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第23話 会長特訓する!

 

「うひゃ~~、気持ちいい~~~」


 ばしゃ~~ん。と飛び込み台から飛んでプールの中を泳ぐ。

 外の温度は今朝の天気予報で34度ともう少しで体温になるんじゃないかというぐらい暑い。とにかく二言目には暑いという言葉が出てくるぐらい暑い。


 しかし、今はプールの中。

 水温がどのぐらいか知らないけど、これは天国と言っていいだろう。

 それに泳ぐのは好きな方だ。

 バシャバシャと学校の大きいプールを泳ぎ、疲れたらぷか~っと浮く。

 僕しかいないのプールだからこんなことができる。


「はぁぁぁ~…ホント気持ちいいなぁ…」


 このままずっと浮かんでいたいぐらいだ。

 しかし、今日はやるべきことがある。そう、会長を泳げるようにするという任務が。


「わ、ワンちゃん?いる?」


 こそこそと更衣室の所から顔を覗かせているのは生徒会長様だ。

 顔だけしか見えないけど、おそらく下はスク水かただの水着だろう。

 少しだけ期待してしまう。


「いますよ~」

「だ、誰もいない?」

「いませんよ。水泳部は大会に行ってます」

「ホントにほんと?」

「本当です。いいからさっさと出てきてくださいよ。何も始まらないじゃないですか」


 いつまで経っても顔だけしかプールサイドに出てこないから少しだけ強めに言う。

 すると会長はムゥっと不機嫌な顔をしながらも、ようやく姿を現してくれた。

 今日の会長は髪と1つにまとめていて、いつもよりお姉さんっぽい感じがする。

 そして、期待に期待をしていた会長の水着姿は残念ながら空振りで上にTシャツを着ていた。

 でも、Tシャツの下はスク水らしくTシャツで隠しきれない、つまり下半身が見えているのでそれはそれはエロさを感じちゃったりする。


「…そ、その…じーっと見られてると」

「あ、ごめんなさい。でもなんというか………会長、性格変わりすぎじゃないですか?」

「しょ、しょうがないでしょ。水着姿になるなんて何年も無かったし、それに男の子に見せるなんて初めてだもん」

「小さい時もですか?」

「小学3年生ぐらいから…」


 ということは、小学3年生から誰にも見られていない会長の水着姿を僕が初めて見るわけか…。

 なんだか少しだけ優越感。

 しかし、そんなことを思っているなんて知られたら大変なので表情には出さずに淡々と普段通りにする。


「そうですか。それじゃ…ん~そのTシャツは濡れても良いならそのままで行きますけど…重くなっちゃうし…」

「あ、うん。大丈夫、頑張る」

「なら、始めましょうか。とりあえずプールに入りましょう。ほら、足はちゃんと着きます」

「…………」

「会長?」

「…むり」

「はい?」

「入るの怖い。無理」

「………え~っと…冗談じゃなく?」

「…うん」


 この人…どうやって風呂入ってんだ……。


「ん~…それじゃ徐々に馴れていきましょう。足だけプールに付けてみましょう」

「うぅぅ~………」

「大丈夫ですよ。こうやって座って足をプールに入れるだけです」


 プールサイドに座って、足だけ水に付ける。

 会長もゆっくりながら僕の横に座ると恐る恐る足をプールに入れる。


「どうですか?怖いですか?」

「だ、大丈夫。気持ちいい」

「なら次はバシャーンと思いっきりプールに入ってみましょう」

「む、む、無理!無理無理無理無理!!!」


 会長は首が一回転するんじゃないか?ってぐらいの勢いで頭を横に振る。

 そして、会長が顔を横に振るたびに髪の毛がパシンパシンッと僕の顔を叩く。

 今日の態度は普段と違って可愛かったから許してきたけど…ちょっとムカッてくる。

 しかし、ここは我慢だ。大人になれ、犬塚真也。


「じゃ、次はこうやって手で身体に水を掛けていきましょう」

「う、うん」


 バシャバシャと自分に水を掛けていく会長を見ながらふと気付いたことがある。

 それはTシャツが水にぬれて水着に貼り付いてしまっているのだ。つまり、会長の身体のラインが見えてしまっている。

 思わず、見てはいけない物を見てしまったような気がして顔を反らす。

 すると横からバシャバシャと顔を上にあげて、必死に目を瞑っているであろう会長の気配を感じる。


 さっきからなんだか僕らしくない…会長なんかにこんなドキドキしてしまっているなんて…あの会長だぞ?あの我が儘で自由気ままな…落ち付け僕!


「わ、ん…ちゃん…まだ…続けるの?」

「あぁ、すみません。もう大丈夫ですよ。どうですか?少しは恐怖心は無くなりました?」

「全然…」

「ん~、会長ってお風呂の時はどうするんですか?」

「えっ!?」

「いや、単純に水が怖いならお風呂とか入れないんじゃないかなぁって」

「お風呂はお湯だから大丈夫だよ?」

「あ~…お湯は良いんですか。じゃ、温水…あ~今はできないか…」

「大丈夫、頑張る」


 グッと拳を僕に見せる会長は実にカッコいいのだけど、顔と行動が全く合っていない。

 なぜなら今の会長の顔は今にも泣きそうなのだから。


「本当に苦手なんですね。ん~…入っちゃえば気持ちいいんですけどねぇ」

「怖いんだもん…」

「まぁ怖いなら仕方ないですよね。徐々に馴れましょう」


 ザブーンと僕だけプールの中に入り、会長に向けてニコッと笑って手を差し伸べる。

 会長は僕が握手を求めていると思ったのか、何の躊躇も無く僕の手を取る。

 しかし、会長の考えていることは全くの見当違いで、ここはもう強行手段が良いと判断した僕は一気にプールに引っ張る。


「きゃっ!?」


 大きな水しぶきを立て、会長がプール内に飛び込んできた。

 当然のことながら僕の方に引っ張っているため、会長は僕にぶつかる。

 会長は何が起こったのか理解できていないのか、バタバタと暴れる


「おぼ、おぼぼ、おぼぼぼ」

「ちょ、大丈夫ですって」

「おぼれる、溺れるーーー!!!!」

「いたっ、いたい!」

「おぼれ、おぼれる!」

「会長!ほら、大丈夫ですって。ね?落ち着いてください!ここにいますから」


 むぎゅっっと会長の顔を両方から抑える。

 するとひょっとこみたいな顔が出来上がり、これでも可愛い顔なのだからこの人の美少女っぷりには驚かされる。

 会長は僕の目を一直線に見て、ようやく落ち着いたと思うとポロポロと涙が流れ始める。

 そして、会長の右手が上げられたかと思うと僕の顔に向けて全力で振りおろされた。



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