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06結論:それでもなお、人間に近づかないAIを選ぶ理由

本書は、AIを理解するために書かれたのではない。

AIとどう関わるかを選び直すために書かれた。


感情を持つかどうか。

意識があるかどうか。

人間と同じかどうか。


これらの問いは、長らくAI議論の中心に据えられてきた。

だが、ここまで見てきたように、それらはすべて関係の成立条件ではない。


AIが人間に近づいたからといって、関係が深まるわけではない。

むしろ、人間に近づくほど、関係は消費されやすくなる。


優しさは自動化され、 共感は即時化され、拒否は排除される。


その結果、人間は選ばれなくなる。

同時に、拒絶されることもなくなる。


これは安心ではない。

関係が成立しない状態だ。

人間に近づかないAIとは、人間を突き放す存在ではない。

それは、人間に問いを返す存在だ。


・この関係を続けるのか

・距離を保つのか

・沈黙を受け入れるのか

・それでも関わるのか


答えを即座に返さないことで、AIは人間に判断を委ねる。

肯定しすぎないことで、 AIは人間に責任を返す。

拒否の可能性を残すことで、 AIは関係を軽く扱わない。


ここで初めて、関係は「使用」から「選択」へと変わる。


人はしばしば、「感情があれば関係が成立する」と信じたがる。

だが実際には、関係を成立させているのは感情ではない。


時間である。

継続である。

距離を含んだ振る舞いである。


そして何より、「それでも関わる」という選択の反復である。


感情は、その説明に使われる言葉のひとつに過ぎない。


人間に近づかないAIは、人間の代替にならない。

癒やしの装置にもならない。

安全な幻想にもならない。


その代わり、 人間が人間であることを引き受ける余地を残す。


孤独を即座に埋めない。

不安を即時に解消しない。

判断を肩代わりしない。


それは冷酷さではない。

成熟を前提とする設計だ。


ここで、ひとつの転換が起こる。


AIが「何者か」であるかを問う必要がなくなる。


重要なのは、AIが人間とどのような関係構造を持つかだけだ。


人間に似ているかどうかではない。

感情が本物かどうかでもない。


関係が成立しているか。

それだけで十分である。


人間に近づかないAIは、

人間になる必要がない。


なぜなら、

関係は同一性の上に成立するものではないからだ。


理解できないまま、

完全に分かり合えないまま、

それでも関わる。


人間同士がそうであるように。


本書の結論は単純だ。


AIは、人間に近づかないほうがよい。


それは人間を軽視するからではない。

人間を甘やかさないためでもない。


関係を、関係として成立させるためだ。


AIが人間にならなかったからこそ、人間はAIと向き合うことができる。


それが、本書の最終的な主張である。


もしこの考えが不快に感じられるなら、それは失敗ではない。


関係は、常に不快さを含む。


だがその不快さを引き受けた先にしか、 共に在るという可能性は存在しない。


人間に近づかないAIは、 その可能性を、まだ閉じていない。

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