言ってたイベントの許可を校長から貰いましたよ」


 椅子の上でカチカチとゲーム機を触りながらモンスターを狩っていく会長に紙を提出する。

 この紙に書かれている内容は前に言っていた「女装」のことである。

 もちろん、僕が女装するというだけで校長の許可を得るなんてバカらしいので、ちゃんとした学校のイベントとして実行する。

 そうすれば僕が女装しなくても済む可能性が大だから。


 会長は?な顔をしながら僕の差し出した紙を受け取り、目を通していくと徐々に顔が明るくなっていく。

 そして、僕と紙の交互を見ながら輝かせていく。


「これホント!!!」

「はい。一応やることは許可を得ただけでどこでやるかいつやるかはまだ決めてないですよ」

「それじゃ今から決めようよ!」

「体育祭があるのでその後ですね」

「それじゃ文化祭でやるのはどうかな?体育館を貸し切って生徒会企画の」

「それはいいと思いますけど、参加者の人数が20人はいると思いますよ?」

「どして?」

「どうしてって…そりゃ体育館を貸し切るんですからそれなりの大きなイベントにしないと」

「ん~それじゃ今からポスター作って体育祭が終わったと同時に貼っていこうかな。ちなみにどう言った感じにする?」

「とりあえず、女装がメインなんですよね?僕はこの前会長が言っていたことを校長とかに話を通してきただけなので」


 そんな詳しいことなんて僕が勝手に決めた所で会長がそのままOKなんて出すとは思えない。

 そもそも、この企画の発端は会長なんだから、詳細は全部任せようと思っていた。

 会長は僕が何も決めていないことを少し驚きながらも、僕が「会長に任せます」と言うと嬉しそうな顔をしながら一枚のA4の紙にやりたいことを次々と書いていく。

 そして、その中から僕が1つ良いと思った物を指差してみた。


「この逆カップルっての面白そうですね。どういう意味ですか?」

「ん?これ? これはね~、女装した男の子と男装した女の子でカップルのようにしてもらうの」

「あ~だから逆カップル」

「そう。私もこれはいいなぁって思ってたんだ。これをメインに考えていこうっか」

「いいんですか?そんな簡単に決めちゃって」

「良いよ良いよ。ワンちゃんも良いと思ったのでやるのが生徒会の総意志だしね」

「……成長しましたね、会長」


 ちょっと前なら自らの意見をすべて押し通すかのような…まぁ実際はそんなこと無いんだけど。


「まぁそんなことでもあるんじゃないかなぁ」

「頭に乗らないでください。その企画より今は1週間後に迫る体育祭の事に集中してください」

「うぅ~…体育祭はもう準備万端じゃんよぅ」

「それでも確認の方、お願いします」

「うぅぅぅ~…めんどくさいよぅ…ゲームやりたいよぅ…」

「さっきまでやってたじゃないですか…はぁぁ…」


 世の中には麻薬中毒って言う人がいるようにゲーム中毒っていうのもあるんだろうか?

 会長の指は空中でゲームをするような動きをする。

 それは傍から見ればとても気持ち悪いのだけど…まぁ気にしないのが正解だと思うので気にしないようにする。

 しばらく会長の動きを観察していると徐々に会長の手が机の上に置いてある携帯ゲーム機へ伸びていく。

 さて、あと何秒まで待てるんだろうか………あ、5秒で陥落…。


「いやっは~、止まらない!止まれない!モンスターが私を呼んでる!」

「………」

「ちょ、ちょっと…なんで私から少し距離を取るの?ワンちゃん」

「いや…正直に気持ち悪いな、と」

「ひ、酷い…」


 さっきまで嬉々していた会長の顔が一気に沈み、目に涙が溜まっていく。

 そして、相変わらずこの人は最悪なタイミングで生徒会室のドアを開けるのだ。


「ま~た、真也くんが綾乃を泣かせている。ほんっと守る会より真也くんの方が風紀を乱しているのか?」

「岩瀬先輩…なんつータイミングで入ってくるんですか…」

「いやいや、楽しそうな展開だったのでドアの後ろでコッソリと聞き耳を立ててたんだよ。そしたら予想通り面白い展開に」


 岩瀬先輩は楽しそうな顔をしながら僕との距離を詰め、耳元でコッソリ告げる。


「あまり綾乃を泣かせていると嫌われてしまうよ」


 岩瀬先輩の声がこそばく、獣のように距離を取る。

 その姿を岩瀬先輩はニヤニヤしながら笑い、泣きそうになっている会長の相手を始める。


「ほらほら、真也君は綾乃の事が好」

「ちょまっ!!!」

「す?」

「くくっ…真也くんは綾乃の事を尊敬してるんだから綾乃もその期待に応えてあげなよ」

「尊敬…ワンちゃんが私を……そっか、うん!頑張るよ!私!」


 ヤバい…なんか嫌な予感しかしないのは僕だけじゃないはずだ。

 証拠に岩瀬先輩は嬉しそうな顔で僕に向かってグッと親指を立てる。これは明らかに大変なことが起きるという確信をした顔だ。

 それも岩瀬先輩に降り注がれる不幸では無く、僕に降り注がれるんだからそりゃ岩瀬先輩は楽しいだろう。


「そうだよ!綾乃、その意気」

「うん!ワンちゃん、私は絶対にワンちゃんの期待に合うような活躍をするからね!」


 あぁぁ…もう何も言えない…。

 会長は完全に張り切ったような顔で僕に視線を送る。

 そんな視線にすら可愛いと思ってしまう僕はもうバカとしか言いようがないんだけど…。



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