第19話 イベント!
中間テストが終われば次に訪れるのは生徒会が実施するイベントである。
テスト明けのイベント。これは生徒会が一番働かないとイケない時期であり、ここで如何に楽しい、なおかつ今後のテストに向けて士気を上げるかが腕の見せ所なのだ。
しかし、テスト期間中はほぼ生徒会の活動はできなかったと言っていい状態であり、スピード勝負になる。
テストが明けて1ヶ月も明ければ次の期末テストが近すぎて勉強ができない。
つまり、僕と会長の2人だけでは足りないのだ。
「死にそう…どうしてこんな忙しいの……私たちもテストから解放された身なのに…」
僕の横で机に上半身を預けゴロゴロとしながら「うぁぁぁぁ~…」と意味の分からない言動をする会長を横目に僕はカタカタとイベントに必要なことをする。
今回のイベントは全生徒を含めた「同じ人を探しましょゲーム」である。
事前に全生徒に何かの言葉が書かれた紙を配る。そして、同じ言葉を書いている紙の持ち主を探すというルール。
ただ、そんな簡単だと面白くない為、バトル方式となっている。
バトル方式のルールはこうだ。
紙に書かれた言葉、例えば「会長」という言葉は4つ存在しており、赤色で書かれた「会長」が2つ、青色で書かれた「会長」が2つある。
同じ色の「会長」という言葉を探して、僕たちの所に見せにくる。これで1ポイント。
赤チームと青チームの合計ポイントが高い方が勝ちになるというルール。
ここで重要なのは同じ言葉の紙は“赤と青の2色がある”と言うことであり、“同じ色の同じ言葉”で無いとポイントが入らないということである。
つまり、敵チームの紙を奪ってしまえば敵チームにはポイントが入らないということ。
正直言って、このゲームは簡単そうに見えて難易度が高い。
なぜなら、紙は当日にランダムに配布され、隣にいる友達は敵チームの可能性があるからだ。
味方、敵が分からないという警戒心が高い状況で味方を見つけ、同じ言葉を探す。
これほど難しい…いや、面倒くさいものは無い。
「しっかりやってくださいよ。会長は印刷された紙に色を付けていくだけじゃないですか」
「うぅぅ~…簡単そうに見えて面倒くさいんだよ、これ」
「僕はもっと面倒くさいんですけど…」
「真也は文字を打つだけでしょう。そっちの方が絶対に楽!」
「それじゃ変わりますか?」
「うん!」
この面倒くささを味わえばいい…貴方が「やっぱりイベント中も勉強できるように四字熟語にしよう!」と言ったことを後悔すればいいんだ。
そもそも、この学校の全生徒数は1000人近くいるため、言葉は約250語いる。
500語ぐらい簡単だろう?と思うかもしれないけど、意外と出てこないものだ。四字熟語なら尚更。というかそんなに四字熟語ってあるの?って思ってしまうレベルだ。
そして、四字熟語が出てきたと思っても、前に打っていた言葉だったりして精神的に参るのだ…自分の言葉のボキャブラリーの少なさに。
会長は僕が打ってきた言葉を確認すると「ん~~」と考え始める。
250語ぐらいの単語を書いていったため、たぶんそう簡単には出ないだろう。
「なっ…………」
なんだ、この人…
僕の横で行われているこのタイピングは何だろう?
ほとんど迷い無く会長の指が動いていく。
それも変換できない漢字は直接出している。
何この人こわい…
「やっぱりこっちの方が楽だよ」
「……はぁ、そうですね」
最初っからこの人に任せておけばよかった…なんて後悔をしながら「恒久平和」と書かれた4枚の紙に赤と青を塗っていった。