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第20話 阿鼻叫喚?

 

 同じ人を探しましょゲームはただ今、地獄のような状態である。

 無理もない。優勝商品が会長の1日デートなんだから……


「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「ぎゃぁぁぁぁ」

「ぐはぁぁぁぁ」

「ぐぇぇぇぇ」


 阿鼻叫喚。

 まさにこの言葉が適しているかもしれない。

 会長を守る会の連中は優勝商品を狙う者をすべて蹴散らしている。

 つまり、男は全員あの世送りなのだ。

 女の子の中にも会長とのデートを狙っている人がいると思うがさすがにこの状況で名乗り出る者はいない。

 そもそも、こんな状態になったのは会長の気まぐれで発した言葉からだった。



 最初は勝ったチーム全員に欠席数を1つを減らすというのだった。

 しかし、そんなたった1つの欠席数を消すために必死になる奴なんていない。

 だから、皆ダラダラとめんどくさそうにやっていたのだ。


「なんか皆、やる気無いね」

「言ったじゃないですか、欠席数が1つ減った所で関係無いって」

「そうなのかなぁ。あっ、それじゃ私とデート権なんてどうかな?」

「はい?」

「ダメだよねぇ、私なんかとデートしたがる人なんていないだろうし」

「いや…それはたくさんいると思いますけど…、勝ったチームの人達全員とデートするんですか?」

「ううん。私が今さっき思いついた四字熟語を持ってきた人達だけ」

「いやいや…止めておきましょうよ…って、マイク入ってるし………」


 とこんな感じに今の地獄絵図が出来上がった。

 正直に言おう。会長はおそらくデートなんかする気はない。

 ただ、このイベントを盛り上げたいというただそれだけの気持ちだけ。だから、会長の心の中に秘められている四字熟語に当てはまる物は一生見つからない。

 その理由として、「さっき思いついた四字熟語を紙に書いてくださいよ」と言っても無視している。

 というか、すでに会長は今のこの地獄絵図なんか気にせずに岩瀬先輩としゃべってるし…


「あははは、でねそれで~」

「へぇ、面白いわね」


 何が面白いのか分からないけど、この地獄絵図どう収めるんだろう…。

 マイク越しで暴力をした場合は会長とのデートはありません!と言っておいたから暴力は無いけど、視線という暴力が飛んでいる。

 そして、すでに紙を捨てた人達には「もう帰ってもいいです」と言ってしまっているので半数以上が帰っていたりする。

 これはもう大失敗だ………。


 頭を抱えそうになりながらも、最後までこの地獄絵図を見る。

 そして、ようやく抵抗する相手がいなくなった頃、会長を守る会の会長…ってなんかややこしいな…仮にA男さんと名付けよう。

 A男さんが代表で僕の前にやってきた。なんというか、A男さんは凄く怖い顔をしてらっしゃる…。

 あとイケメンの分類に入る感じだから怖さが際立っているのだ。


「私が優勝表品を貰う。さぁ」


 威圧的な視線を僕に向けて手を差し出す。会長のデート権を渡せと言わんばかりだ。

 でも僕は答えを知らないし…そもそも、その会長は岩瀬先輩と楽しげに話してるし…。


「すみません、少々お待ちください」

「待たなくていい。俺の手元にはすべての紙が揃っているんだから。そもそも、俺はお前の事を好ましく思っていない。1年のくせに何が副会長だ、バカらしい。君はあの藤堂綾乃さんの足を引っ張っているだけじゃないか。君のような奴が彼女の横に居て良いとは誰一人思っていない」


 うわぁ…凄く嫌われてるなぁ…僕…

 人も殺しそうな視線を睨んでくるから少しビビる僕だけど、副会長になりたくてなったわけじゃない。

 むしろ今回のイベントも結局、最後の方は僕が頑張ってたわけで足を引っ張ってるとは思っていない。

 それに女子生徒からは「藤堂会長の横にいる子頑張ってるよね」とか「この前のテストの時も高得点でさすが副会長だね」とか「あの綾乃の横に居れるとか真也くんはある意味凄い」とか「真也くんの方が頑張っているよ」とか言われてたりするんだぞ!主に後者は岩瀬先輩だけど。


「この前の中間テストでも君は学年4位だったらしいね。藤堂さんの横に立つべき者なら1位であるべきじゃないのか?藤堂さんは常に1位だぞ?男として君は何とも思わないのか」

「思うも何も…会長は宇宙人ですから…」

「身の程を知れ。今すぐ副会長を辞任しろ、守る会の総意見だ」


 守る会の総意見だと言われても………辞めたくてもやめられないし…。

 生徒会役員を辞める時は会長の承認が必要なのだ。あの会長が承認してくれるとは思えない。


「何を黙っているんだ?ほら、今ここで辞めると言え。僕たちが証人になって」

「ワンちゃんが辞めたら私も辞めるよ?生徒会長」

「っ!? 藤堂さん!?」

「会長?」

「なんかワンちゃんが辞めるとか聞こえたから来てみたんだけど…終わったの?」

「はい。この人が全部紙を回収したらしいです」

「ふ~ん………それじゃその中から以升量石を探し出してね」


 会長は不自然なぐらいの笑顔でA男に言う。

 以升量石ってどういう意味なんだろう?というか、そんな言葉を作った覚えがないような…

 会長の後ろにいる岩瀬先輩は意味が分かっているのかクスクスと笑いながらどこかへ歩いていく。

 そして、会長は僕の手を取ると「それじゃ見つけたら生徒会室まで持ってきてね」と言って僕を引っ張りながら校舎へと向かう。


「あの、以升量石ってどういう意味ですか?」

「ん?あ~あれは………ん~……秘密っ」

「いやいやいやいや、舌を出しても何も可愛くないですよ」

「もう…そんなこと言うなら私はあげぽよ~」

「…使い方間違ってますよ」


 ダメだ…やっぱり会長はあのA男さんとは釣り合いそうにない…。

 もしA男さんにこんなことをしたら固まってしまうだろう。あの人は会長を完璧な部分しか見ていなさそうだったし…。


「そうそう、四字熟語で思い出したんだけどね。私とワンちゃんは唇歯輔車だと思うの」

「なんですかそれ?」

「ワンちゃんがダメになると私もダメになるってこと」

「そですか。僕は会長がダメになっても普通に過ごしますけどね」

「ひどっ!!」

「はいはい。それじゃちょっと僕はトイレに行ってくるので先に生徒会室行っててください」

「は~い。スッキリしてね」

「あなたに言われなくてもしますよって何言ってんだ僕…」


ほんと…この会長にあんな宗教的な守る会みたいなのができているのか理解できない…。

会長に聞こえるように大きなため息を吐きながら男性トイレの方へ向かった。



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