第5話「記憶保持の復活《メモリーキープのコンティニュー》」
???「もう死んだのか、情けない。」
俺と似た容姿の人間が現れ俺に言った。
俺はその人に問いかける。
柊真「どうしてこうなった…?
ここはどこだ…?
君は誰だ…?」
???「あー、もう……
一度にいくつも質問するな。
俺がだろうとどうでもいい。
ここは時間軸の狭間。
お前は死んだんだ。」
柊真「そこなんだよ、どうして!
HPは減ってなかったのに!」
???「まったく、うるさいな。
そういう仕組みなんだ。理解しろ、柊真。
それより、どうなんだ?」
柊真「どうって?」
???「戻りたいかと聞いている」
戻れることなら戻りたい。
琉空はたった1人の家族だし、
千華を放ってはおけない。
柊真「戻りたいに…決まってるだろ。」
???「なら行けばいい、健闘を祈る。」
柊真「は?どうやって?」
また目の前が暗くなり、不思議な感覚がした。
─まるで、光よりも速く走るような…
次の瞬間─
目の前には俺が死ぬ前の光景…
犬のおやっさんや琉空、千華がいた。
犬のおやっさんが話してくれているタイミングだった。
店員「だがなぁ…戦うのはよしといた方がいいぜ?
特にこのスラムのボス、
ロジと戦うのは…」
知っている展開。
恐らく、復活したのだ。
そして俺はあの兎の亜人と遭遇する前に行動しなければいけないことがわかっている。
柊真「すまん、店員さん。
このナイフ借りるぞ。」
そう言って手に取ったのは100G
の革のケース付きのナイフ。
それをバックステップを踏みながら飛び出してきた兎の亜人に向けナイフをなぎ払う。
兎の亜人「っ!?」
ナイフをなぎ払われた兎の亜人は
そのまま拳でお構い無しに攻撃しようとしてくるが、
軌道は見えやすかったのでなんとか避けることができた。
柊真「琉空!!頼んだ!!」
そう言って琉空にナイフを渡す。
正直、引きつけるだけで精一杯だった。
琉空「OK!」
ナイフを手に取ると、
琉空「そっちが先に攻撃してきたんだし、殺されても文句ないよね。」
と言ってナイフを兎の亜人へ振りかざす。
琉空「連携反撃!」
兎の亜人は急所を打たれ、
その場に血を流して倒れ込んだ。
柊真「琉空、もういいぞ。」
琉空「え?
あ、まぁ…お兄ちゃんがそう言うなら…」
もちろん殺す気は元からない。
千華に能力を使ってもらい、
何とか和解することが出来た。
兎の亜人「すみません、襲いかかったにもかかわらず回復していただいて…」
柊真「何か事情があったんだろうが、良くないとは思う。
気をつけろ。」
兎の亜人「はい、すみませんでした…」
千華「不意を打たれたのに勝てた…」
琉空「全く…お兄ちゃんはお人好しなんだから…」
千華「まぁ、一度襲いかかってきた相手にここまでするのも……ね。」
柊真「これでいいんだよ。」
店員「兄ちゃんら、大丈夫か…?」
それぞれ、安堵の表情や心配そうな表情を浮かべ、俺がまた口を開く。
柊真「大丈夫だ。
それより、店員さん、そのロジという人はどこに居るんだ?」
店員「…あぁ、ロジはこの先の
スラムを出る少し前の廃墟に居るぜ。」
柊真「なるほどな…」
なるほど。
まずはやはりロジという人から話を聞いた方が良さそうだ。
柊真「色々教えてくれてありがとう、店員さん。
もうそろそろ行かないと埒が明かないから
おいとましよう。
ナイフも血がついてしまったことだし、このまま買わせてもらうよ。
ナイフのお代と、飲み物3本、
計130Gだ。」
店員「あぁ、まいどあり。
頑張れよ兄ちゃんら。」
柊真「あぁ、ありがとう。」
そうして、再度歩き始める。
─しかし数歩歩いたところで、
店員「……?おい、兄ちゃん!!
スポーツドリンク3本分のお代はさっき貰ったぞ!!」
……………
柊真「……あー、」
琉空「あっはははwww」
千華「ばっかじゃないのw」
1度の復活に気を取られ、
一度スポーツドリンクの代金を支払ったことを忘れていたみたいだ。
せっかくなので、もう3本スポーツドリンクを貰ってきて、また道なりに歩いた。
30分ほど歩いたのだろうか。
先にはまた違った景色が見える。
そしてその前に廃墟が見える。
柊真「ここにスラムのボス、
ロジがいるのか。」
千華「ボスって聞くと緊張するわね…」
琉空「きっと大丈夫だよ。」
柊真「よし、行こうか。」
入口は開いていた。
そして中へと入っていく。
2人に不安は見せない。
2人を不安にさせないために、
堂々と歩いていく。
俺は…2人のために生きていく。
大切な2人を守り抜くために。
大きな扉が見える。
どうやらこちらも開いているらしい。
目の前にいたのは、恐らくロジと思われる…
─虎の亜人だった。
ロジ「おう、珍しいな、客か。」
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(第6話へ続く…)