表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異形の再演  作者: 笹井凩
51/51

異形の再演

完結です!最後までよろしくお願いします。

1日3話更新、本日3話目です。

誤字脱字等ありましたら申し訳ありません。


「それじゃっ! いける? ロヴィ」


「はい、いつでも。今回は全力で楽しみマスよ」


「おっ、なになに挑発〜? いいよ、オレもばっちり合わせるからさ」


「それは心強い。頼りにしてマスよ、セヴィ」


「おうっ! 任せといて! それこそ、大船どころか豪華客船に乗ったつもりでいていいよ! プールつきの豪華客船レベル! ……あのひとよりもあなたの演技だけを見てきたのは、オレだから」


 ……らしくもない、焦り混じりの声。この人形でも緊張することがあるのか。

 それもそうか。だって、セヴィアはまだたった十年しかこの世界で生きていない。それなら、先輩としてワタシもこの救世主とやらを導いてやろう。


「セヴィア。ワタシは逃げないが、待ってもやりマセンよ」


 アナタのように優しくはないので、そう内心で付け加えて悪人面を深めてやる。


「ワタシはこの舞台で、ワタシ以上にアナタを舞台の上で転がし、楽しませるのが得意なひとはいないと証明してみせまショウ。だからアナタも、ワタシに証明しなサイ。アナタ以上にワタシを楽しませる、『相棒』に適したひとはいないと。ワタシを奪って、砂時計野郎とやらにも一泡吹かせてやりなサイ。ほら、行きマスよ」


 手を引けば、きょとんとした表情で見上げられた。

 階段に足をかける、一歩手前。


「……くはっ! もう気分最高! オレ絶対良いパフォーマンスするよ、ロヴィ」


 気の抜けたように破顔したセヴィアは、どこか引きずられるようだった体を起こし、元気よくカスタネットの音を鳴らして歩き始めた。


「ふむ、それでは少しアドリブでも混ぜてみマスか? アナタ、型から逸れたほうが好きでショウ?」


「くはっ! その通り! いいよ、乗った! ちゃんとついてくから! ……これでこそ、オレが憧れた最高のパフォーマーだよ」


 小声でこぼされた言葉は、ワタシに聞こえるように、けれど返答は求められていないような気がして。


 かつ、かつ、とところどころヒビの入った階段を登っていく。

 途端に見慣れた顔ぶれから歓声が上げられた。


「そう、これは言っておかないと。ワタシもアナタのパフォーマンスは好みデスよ、期待以上デス」


「……」


 下手から入り、鮮やかな光を包む球や、急遽作られた手作りの小道具たちが飾る舞台に立つ。


 下手は脇役や悪役が出入りするのに使うことが多い。今のワタシたちにぴったりだろう。

 せっかくなら、問題児らしいセヴィアのパフォーマンスを、この表舞台で脇役から主役にしてしまえばいい。それに乗っかる、今まで悪となり、脇役と化していたワタシも同類だ。


 なんて考えている内に、落とした言葉はしっかりと拾われ、届いたのだろう。少し緩んだセヴィアの口元を確認して目を細める。


 すると、ちょうどふたり分のスポットライトにワタシたちは照らされた。

 それを合図に一歩前へと進み、小さな舞台で思ったよりも集まった観客たちを見回した。


 今度は、セヴィアを信じてみよう。この賭けに負けたとしても、またワタシのパフォーマンスで魅了してやるだけのこと。


 孤高の完璧は、昔の記憶の中に大切にしまっておこう。


 ワタシは、このはちゃめちゃな友人たちと作る舞台を……好きになってしまったのだから。


 腹部に巻いたのは、程よく背筋を伸ばしてくれるワインレッドのベルト。少しばかり俯いて、軽く、短く、逸る気持ちを落ち着けるように息を吐く。


「ようこそ皆さん、ワタシたちのステージへ。思う存分、楽しんで行ってくだサイ!」


 星やランプ、観客や仲間の笑顔がきらきらと煌めき、眩い夜の舞台。清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んで、高揚感に包まれる中。トランプの頭を下げ、胸に手を当て、燕尾服を揺らし。期待に震える体と高鳴る鼓動に得意げに笑みを作り、低音の声を響かせながら仰々しく礼をした。


 隣でワタシに続き声を張り上げたセヴィアを横目に見ながら、数秒。上体を起こしてアイコンタクトをとる。


 頷きあって距離をとり、挑発的な笑みを湛えて向かい合う。

 息を吸い込み役に成って、舞台の主役を奪い合うような、ただひたすらに楽しい時間を幕開けた。



(了)

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!完結となります。

ご閲覧ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ