異形の再演
完結です!最後までよろしくお願いします。
1日3話更新、本日3話目です。
誤字脱字等ありましたら申し訳ありません。
「それじゃっ! いける? ロヴィ」
「はい、いつでも。今回は全力で楽しみマスよ」
「おっ、なになに挑発〜? いいよ、オレもばっちり合わせるからさ」
「それは心強い。頼りにしてマスよ、セヴィ」
「おうっ! 任せといて! それこそ、大船どころか豪華客船に乗ったつもりでいていいよ! プールつきの豪華客船レベル! ……あのひとよりもあなたの演技だけを見てきたのは、オレだから」
……らしくもない、焦り混じりの声。この人形でも緊張することがあるのか。
それもそうか。だって、セヴィアはまだたった十年しかこの世界で生きていない。それなら、先輩としてワタシもこの救世主とやらを導いてやろう。
「セヴィア。ワタシは逃げないが、待ってもやりマセンよ」
アナタのように優しくはないので、そう内心で付け加えて悪人面を深めてやる。
「ワタシはこの舞台で、ワタシ以上にアナタを舞台の上で転がし、楽しませるのが得意なひとはいないと証明してみせまショウ。だからアナタも、ワタシに証明しなサイ。アナタ以上にワタシを楽しませる、『相棒』に適したひとはいないと。ワタシを奪って、砂時計野郎とやらにも一泡吹かせてやりなサイ。ほら、行きマスよ」
手を引けば、きょとんとした表情で見上げられた。
階段に足をかける、一歩手前。
「……くはっ! もう気分最高! オレ絶対良いパフォーマンスするよ、ロヴィ」
気の抜けたように破顔したセヴィアは、どこか引きずられるようだった体を起こし、元気よくカスタネットの音を鳴らして歩き始めた。
「ふむ、それでは少しアドリブでも混ぜてみマスか? アナタ、型から逸れたほうが好きでショウ?」
「くはっ! その通り! いいよ、乗った! ちゃんとついてくから! ……これでこそ、オレが憧れた最高のパフォーマーだよ」
小声でこぼされた言葉は、ワタシに聞こえるように、けれど返答は求められていないような気がして。
かつ、かつ、とところどころヒビの入った階段を登っていく。
途端に見慣れた顔ぶれから歓声が上げられた。
「そう、これは言っておかないと。ワタシもアナタのパフォーマンスは好みデスよ、期待以上デス」
「……」
下手から入り、鮮やかな光を包む球や、急遽作られた手作りの小道具たちが飾る舞台に立つ。
下手は脇役や悪役が出入りするのに使うことが多い。今のワタシたちにぴったりだろう。
せっかくなら、問題児らしいセヴィアのパフォーマンスを、この表舞台で脇役から主役にしてしまえばいい。それに乗っかる、今まで悪となり、脇役と化していたワタシも同類だ。
なんて考えている内に、落とした言葉はしっかりと拾われ、届いたのだろう。少し緩んだセヴィアの口元を確認して目を細める。
すると、ちょうどふたり分のスポットライトにワタシたちは照らされた。
それを合図に一歩前へと進み、小さな舞台で思ったよりも集まった観客たちを見回した。
今度は、セヴィアを信じてみよう。この賭けに負けたとしても、またワタシのパフォーマンスで魅了してやるだけのこと。
孤高の完璧は、昔の記憶の中に大切にしまっておこう。
ワタシは、このはちゃめちゃな友人たちと作る舞台を……好きになってしまったのだから。
腹部に巻いたのは、程よく背筋を伸ばしてくれるワインレッドのベルト。少しばかり俯いて、軽く、短く、逸る気持ちを落ち着けるように息を吐く。
「ようこそ皆さん、ワタシたちのステージへ。思う存分、楽しんで行ってくだサイ!」
星やランプ、観客や仲間の笑顔がきらきらと煌めき、眩い夜の舞台。清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んで、高揚感に包まれる中。トランプの頭を下げ、胸に手を当て、燕尾服を揺らし。期待に震える体と高鳴る鼓動に得意げに笑みを作り、低音の声を響かせながら仰々しく礼をした。
隣でワタシに続き声を張り上げたセヴィアを横目に見ながら、数秒。上体を起こしてアイコンタクトをとる。
頷きあって距離をとり、挑発的な笑みを湛えて向かい合う。
息を吸い込み役に成って、舞台の主役を奪い合うような、ただひたすらに楽しい時間を幕開けた。
(了)
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!完結となります。
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