プロローグ:無職の男が、異世界で生きていく。
これは、私が初めて書く作品です。
至らない点も多いかと思いますが、最後まで楽しんでいただければ幸いです。
俺は24歳の男だ。無職で、童貞で、何の特技もない。
それでも、両親はいつも俺を支えてくれていた。
ある日、インスタント食品を買うために外へ出た俺は、目の前にいる二人の女子生徒に目を向けた。
……待て。あの二人、高校生か?
スカート、少し短くないか?
少し下を向けば、見えてしまうんじゃないか。
そのとき、すぐ隣から「おい!」という声が聞こえた。
「何をしている?」
俺は緊張してしまい、うまく答えることができなかった。
すると、周囲の視線が一斉に俺へと向けられた。
目の前にいた二人の女子生徒は、怯えたように俺から離れていく。
……待て。
まるで、気持ち悪いものを見るような目じゃないか。
何人かの警備員がこちらへ向かってくる。
俺は何も考えずに立ち上がり、その場から逃げ出した。
何人もの警備員が俺を追ってくる。
走り始めて、まだ数歩しか経っていない。
喉は乾き、鼻の奥はひどく冷たく、全身が汗で濡れていた。
俺は長い間、まともに身体を動かしていなかった。
ほんの数歩走っただけなのに、もうひどく疲れている。
そのまま逃げ続けているうちに、俺はいつの間にか、逃げ道のない険しい場所まで来てしまっていた。
そして、ついに警備員たちが俺に追いついた。
「ああ……」
心臓が激しく脈打っている。
「ああ……俺の人生、終わった……」
俺には女友達すらいない。
このまま捕まれば、年を取るまで刑務所で過ごすことになる。
童貞のまま……。
そのとき、これまで心の中に抱えてきた恥が、さらに重くのしかかってきた。
このまま連れ戻され、両親と顔を合わせることを考えると、とても耐えられなかった。
あれだけ両親に支えてもらっていた。
それなのに、俺はその期待を裏切ってしまった。
俺には、両親と向き合う勇気がなかった。
俺は、すべてを終わらせることを選んだ。
遠くから、俺を止めようとする警備員たちの声が聞こえてくる。
しかし、もう遅かった。
そして――
俺の意識は途切れた。
静まり返った道を、パトカーのライトが照らしている。
現場の周囲には規制線が張られ、多くの警察官が現場を調べていた。
24歳の男が死亡しているのが発見された。
そして――
俺は、もう死んだのか?
何もない。
ここはどこだ?
死んだ後の世界なのか?
それなら、どうして俺には意識がある?
おい……誰かいるのか?
待て。
何も感じない。
何だ、これ……。
身体はどこにある?
俺は自分の身体すら感じることができなかった。
ここには何もない。
まずい……!
俺が知っている限り、何の情報も入ってこなければ、人間の脳は勝手に幻を作り始めるらしい。
俺は少しずつ、自分自身ではなくなっていくような感覚に襲われた。
自分が誰なのか。
なぜ、ここにいるのか。
それすら、少しずつ分からなくなっていく。
存在しないものが聞こえる。
存在しないものが見える気がする。
もう、自分でも何が現実なのか分からなかった。
ここへ来てから、どれくらいの時間が経った?
いつまで、俺はこんな状態でいなければならないんだ……?
はぁ……。
頼む……。
何でもいい。
何かを見せてくれ。
何かを聞かせてくれ。
何かを感じさせてくれ。
俺の意識は、ただ虚無の中を漂っていた。
音はない。
触れられるものもない。
何も感じない。
頼む……。
何かを感じさせてくれ。
すると、ゆっくりと――
一つの声が聞こえ始めた。
何かを押し出そうとしているかのような、女性の大きなうめき声だった。
最初は、かすかにしか聞こえなかった。
しかし、少しずつ、その声がはっきりと聞こえるようになっていった。
俺は何かの流れに運ばれているような感覚を覚えた。
ゆっくりと……。
何かに押されるように、俺の身体が外へと押し出されていく。
そして、何かが俺の身体に触れた。
冷たい。
その冷たさで、皮膚が焼かれているような感覚がした。
空気が肺へと流れ込んでくる。
まるで、身体が呼吸の仕方を思い出したかのようだった。
痛い。
でも、その痛みが嬉しかった。
なぜなら、こんなに長い時間が経って、初めて――
俺は何かを感じることができたからだ。
俺は、生き返った。
その直後、赤ん坊の泣き声が聞こえた。
重苦しかった空気が、少しだけ軽くなったように感じられた。
しかし、その声の意味は、俺には分からなかった。
周囲の人間にとっては、ただの赤ん坊の泣き声だった。
しかし、その赤ん坊にとって――
それは、自由の泣き声だった。
視界を遮っていた白く濁った膜が、ゆっくりと消えていく。
眩しい。
目を開けると、そこには一人の女性と一人の男性がいた。
ああ……やっと何かが見える。ありがとう
二人は医者らしい格好をしていなかった。
それでも、俺を助けてくれたのだと思った。
もしかして、落ちたときの怪我で死ななかった代わりに、身体が動かなくなったのか?
まだ、手も足も感じられない。
折れているのだろうか?
男は、俺を驚くほど簡単に持ち上げた。
……インスタント食品ばかり食べていたせいで、俺の身体はこんなに軽くなってしまったのだろうか?
男は俺の額に優しく口づけをした。
「何なんだ、この男……。これも治療の一種なのか?」
美しい女性は疲れているように見えた。
きっと、長い手術で疲れ切っているのだろう。
かなり大変だったに違いない。
二人は何かを話している。
……何だ?
俺には聞こえていないのか?
それとも、二人が何を言っているのか理解できないだけなのか?
日本語を使っていない。
もしかして、海外の病院なのか?
でも、そんな金がどこにあるんだ?
頭の中で少しずつ状況を整理しながら、俺は周囲を見渡した。
目に入ったのは、木製の壁と、あちこちに置かれた燭台の明かりだった。
まだ、状況を理解できていない。
そのとき、ついさっき忘れかけていた恐怖が、再び蘇った。
まるで、自分自身が狭い檻の中に閉じ込められているような感覚だった。
恐怖が一気に押し寄せ、俺は再び大声で泣き叫んだ。
自由にしてくれ。
俺は暴れ始めた。
そのとき初めて、両手と両足の感覚が戻っていることに気づいた。
これは夢だ。
そうだ。絶対に夢だ。
何なんだ、この小さな手は。
恐怖は一向に収まらず、俺は泣き続けた。
息が詰まる。
ここから出たい。
頼むから、外に出してくれ。
男は戸惑った様子で、どうすればいいのか分からずにいた。
やがて、男は俺を抱えたまま外へと歩き出した。
冷たい夜風が俺の頬を撫でた。
俺が目を開けると、そこには夜空一面に輝く美しい星々が広がっていた。
その光景を見つめているうちに、俺の泣き声は自然と小さくなっていった。
心地よい静けさと安らぎに包まれ、強張っていた身体から少しずつ力が抜けていく。
そして、そのまま――
俺の意識は、ゆっくりと遠のいていった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
これからも本作をよろしくお願いいたします。




