第30話 3大イベント!!!
始業式も終わり、また普段通りの生活が戻る。
勉強して、休んで、勉強して、生徒会室来て仕事して、帰って、風呂入って、ゲームして、寝る。
この繰り返し。
これが日常なのだろう。
しかし、学校生活をしているとこの日常にあるイベントが差し込まれる
2学期の大きなイベントと言えば、体育祭・文化祭・修学旅行の3大ビッグイベントだ。
この3つは高校生活において一番の楽しみの3つと言っていい。
そのため、イベント事のほぼすべてを取り扱う生徒会はひじょーーーーーに忙しかったりするのだ。
「え~っと、体育祭のタイムスケジュールはこれでおっけーだよね?」
「はい。ハンコも確認済みです。あとは保護者宛のを生徒に配るだけです」
「そかそか。それじゃ文化祭のは?」
「文化祭のはそっちです」
「あ~これね。…これ予算どうするの?」
「例年だと去年の売上や人気のクラスに多く支給されてますね」
「去年もそうだったんだっけ…あ~、ん~…とりあえずゲームしよっと」
会長はドサッと文化祭の資料を僕の横に積まれている資料の山の上に置いて、カバンの中からゲーム機を取り出す。
この人は…僕をイラつかす天才なんだろうか?
持っていたシャーペンの芯がポキッと折れてしまうほど無意識に力が入っていたらしい
「会長、仕事してください」
「ちょ、ちょっと…ワンちゃん怖いよ」
「僕が忙しく働いてるのに何してるんですか?」
「わ、ワンちゃん?眉間にシワが…ほら、こんな風に」
会長は指で眉間にしわを作る
しかし、そんなこともイラつかせる原因だったりするんだけど…ここで会長を怒っても時間の無駄だ
大きくため息を吐いてから、視線を資料に移す
「ワンちゃん?ワンちゃ~ん」
「…………」
「……し、シカト」
「綾乃~、来てあげたよ~…ってあれ?なにこの雰囲気…」
ガラッと生徒会室のドアが開くと岩瀬先輩が入ってくる
ジャストタイミングと言えばジャストタイミング。これで会長の相手はしなくて済むのだから
「奈央ぉ~…ワンちゃんが拗ねちゃったんだよぅ…」
「ふ~ん、あっそ。別にどーでもいいかな。それよりも真也くん、ちょっと良いかな?」
「はい?」
「無視しないでよぉ!!!」
「ちょ~っと真也くんと話したいことがあるんだよね。あ、そうだ、綾乃」
「何かな!」
やっと自分に話が来たと思って物凄く嬉しそうな顔をする会長相手に岩瀬先輩は笑顔を振りまくこともせず、真剣な顔で告げる
「部屋、出ててくんない?」
まさに心の底から出たようなストレートな言い方。
会長もさすがにここまでのことは想定外で????と頭の上に?マークが並ぶ
しかし、岩瀬先輩はそんな逃げ道を残すほど優しくも無かった
「だから、今から私と真也くんで2人だけで話をしたいから出てってくんない?」
「………うわぁぁあぁぁん!!!」
岩瀬先輩はガラッとドアを開けながら言うと、会長は涙を流しながら全力でそのドアから出ていく。
ノリの良い人だなぁ。という意見が言えれば良いけど、あれって結構本気だったりするんだよな…あの人の場合。
岩瀬先輩はそんなこと気にせず、極めつけに生徒会室の唯一の出入り口のドアに鍵を締める。
ここまでされたらもう僕に何かしらに危険性があるのはほぼ確実と言っていい。
一歩ずつ僕との距離を詰めてくる岩瀬先輩は僕の横の椅子に座ると僕の顔を直視した。
「さて、邪魔者も居なくなったことだから本題と行こうかな」
「本題ですか?」
「そう。最近、綾乃を守る会のメンバーが風紀を乱していてね」
「そうなんですか?」
「彼らのせいで他の生徒から苦情が風紀委員の方に来ているんだ。生徒会に送れば綾乃の耳に嫌でも届くだろうからそれを避けての事だろうと思うけど」
「なるほど。それで?」
「そこで、真也くんの登場だよ」
「…え~っと……意味が分かりません」
どこからどうやったら僕の登場シーンが出てくるんだろう?
岩瀬先輩はカッコよく僕に向かって指を指しながら言う。
「君はこの学校で唯一、綾乃の近くにいる存在だよ」
「そりゃ生徒会長と副会長ですから。嫌でも近くに座りますけど」
「そういう意味での近くじゃないよ。ん~…難しいなぁ……こういうのって」
「こういうの?」
「ん~~~………一応、私もバカじゃないからあまり人に干渉したくないんだけど、こればっかりはうちの風紀委員も困ってる問題だから…しょうがない。言っちゃうよ?いい?」
「いい?って聞かれても…何聞かれるかも分からないので答えようが…」
「まぁそうだけど。まぁいいや、言っとくけどこれに気が付いてるのは私だけだから。そこんところよろしくね。 真也くんって綾乃に惚れてるでしょ?」
「なっ!?」
「そんな、なんでばれてんだ!!的な反応はいらないけど、普通に見てたら分かるって。ただまぁ他の人たちは単純に憧れ対象として見てるんだろうけど」
「え~…えっと~………どうしてわかったんですか?」
「私は綾乃とは幼馴染だからねぇ。ずっと一緒に居たからそういう人と真也くんみたいに本気で惚れた人の違いぐらい分かるようになるよ」
「いや、本当に知りたいんですけど!」
もし、こんなことがバレたら生き恥じゃないか。
それも副会長。という位置でさえ危ういのに惚れたなんてバレたら命が何個あっても足りない。
僕の本気の質問に岩瀬先輩は困ったような顔をしながら頭を掻く。
「ん~、直せないと思うよ?そういうの無意識だから」
「でも知りたいんです!」
「まずは綾乃を見てる時の目とか?」
「どういう目ですか?」
「ん~、難しいなぁ~。言葉にできない目?」
「意味が分からないです」
「とにかく恋した目なのは確か。あ、でも皆の前ではそういうの感じは無いから安心して良いよ。プロだね、真也くんは」
岩瀬先輩は茶化すように言うけど、僕には届いていない。
なぜなら顔が爆発しそうなぐらい恥ずかしく、今すぐにでもここから飛びたいぐらいなのだ。
しかし、そんな勇気もないため頭を抱えるぐらいしかできない。
「まぁそんな落ち込まなくても良いんじゃない?綾乃を守る会の人達と同じような感じだし」
「あれと一緒にしないでくださいよ………あの人の上っ面だけなら惚れませんって…」
「お、言うね~、まぁでも綾乃の中身は我が儘娘だけどね」
「……確かに」
反論の余地なし。
どうしてあんな我が儘な人に惚れちゃったんだろ…。
本当に不思議だ…。
「そんな考え込まなくても好きになっちゃったんだししょうがないでしょ」
「…まぁそんなもんですよね」
「あら、意外とすんなりと」
「バレたならもうどうしようもないですから。それで?さっき言ってた僕がすることというのは?」
「そうそう、とりあえず真也くんにはその守る会に対して何かしらのアプローチをしてほしいわけ」
「えっと…死ねと?」
「ううん、そうじゃないよ。ただ綾乃に言うとややこしくなるから真也くんに頼んでるだけ」
「尚更死ねと言われているとしか…」
「とりあえず一時的でも守る会が黙ってくれるような行動をしてくれればいいよ。黙る瞬間があれば私がそこを突いて苦情が出ない程度まで黙ってもらうから」
「それはどういう意…」
「知らない方が良いよ?」
岩瀬先輩はにっこりと笑う。
これは本当に知らない方が良いかも…。
岩瀬先輩の笑顔を見ながら俺は心の底からそう思った。




