第2話「昔の出来事《タイムラインヒストリー》」
ルークを先頭に歩くこと約5分程、ルークの家…
いや、ただの家ではない。
豪邸に連れてこられた。
琉空「すごい大きい家だ…」
千華「いやいや、大き過ぎるでしょ…」
ルーク「御三方、どうぞお上がりください。」
そんなルークの言葉とは反対に誰一人として動かない。
─なぜなら、そう─
全員緊張しすぎて、
入っていいのかすら分からないほどの大きさだからだ。
柊真「ルーク…?これは俺らが入って大丈夫なのか…?」
すると、ルークの表情に少し苦笑いが混じる。
ルーク「これは元は柊真様の豪邸なので、そんなに緊張なさらなくても、
いつも通りにしていればいいのですぞ。」
柊真「は?え?」
なんだか訳が分からない。
未来の俺はこんなに大きな家を建てられるほど立派になったのか?
そう思いつつルークに押されるように中に入る。
ルーク「お帰りなさいませ、柊真様。」
全員が入り終えたのを確認し、
ルークがそう言うと共に
豪華な内装が目に入る。
柊真「やばいな……これ…」
千華「何これ……」
琉空「はわぁ………」
全員が愕然。
こんな家、Gがいくらあっても足りないだろう。
その後俺たちは、一日の間はこの豪邸で過ごすといいだろうとルークに言われ、そうした。
一部始終、琉空のテンションが高かったのは言うまでもない。
そりゃああいつは小学生だし、
こんなに広い家ならはしゃぐよな。
俺らは中学生になって、もうそんな元気すらないが…
弟がはしゃいでいるのを見るのは、少し安心する。
夕飯はルークの手料理、かなり豪華に見えたが、
ルークは簡単に作っただけですと言う。
こんなに美味いスパゲッティが簡単なのか…?
と思えるほどの味に、全員顔が緩みきる。
琉空がはしゃいでいたのも、
千華が今、
料理を美味しそうに食べているのも、
この豪邸の中にいる時に見られた2人の笑顔が俺にとって幸せだった。
ただ、一つだけ引っかかっていることがあった。
柊真「ルーク、テレビを見ていても亜人ばかりしか出てこないが…」
ルーク「流石柊真様、順応性が高く、すぐに彼らを亜人だと理解したのですね。」
そりゃあそうだろう、
八頭身のカエル、
獣耳のタレント、
ワニ頭のキャスター
誰一人として普通の人間に見えるやつはいなかった。
─それを亜人と言わずして何と言う?─
俺が難しい顔をしていると、
思い出すように上を見上げ、ルークが口を開いた。
ルーク「この世界の人間は、もうほとんどいませんよ。」
何故なんだ?
そう言いかけた時、
ルークがこちらに問いかける。
ルーク「"神の怒り"《サウザンドバグズ》についてはご存知ですか?」
柊真「……あぁ、まぁな。」
琉空「"神の怒り"《サウザンドバグズ》…?」
柊真「あー…そうか、琉空はまだ習ってないよな。」
千華「たしか、グローバル歴に至る1000年前に、
世界各地で様々な事件や異変が同時多発した出来事だったわよね…?」
琉空「そんなことがあったの!?」
柊真「あぁ、ただし、時間に関する技術もほとんど無くなってしまって、
世界における標準時がなくなったせいで
本当に1000年なのか、そもそもそんな事件があったのかすら怪しい…ってところが結論らしいがな。
確か、その1000年間を
"空白の千年"《ブランクボックス》、と呼んだとか。」
ルーク「流石でございます。
よく覚えていらっしゃるのですね。」
柊真「あぁ、でも……
これがこの未来に関係があるのか?」
ルーク「はい、
神の怒りのもたらした異変や事件での混乱は、現在まで影響を及ぼすほど大きなものになっております。
もちろん、未知への恐怖からは略奪や戦争といった歴史も生まれますゆえ…
混乱の最中、多くの争いが起こり、
その争いは世界をも巻き込む大きなものとなりました。」
柊真「なるほどな。」
ルーク「ご理解いただけたご様子で何よりです。
そして、そんな混乱した世の中を平和に導いた方が、
唯一、被害が出なかった暁市に、8つの区画と1つの行政区を作り上げたのです。」
千華と琉空は分かっているような分かっていないような顔で、
「そんなすごい人がいたんだ…」と呟いている。
そしてルークはこちらに向き直り、
正直、長い話に相槌を打ちつつ寝かけていた俺も、
次のルークの言葉に目を覚ます。
ルーク「その御方こそ柊真様、我が主でございます。」
柊真「は!?俺!?」
思わず大きな声を出してしまう。
だが仕方がないだろう、
そりゃあ驚きもするさ。
ルーク「私が知っているのはここまでですね。
詳しい歴史は歴史図書館でないと見れませんし。」
そう言ってルークは話を終えた。
琉空「お兄ちゃんは優しいもんね。」
千華「それに、こんなに大きい豪邸が建てれるのが、
そういうことがあったからなんだとしたら納得だわ。」
柊真「いや、納得するとこそこか!?」
正直、どこに納得されたのか訳が分からない。
そしてそんな考えはいざ知らず、ルークに明日もあるので寝ようと言われ、それぞれ案内された
寝室へ入ると、
フカフカのベッド、軽いが温かそうな掛け布団、
これでもかと言うくらい
触り心地の良い枕に頭を置いて目をつぶる…が。
……眠れるわけが無いんだよな……
◇◆◇◆◇
(翌朝)
ルーク「柊真様、おはようございます。御二方は既に起きていらっしゃいますよ。」
ルークの声に目を覚ます。
いつの間にか眠りについていたらしい。
柊真「あぁ、おはようルーク。」
ルークが用意してくれた朝食を食べ、
これからどうするかを話し合った。
無論、ずっとここにいるわけにもいかなかった。
千華「とりあえず、未来に来た以上は、過去に戻る方法もきっとあるわよね…」
柊真「ただどうすればそれが分かるか…だな。」
琉空「この場所も広そうだしね……」
そして長い話し合いの末、
まとまった結論としては、
─現代に戻る方法を暁市全体を周って探し出すこと─
抽象的な答えではあったが、1番正しいような気もした。
柊真「そうと決まれば、だな。」
千華「そろそろおいとましましょうか。」
琉空「だね。」
◇◆◇◆◇
いざ出かけようとしたところ、ルークが手紙とリュック、そして3枚の紙を持って来た。
柊真「ルーク、どうしたんだその荷物は?」
ルーク「御三方が使えそうなリュックと、専用のステータスカード、
そして、柊真様からお預かりしていた手紙を持って参りました。
旅をするのに重要なものだ…との事でして。」
柊真「俺からの手紙?」
ルーク「はい。手紙はそれぞれの着いた先で開封して読み、
9つ目は、心して読めとの伝言です。」
柊真「そうか、分かった。」
ルーク「私はついていけませんが、どうか、ご無事で御三方が過去へ戻られることを願っておりますぞ。」
柊真「あぁ、ありがとうな、ルーク。
じゃあ行ってくる。」
千華「お世話になりました!」
琉空「ルークさんありがとうございました!」
ルーク「行ってらっしゃいませ、御三方!」
いつまでもルークが手を振ってくれている。
しかし、あっという間に見えないほど遠くなる。
もう少しで目的地が見えてきて、忙しい旅が始まるのだろう。
だけど、ルークのことは何があっても忘れない。
これから始まるのだ、宛もなく、途方も無い俺達の現代へ帰るための旅が。
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(第3話に続く…)