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第16話 テストお勉強

 

「だから、そこはそうじゃなくてこういう展開の仕方なんだよ」

「なるほど…さすがですね。会長」

「それじゃこれやってみよう」


 先生より分かりやすく説明してくれる上に同じ公式を使った問題を即座に出してくれるため、復習ができる。

 やっぱりこの人天才かも…。

 携帯ゲーム機を横でプレイしながら教えられるのはなんか嫌だけど、ちゃんと教えてくれるからそこは何も言わない。


 僕たち生徒会もさすがにテスト期間に近づくとやる仕事が減る。

 これは先生側の配慮と言っていい。というか学生の本業は勉強であり、生徒会メンバーは成績が悪ければ補習または解散的な強制意識が働かされている。

 でも、この生徒会長はそんなの気にしないらしい…。


「よっ、たっ…よっし、討伐完了~」


 そんな嬉しそうな顔しながら僕の答案を見るのは止めて………その笑顔が無くなっていくのを何度見ればいいんだろう…。

 そりゃ、僕が間違えなければ良いだけなんだけど普通に会長が出す問題は使う公式が分かっていたとしても計算が恐ろしくメンドクサイのばっかりだから計算間違いしてしまうのだ。

 そもそも数学は前から苦手科目。

 この前の抜き打ちテストでも数学は点数低かったし…やっぱり一から勉強し直すべきか…。


「ん~、ワンちゃんは公式とか理解できてるんだけど計算間違いが目立つかな」

「うっ…」

「前の抜き打ちも凡ミスが目立っててあの成績だったから、ミスさえ無くせばもっともっと良い点数が出せたよ」

「その言葉は小学生のころからずっと言われ続けてきました…」

「凡ミスはしっかりと確認すれば多少は治せるよ。どうせ、テストが終われば適当に見て寝ちゃってたりするんでしょう?」


 なんだこの人…僕のテストを受ける所を見た事あるのか?

 確かにテストの欄をすべて埋めたら適当に確認して寝ている。

 それがイケないのはよく分かっていることなんだけど、どうしてもテストからの解放感にやられてしまうのだ。

 会長もやっていはいるはずだ、こんな人なんだから。


「私はちゃんと確認してから寝ているもん。だからミスも少ないよ」

「…勝手に心を読まないでください」

「顔に出やすいんだよ、ワンちゃんは」


 ニコニコしながらスリープ状態にしていたゲーム機に電源を入れる。

 とりあえず、会長の事は気にせずに今は集中だ。今回の中間テストで悪い点数を出してしまえば生徒会解散ってことになりかねない。




「ふぅぅ~…疲れたぁぁ」


 くったくた…時計の針はすでに18時半を指している。

 そろそろ帰らないと…これ以上会長に勉強を見てもらうのも悪い。


「ありがとうございました。これだけ見てもらえたら十分です」

「そなの?別に私に気を使わなくてもいいよ?」

「いや、もう疲れたんで」

「ふ~ん、そっか。それじゃ今日はここまでかな」


 結局ずっとゲームをしていた会長は一切勉強なんてせずにゲーム機をカバンの中に入れる。

 というか、学校にゲーム機を持ってきているのはダメなんじゃ…あれ没収できるんじゃないか?と思ったけど、もし没収なんてしたら…。

「やめる!生徒会長なんて止める!!!ゲームが自由にできるから生徒会長になったんだよ!!!」とか言いそうだから止めておこう。


「ワンちゃん、なんか甘い物食べに行こ」

「帰って勉強してください」

「えぇ~、ちゃんと毎日勉強してるから必要無いよ」

「それならより一層勉強してください」

「ぶ~ぶ~、ちょっとは私に付き合えってよ~」

「今日は勘弁してください。ただでさえテストまで1週間しかなくて時間が足りないんですから」

「ハァ~ァ…テストなんて無くなればいいのに~」


 この人の言っていることには賛成だけど、この発言の根本は僕と大違いなので「そうですね」とは絶対に言わない。

 靴箱で靴を履き替えて、校門を出ると途中まで会長と同じ道なので一緒に歩く。

 もちろん殺意の籠った視線が背中に刺さるんだけど…こればっかりは仕方がない。


「そういえばワンちゃんの家って私行ったことないかも」

「別に来る必要ないじゃないですか」

「でも、私の大切な後輩さんだよ?ご両親にご挨拶しないと」

「先輩後輩の関係でそこまでする人初めて聞きましたよ」

「ん~単純にワンちゃんの家庭に興味があるんだよね、私」

「興味持たないでください」

「だって、チーズケーキ食べられた次の日にあの伝説のチーズケーキ持ってきてくれたんだもん。あれって予約も何もできなくて、ある日突然に売り出されるんだよ?」

「母さんが偶然持ってたんですよ」

「嘘だ~、だってあの日はインターネットでも売り出されたって言う情報なかったもん」

「そんなこと僕に言わないでくださいよ。母さんが偶然持ってただけなんですから」


 会長は人の心を見抜くような鋭い目で僕の顔を見てくる。

 僕もそれに対抗するように心の扉を鋼鉄で固めて開かないようにする。

 すると会長は大きくため息を吐きながら諦めたらしく、とぼとぼと横を歩き出す。


「会長、あのなんで着いてくるんですか?」

「ワンちゃんに意地悪されたから甘いものを買いに行くの」

「甘いモノ?」

「こっちに美味しいケーキ屋さんがあるの。まだ有名じゃないけど」

「………」

「ほんとだよ。この前、散歩してたら見つけたんだ。えっと名前は~…Kleine Glückだ!」

「何語ですか?それ」

「ドイツ語で小さな幸せって意味だよ」

「……なるほど」


 どうしてドイツ語なんだ?って聞きたいところだけど、気にしないのが勝ちだと言うことは知っている。


「そこもチーズケーキが美味しいんだよね」

「そうなんですか」

「あれ?なんだか興味無し?」

「いいえ。あ、ちょっと僕寄る所があるのでここで失礼しますね」

「そっか。明日も勉強見てあげるね」

「ありがとうございます。それじゃさようなら」

「さよなら~」


 さっきまで歩いていた方向とは逆に歩く。

 本屋さんで今日出た漫画を手に入れなければならない。まぁ本当は明日でも良いんだけど…。





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