表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

第7話 それで十分だった


 帝都には、この大陸で有数の歴史と権威をもつ帝都大学がある。この帝都大学の一部を間借りして、共和政府立魔術大学は併設された。

 当初、共和派の内外においてこの魔術大学への懐疑論も大きかった。

 この大陸における伝統的な理解としては、魔術師というのは惰弱でいかがわしい精神異常者とみなされていた。そしてその魔術師が抱える精神異常を現実に投影する外法こそが魔術なのである。この認識は、魔術師に対して比較的寛容なこのオルゴニア帝国においても同じだった。

 そんな怪しい連中をわざわざ集めて魔術の研究を行うというのは、風変りで突飛な構想──もっといえば、いかにも理論先行の原理主義的共和主義者がひりだした非現実的な施策として人々に受け入れられていた。

 招聘に応じた魔術師たちもまた、世間の偏見に負けず劣らずの奇人変人揃いであった。各地の呪い師一門の長老たちとしては、一門の優秀な若者をみすみす帝都に送ってやる義理などなかった。帝都に送られた魔術師の中には、半ば厄介払いとして送り込まれた変わり者も少なくはなかった。

 帝都の人民の好奇と嘲笑を向けられる中で始動した魔術大学であるが、結果的に言えば、この魔術大学の研究は共和派に多くの恩恵をもたらすことになる。


 そして。

 すべてが終わった後、ペールは帝都を離れて極北大公領へと戻った。故郷での彼は本分である精神魔術の研究に耽溺したが、これはあまりにも高度で難解であり、周囲の人間はその研究を全く理解することができず、彼を変人として扱ったという。

 とはいえ、ペール自身は、再び愛慕する姉弟子とともに暮らせることに大いに満足し、それで十分だった……と伝えられている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ