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8ー1 目的と手段

 8ー1 目的と手段


 「君たちは、ここにくる利用者に頼まれたこと以上のことはしないように」

 わたしは、テスとローナに言い渡した。

 実は、見守るって難しいんだよ。

 ついつい手を出してしまいそうになる。

 だけど、ここではそれはダメだ。

 ここでは、わたしたちは、利用者の可能性を信じて彼らを見守ることしかできない。

 それからわたしは、 部屋にある器具の使い方を2人に説明していった。

 といっても平行棒とゲームが二種類しかないんだけどな。

 わたしは、ゲームを覚えてもらうために2人を何度か対戦させた。

 うん。

 2人ともなかなかおつむはしっかりしているみたいだな。

 わたしは、2人にそれぞれに首から下げるための紐のついた身分証を手渡した。

 「まあ、利用者さんと同じで君たちもゆっくりと学んでいって。当分はそれぞれの利用者の訓練内容はわたしが考えるし。訓練の手伝いもわたしがするから、君たちは利用者さんとコミュニケーションでもとってて」

 「こみゅにけーしょん?」

 2人に問われてわたしは、答えた。

 「利用者さんと仲良くなってってこと」

 わたしは、2人にリバーシとスタッキングカップの目的を教えていった。

 「これの目的は、義手の細やかなコントロールができるようになることなわけ。ゲームの勝ち負けは問題じゃないから」

 わたしは、リバーシのルールを説明して順番に2人と対戦した。

 まずは、テスからだ。

 テスは、本当にまっすぐで裏表がなさそうだ。

 ゲームでもわたしに瞬殺された。

 ローナは、かなり頭がいいことがわかった。

 彼女は、わたしが説明したルールを瞬時に理解してわたしともほぼご確認戦ってみせた。

 「わたしは、子供の頃から1人で本を読んだりして過ごすことが多かったので」

 ローナは、恥ずかしげに頬を染めて謙遜している。

 次は、スタッキングカップだ。

 これは、逆の結果になった。

 テスは、なかなか動きも素早くて上手にカップをさばいていた。

 木製のカップを積み上げては、重ねていく。

 こういう単純作業に強いタイプなのかな?

 しかし、ローナはどうしてもこれがうまくできなかった。

 積み上げることはできるが、うまく重ねていくことが苦手なようだった。

 たぶん彼女は、ひらめきとか自分の感覚とかに頼って動くタイプじゃないんだろうな。

 「まあ、これがうまくできるようになることが目的じゃないからな。目的は、あくまでも義手がうまく使えるようになることだから」

 わたしは、2人に話した。

 「目的と手段は似てるようで違うから。そこを間違えないようにね」


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