第3話「俺からの手紙《ファーストレター》」
無事に最初の目的地に辿り着き、
ルークから渡された
未来の俺のからの手紙の一つ目を開封する。
柊真「読み上げるぞ。」
「よう、昔の俺。
この手紙を読んでるということは
俺の執事、ルークから俺の手紙をもらいスラムに着いたようだな。
理解力と順応性の高い俺ならすぐに亜人について理解しただろう。
しかしまぁ、琉空と千華はあまり分かっていないだろうからこの手紙に記す。
まず、亜人とは、180年頃から急激に増加して行った、動物と人間のハーフの人型生命体の事を指し示す。
きっかけはとあるタイミングでの突然変異らしい。
彼らは生まれながらのその凄まじい力から、
HP
ATK
DEF
AGI
LOD
という拡張能力を持つ。
これはあとから分かったことだが、
人間にも微細ながらその拡張能力がある。
そしてルークから3人分渡されたはずの
ステータスカード、
それで自身の拡張能力を把握できる。
ちなみにかばんに入れられる物は8つまでだ。
かなり伸縮性が高いんだが、
それだけであまり入れらない欠陥品と言った所か。
まぁ、消耗品を主に詰めることになるだろうが、
どうしても大事そうなものなんかが出てきた時は、無理やり詰め込んでおけ。
さて、お前たちが疑問に思っていること、
それはどうしたら過去に戻れるか。
そうだろう?
結論から言う。
過去に戻るために必要なことは、
感情を集める事だ。
あー…違う違う。お前らに感情がないとは一言も言ってない。
かばんの中に気にならない程度の大きさの
パネルがあるはずだ。
こいつは便利でな、元からかさばらない素材なんだ。
お前らはこれから8つの区画を周り、
感情を集め、最後にこの暁市の中心である行政区に辿り着け。
気を付けなければいけないこととしては、
集めた感情はお前らの心の中で
"より一層"
強くなることだ。
…最後に、千華から一言。」
柊真「………」
千華「柊真、どうしたの?最後まで読みなさいよ。」
柊真「………千切れている。」
重要そうだったんだがな…
千華「え?ほんとだ…なんで千切れてるんだろ…」
柊真「この手紙を渡される前までのことは分からないからな…」
琉空「感情を集める…?」
千華「よく分からないわよね…」
そんな事を口にしつつ手紙をしまいスラムの奥へ奥へと進んでいく…
千華「ここら辺…やけに寂しげね…」
琉空「ゴミも散らかってるし汚いなぁ…」
柊真「薄暗いな…」
廃れた街並み、
住居と思われるボロボロの建物が連なり、その間には亜人達が佇む…
今更ではあったが、
歩きながら1人ずつステータスカードを確認しておくことにした。
俺のステータスは…
「名前:柊真
HP:30
ATK:20
DEF:50
AGI:70
LOD:60 」
ゲームのようにステータスが表示された…
ゲームで言う所の
体力、攻撃力、防御力、行動速度
ということでいいのだろうか…
全てそこそこのような気もするがまぁいいか…
……いや、というか、LODってなんだ……
初めて見たぞ…?
念の為、2人にもステータスカードを見せてもらった。
千華「私のは…」
「名前:千華
HP:20
ATK:10
DEF:10
AGI:80
LOD:40 」
千華「なんか私、無駄に足速いみたいになってるんだけど…」
柊真「お前そんなに足速かったか?」
千華「柊真、それ遠回しに私のこと
ディスってるわよね!?」
柊真「琉空も見せてくれ。」
千華「ちょっと、スルー!?」
琉空「何これ…」
「名前:琉空
HP:150
ATK:99
DEF:50
AGI:60
LOD:50 」
千華「えぇ!?なんで琉空だけ
そんなステータス高いの!?」
琉空「僕が知りたいよ千華姉…」
そんな風に話をしていた時…
???「ガァァ!!」
柊真「っ!?」
ナイフのような物が首をかすめる。
柊真(くっ…避けきれなかった…)
千華「柊真!!大丈夫!?
すぐに手当てするから動かないで…!」
急な敵(?)との遭遇に戸惑いつつ、
攻撃を受け負傷した俺は手当てを受ける。
HPは今の一撃で2減った。
柊真「一撃で2ポイントか……
HPが少ない今は結構な痛手だな…
ありがとう、千華。」
千華「別に、柊真のことが心配とかじゃなくて、倒れられると困るっていうかなんというか…」
柊真「こんな時までツンデレ発動する必要あるか…?」
千華「私は別にツンデレじゃない!!
ほら、無駄口叩いてないでさっさと傷口見せなさい!!」
柊真「おい、ちょっ…千華?
ここは穏やかに……痛ってぇ!!?」
軽く叩かれ、余計に痛む。
そして、千華が能力を発動しようとする傍ら、琉空は…
琉空「よくも…お兄ちゃんを!!」
琉空は有り得ない速さで亜人のもとへ向かい…
─瞬またたく間も無く倒していた─
ATKが高いから当たり前なのだろうか…?
琉空は返り血を浴びて
「ざまぁみろ。」
と相手を睨みつけており、
千華はそれを見て青ざめている。
しかし、それだけではない。
次が意外だった。
柊真「なんだ…これ…」
倒された亜人が光となって
俺たちの中に入って消えたのだ。
(柊真 残りHP:18 EXP10入手)
(千華 EXP10入手)
(琉空 EXP30 20G入手)
千華は青ざめつつも応急処置をしてくれ、なんとか傷口は覆われた。
そして、琉空が浴びていたはずの返り血は、
いつの間にか
綺麗さっぱり消えていた。
琉空「油断したらダメだよ…お兄ちゃん。」
柊真「あぁ…。」
驚きが隠せない。
千華「柊真が動けるようになったら進みましょ。」
柊真「いや、もう大丈夫だ。」
訳の分からないことばかり起こる…
千華「本当に大丈夫…?」
柊真「なぜか分からないが傷口が…ほら。」
既に傷口は塞がっていた。
千華の能力はそれほどのものなのか…?
手当てだけで傷口が塞がっている…
しかも、HPは減ったままなのにも関わらず、だ。
千華「ならいいわね。
今度は、油断しないでよ!!」
柊真「あぁ、そうだな。2人ともありがとう。」
そうしてまた歩き始めていく。
この世界に来て初めて実感した亜人の力。
完全に油断していた。
終わったとはいえ、次こんなことがあれば死ぬだろうとも感じた。
しかし、それ以上に、
─あの経験値のような光はなんだ?─
入手してはいけないもののように感じた…
いや、ゲームなら経験値とレベルをあげるのが定石か…?
でもここは現実…だよな?
柊真「…訳が分からないな………」
そんな事を考えながらさらにスラムの奥へと進んでいく…
…今度は油断しないように気を付けよう…
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(第4話へ続く…)