第3話 守る会ってのがあるんです。
「ふぁぁぁぁ~…眠い…」
4時間目が終了し、お昼休みの時間。
さっさと食べたお弁当をカバンの中に仕舞って、お腹も満たされた僕の頭は次に睡眠を要求してくる。
やっぱり昨日は頑張りすぎたんだろう。夜遅くまでゲームをしてしまって完全に寝不足だ。
腕を枕にして昼休みの時間だけ眠ろうとすると周りが急にざわつきだす。
「犬塚、犬塚。聞いたかよ、昨日、綾乃様に告白した猛者がいたらしいぜ」
クラスメイトが僕に話かけてきた。
正直、「だからなんなんだ?」と言いたいところだけど、ここは適当に話を合わせるのが妥当だろう。
「へぇ、すごいね」
「なんだよ、犬塚は興味無しなのか?やっぱり毎日身近で見てる奴は違うなぁ。羨ましいぜ」
「別にそういう意味じゃないけど。ほら守る会ってのがあるでしょ?それは怖くないのかなぁって」
「あ~、あれね。もちろん制裁はあるだろうな。だって綾乃さまを困らせたんだから」
そういうこの人も“藤堂綾乃を守る会”のメンバーだったような…あまり深く考えない人なのかもしれない…と思ったけど明らかに守る会の人だな…顔が怖い…。
その会長に告白をした猛者の事が少し心配になってしまうけど、ここで意見を言えば「犬塚は副会長だからな。今すぐ制裁したいぐらいだ」と僕にターゲットが移りかねないので頬笑みで適当に回避する。
というか、僕は別に副会長になりたくてなったわけじゃない。だから、皆から恨まれるのは筋違いなんだけど、そんなことを言ってしまったら最後、学校に通えなくなるので言わない。
そもそも、この学校の生徒会メンバーを選ぶ際の基準がおかしいのだ。
僕が通っていた中学校では生徒会長、副会長、書記と言った生徒会メンバーに必要な人は立候補者を募って、そこから選挙をして選ばれていた。
しかし、この学校は生徒会長のみ立候補者を募り、その立候補者の中から選ばれた生徒会長が必要だと思った人数だけ会長の権利で自由に選べるのだ。
つまり、1人で良いと思えば生徒会長1人だけの生徒会も可能であり、20人必要なら20人の生徒会も可能である。まぁ、20人も居たら何も決まらないため支持率が急低下するのは間違い無しなんだけど…。
そんな制度のせいで会長のあの一言に頷いてしまった僕はまだ学校に通いだして7日も経っていないのに副会長に選ばれた。ちなみに、僕はこの四條学園の歴史の中でも史上最年少の副会長らしい。
「ホント羨ましいなぁ~、変わってほしいぜ…あの綾乃様と毎日夕方まで入れるとかホント羨ましい」
できれば僕も変わってほしい…毎日、書類作成に教職員とのコンタクト。各クラブの要求を聞いてはそれが可能か不可能かを検討し、それを分かりやすくまとめた書類を作成。
そして、あの会長がしっかりと仕事をするように誘導だ。
このハードスケジュールを変わってもらえるなら変わってほしい。
「大変だよ。たくさんやることある」
「でも、綾乃様と一緒なんだろ?そんな疲れなんてぶっ飛ぶって」
ぶっ飛んで無いからこうして僕は眠たくて仕方がないのだ…あ、今日はゲームのせいだっけ?
「あ、そうだ。今度、綾乃様と会えるようにセットしてくれよ」
「いやぁ…それはちょっと無理かな…」
「はぁぁ…やっぱり忙しいもんなぁ。綾乃様は」
いやまぁ…忙しいのは忙しいんだよね…モンスターを狩らないといけないから…。
それよりも合コンみたいなことをできる時間があるならしっかりと仕事をしてもらうべきだろう。
僕は感じの良い笑顔を振りまきながら次の授業の時間に寝ようと考えた。