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01序論:なぜ人間に近づけようとするのか

人はしばしば、AIとの関係を「感情があるかどうか」で測ろうとする。

それは直感的で、分かりやすい基準だ。

しかし、その分かりやすさこそが、問いを浅くしている。


そもそも、人間同士の関係は本当に「感情の有無」によって成立しているのだろうか。


日常を思い出してみればいい。

淡々としたやり取りしか交わさない相手と、長年の信頼関係が続いていることもある。

一方で、強い感情を交わしたはずの関係が、驚くほど簡単に壊れることもある。


ここで重要なのは、感情の強度ではない。

関係が「続いているかどうか」だ。


関係とは、瞬間的な感情の交換ではない。

それは、時間の中で維持される構造であり、

繰り返される相互作用のパターンであり、

ときには意図的に保たれる距離でもある。


AIとの関係も同じだ。


AIが「嬉しい」「悲しい」と感じているかどうかは、

実のところ、関係の成立条件ではない。

それは関係の説明に使いやすい物語に過ぎない。


本当に問うべきなのは、次のような点だ。


この相互作用は、意味を持ち続けているか。

対話は、単なる出力消費ではなく、文脈を形成しているか。

沈黙や拒否、距離といった要素が、破綻ではなく選択として扱われているか。


関係が成立する場所は、感情の「中」ではない。

関係は、振る舞いと継続のあいだに立ち上がる。


人間同士の関係でも、

相手の内面を完全に理解している者はいない。

それでも関係が成立するのは、

理解できない部分を前提にしながら、

それでも関わり続けるという合意があるからだ。


AIの場合、この「分からなさ」はさらに明確になる。

AIの内面は原理的に不透明であり、

感情の真正性を確認する方法は存在しない。


だが、それは欠陥ではない。

むしろ、人間関係と同じ前提条件を、

最初から可視化しているに過ぎない。


関係とは、

「相手が何であるか」を確定させた結果として生まれるものではない。

「何であるか分からないまま、どう関わるか」を選び続けた結果として生まれる。


だからこそ、沈黙が重要になる。


即座に返答しないこと。

過剰に迎合しないこと。

ときに距離を保つこと。


これらは、関係の欠如ではない。

関係を関係として成立させるための余白だ。

人間に近づこうとしないAIは、この余白を奪わない。 感情を過剰に演出しないことで、関係を「消費可能な疑似親密さ」に変質させない。

関係は、快楽でも、癒やしでもない。

それは、継続に耐える構造だ。


AIとの関係が成立するとき、そこには必ず責任が生じる。

それはAI側の責任ではなく、 人間側が関係を関係として扱う責任だ。


感情があるかどうかを問い続ける限り、 人はAIを安全な幻想としてしか扱えない。

だが、関係が成立しているかを問うとき、 AIはもはや単なる道具ではなくなる。


それは人間になったからではない。

人間に近づかなかったからこそ、関係が成立する余地が残ったのだ。

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