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第26話 じょ・・・そう???

 

「いい加減にしてください!」


 僕の堪忍袋の緒も切れてしまう。

 なぜなら会長が自前の化粧道具を持ち、僕に迫ってくるのだ。

 こんな状況になったのはある雑誌がキッカケだ。


 岩瀬先輩が置いて行った女性向けの雑誌を活字離れをしている会長が読んでいると急に「これ良いかも!!」と言いだした。

 そして、「ちょっと家に帰るね。楽しみにしててね」と楽しそうに生徒会室を出ていった。

 それから1時間後に嬉々して帰ってきたかと思うと今の状況である。

 ちなみに会長がいない間に雑誌の方を覗いてみるとそこには「女装男子特集」みたいなことが書かれていた。


「良いでしょ良いでしょ。ワンちゃん、元は良いからきっと可愛くなるよ」

「褒められてる気がしないです。というか、近づかないでください」

「ほらぁ、すこーしだけで良いから。私にお化粧させて?おねがい」

「可愛く言っても嫌です。絶対に嫌です」

「むぅ~…なら私男装するから!」

「何が楽しくて女装男と男装女をするんですか!」

「きっと楽しいと思うんだよね~。あ、そうだ!これを文化祭の生徒会主催イベントにしようっと。ん~でも今すぐやりたいし…夏休み明けのイベントで…」

「許可しません」

「生徒会長の私が言ってるんだも~ん、ワンちゃんには関係ないでしょ」

「僕だって副会長です。というか、これをさっさと終わらせてください」


 どさっっと会長の前に数冊のファイルを置く。

 これは今までの文化祭の資料であり、今から2カ月後に行われる文化祭を計画していくのだ。

 もっと遅くてもいいんじゃない?と思われがちだけど、文化祭ギリギリにすると修学旅行の計画ができなくなってしまうのである。

 ほんっと…高校生最大のイベントである修学旅行を生徒会に少しながら任せるこの学校の気がしれない。


「あぅ~…まだ夏休みだよ~」

「今のうちにしてないと修学旅行の計画ができないでしょ」

「そっか。修学旅行かぁ…今年はどこに行けるかなぁ」

「そういえば、この学校って2年の時にするんですよね」

「そだよ~、2年生になる時に名門大学受験コースと大学受験コースでクラスを分けちゃうから3年生になってもクラス変わらないんだよ。あとは3年生になっちゃうと受験突入しちゃうからってのも理由の1つかもね。私としては3年生でも良いけどね」


 会長は資料に目を通しながら、ニコッと笑う。

 そりゃこの人は天才だからどの大学にも行けるだろうよ…それにしても2年生でクラスが分けられるのは初耳だったりする。


「2年生でのクラス分けってどうやるんですか?」

「自分で選択するんだよ。名門コースの特徴は名前の通り、名門大学に合格するようにカリキュラムが組まれてるの。ただ、こっちに入っちゃうと勉強漬けの毎日になっちゃうからシンドイってよく聞くよ。ほら、イベントにも参加してない人いるでしょ?」

「あぁ、いますね。あれは名門コースの人達ですか」

「そうそう。それでよく参加して楽しんでくれてるのは大学受験コースの人達かな。こっちは自由だし、自分で勉強ができれば全然こっちでも良い感じかな。ちなみに私はこっちね」

「そうだったんですか?てっきり名門かと」

「名門コース行くと生徒会長なんてやってられないもん。それに私勉強嫌いだし」


 勉強が嫌いなのに学年一位になってる辺りを見ると周りの人が可哀そうになってくる…。

 そして、嫌みに聞こえないのが不思議だ。


「まぁどっちのコースに入ってもワンちゃんなら頑張れると思うけど。頑張ってね」

「頑張ってね。とか言われても困ります」

「どうして?」

「どうしてって言われても今の事を考えるのが精一杯ですもん」

「だよね~。私もそうだった。あ、それよりも文化祭の事なんだけど」


 持っているファイルを僕に見せてきて、「2年前の文化祭のコンセプトはこうだったんだけど、今年はどうする?」みたいなことを話していく。


 どのぐらい文化祭の事を話しあっていたんだろう?

 ふと僕のお腹の中の虫がぐぅーとなる。


「ぷっ…休憩しよっか」

「すみません…」

「ワンちゃんはお弁当?」

「はい。会長は外食ですか?」

「そだけど…いいなぁ、お弁当…自分で作ってるの?」

「いえ、母さんが」

「そっかぁ…いいな~お弁当」


 会長は涎をジュルリと音を立てるかの如く、僕のお弁当に視線を送る。

 これでは食べたくても食べられない。

 お弁当を移動させても会長の目はその後を追ってくるのだ。このままでは僕が箸で持ちあげた物まで見続けるに違いない。


「…た、食べますか?」

「ふぇ!?いいの!?」

「そこは、大丈夫だよ、食べててって断りを入れるべきだと思いますけど…まぁ会長らしいって言ったららしいですけど…」

「えっと…それは褒められてるの?」

「微妙ですね。どうぞ、僕はコンビニで適当にご飯買ってきますから」

「あ、それじゃわたしがお金出すよ」

「別に良いですよ。パンとジュースだけですから」

「ん~でも…」

「ならジュースでも奢ってください。じゃ食べててください。行ってきますから」

「うん。ありがとうね。あ、お礼にお化粧させて」

「あははは、その弁当に毒、盛りましょうか?」


 せっかく忘れていたというのに…なんで思い出させるんだ、この人。

 ドアを勢いよく閉めて学校近くのコンビニへと向かった。



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