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第22話 1学期終わり。

 

「今学期はお疲れさまでした!夏休みも精一杯楽しんで、2学期が始まった時に皆と楽しいイベントをしましょう!!!」


 会長が1学期の最後、終業式でグラウンド全体に聞こえるように言う。

 学生が待ちに待った夏休み。


 期末テストも無事に終わり、僕の成績も中間テストよりも良い成績で終わることができた。

 これも全部会長のおかげだ。

 あの会長ノートは恐ろしく成績を向上させる能力があるらしい。

 学年2位の成績を出せたのだ。それも英語・数学・古典・世界史・化学以外は学年1位だ。

 これの成績っぷりには担任も母さんもビックリしていた。

 母さんに至っては「カンニングしたんじゃないの?」とか「何か弱みを持っているの?」とか言われる始末である。

 そりゃ、中学の頃の中の中のような成績とはあり得ないぐらい上がっているから仕方がない。

 しかし、会長は当然のように「真也はやればできる子なんだから普通だよ」と言って何とも無いような表情をしていた。まぁ、その日は終始ご機嫌だったから相当嬉しかったんだと思う。

 だって、自分が教えた子が学年2位になったんだから。


 ちなみに今回の学年1位の人は会長の弟さんだ。

 名前は藤堂要とうどう かなめ

 要くんはお姉さんの会長にあまり似ていないがそれでも会長の男版のように求められるモノがすべて揃ったイケメンである。そして姉弟揃って学年1位であり、学校側からも絶大な支持を持つ。

 そして、そんな超優等生な彼は野球がとても上手かったりする。すでに1年生でエースピッチャー。

 まったく姉弟揃ってなんという家庭なんだろう…と嫉妬までしてしまいそうになる。

 しかし、やはり欠点はあるらしく、野球以外のスポーツに関しては、運動ができない子より酷い。

 とある体育の時にサッカーをした時、「要~こっちにパスー!!」と前にいるクラスメイトに言われて蹴ったボールはどういう理屈が働いたのか分からないが、後ろに飛ぶという妙技を披露した。

 あとはフリーキックでも普通は前に飛ぶのに横に飛んだり、ボールを蹴ろうとしてシューズが飛んでいくなどの珍技をしている。

 要くん自身も「俺は野球以外まったくダメなんだよなぁ~」と自負している。

 しかし、このギャップも女の子からしたらポイントアップらしく、彼の失敗を見るためにコッソリ授業を抜ける子もいるぐらいだ。やっぱりイケメンは何やってもイケメンらしい。


「真也、もう帰る?」


 終業式も終わり、先生のHRも終わった頃、要くんが僕の教室に訪れた。


「ううん。まだちょっとやることがあるんだ」

「そうなんだ。大変やなぁ、生徒会」

「まぁね。要くんもやってみる?僕が推薦するよ?」

「いや、いいや。綾ちゃんいるし」

「残念、僕の席を譲ってあげようと思ったのに」

「それは勘弁して。俺、綾ちゃん苦手だし」


 要くんは苦笑いをしながら呟く。

 せっかくなら超優秀な姉弟を生徒会に入れた方が楽なのにと思ったんだけど…なにやらこの2人には変な壁というか、間があるらしい。


「生徒会、頑張って」

「うん、また暇があったら遊ぼうね」

「おつかれさま」


 クールに去っていく要くんの後ろ姿を見ながら、僕は教室を出る準備をする。

 今日はなるべく早く行かないといけないのだ。


「すみません、少し遅れました」

「遅いッ!遅いよ、ワンちゃん」

「すみません」


 夏恒例、夏合宿の申し込み書がドサッっと生徒会室の机の上に山のように置かれている。

 こういうのは教師側がやるべきなんじゃないか?と思うけど、これも生徒会が全部目を通して、ちゃんと予算内に収まっているか、どのような内容なのか、とか確認して生徒会長がOKとハンコを押したものだけ教師側へ行く。

 つまり、教師が楽をしたいというただ1つの希望のせいで終業式が終わった途端、生徒会は地獄になるのだ。


「私、去年もこれ経験したんだけど…さすがに同好会の数を減らしてやろうかと思ったんだよね」


 会長は文字で埋め尽くされた紙を見ながら呟く。

 確かに、この数は異常である。

 部活の数はおよそ30を超え、同好会に非公式を入れると生徒会でさえいくつあるのか分からない。

 その数知れない同好会のほとんどが合宿要請をしてくるのだ。

 場所は様々。どっかの聞いたことのある旅館の名前を書く者、学校と書く者など。

 もちろん前者はただの旅行なので不許可。


「それにしても…これ全部読まないといけないんですか?」

「一応、提出されているんだから読まないと。中には本格的な合宿をする同好会もあるんだから」

「例えばどんなのがあるんですか?」

「サバイバル食同好会とかはどこかの山に籠るっていう合宿だったらしくて1週間、サバイバル食で生き抜いてたね」


 なんだ…サバイバル食同好会って…サバイバル部と何が違うんだろう…。


「あとは~…ダーツ同好会は教室を1つ借りて、自分たちで機械を持ってきて3日間投げ続けるってのもあったよ。あ、そうそう、一番面白かったのは地上絵同好会」

「なんですかその同好会」

「グラウンドに地上絵を描くの。これは私も見たかったから頑張ってグラウンドを1日だけ空けてあげたんだ~」


 会長の中では良い思い出らしく楽しそうに笑う。

 そういえば、去年の新聞で「学校に地上絵現る!」みたいな記事があったような気がする。

 学校ってここの事だったのか…。


「ほんとうに凄かったよ~、ちょうど上にどこかのテレビ局のヘリコプターが飛んでて偶然撮影したらしいの。それで放送していいか?みたいなの来たんだよ。まぁ結局は地方の新聞に載ったぐらいんだけどね」

「その記事は僕も見ましたよ」

「そっか。それじゃあれはあれでよかったんだね」

「よかったかどうかは知りませんけど…とりあえず、今年もやるみたいですよ?」


 ちょうど僕が見ていた紙を会長に渡す。

 すると会長は上から下まで見ると勢いよくポンッと会長のハンコを押した。




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