7ー1 スイカ
7ー1 スイカ
グレングルド王国の北方に位置するこのフェブリウス伯爵領だったが、夏は暑い。
だから、ご主人様のような身分あるお貴族様は、夏を過ごしやすくするために氷魔法の使い手を夏場は雇いいれるのだという。
ちょっとした生きたクーラーだな。
だが、前にジェイムズさんが言っていたように魔法は万能ではない。
生きたクーラーで冷やせるのは、よくて15畳ぐらい。
能力の低い魔道師なら小部屋一部屋も十分には冷やすことができないらしい。
そういうわけで。
治療院の中は、窓や扉を開け放っていても汗が流れるほどに暑かった。
いや。
マジで萎えるわ!
わたしは、夏が苦手だ。
冬ならいい。
寒ければ何重にも服を重ね着すればいいのだ。
だが、夏は。
服を脱ぐのも限界があるし、何ともすることができない。
今は、建物の東側の増築部分を工事しているリックさんたちもこの暑さには苦戦していた。
先日も、一人の職人が暑さのあまり倒れていた。
そこでわたしは、差し入れをすることにした。
昼過ぎにわたしとライザとエミリアさんは冷たく冷やしたスイカを工事現場に届けにいった。
いっておくけどこの世界には、本来、スイカなんていうものはなかった。
これも、例の種芋を植えている畑に実ってきたものだ。
なぜか、あの種芋の畑には、植えた訳でもないのにさまざまな野菜や果物が実っていた。
どういうこと?
周囲からは、わたしが何やら新種の作物を開発しているように思われているようだったが、わたしは、決して関わってはいない。
ただ。
まあ、最初の種芋を植えたときに密かに祈ってはいた。
いっぱい美味しいものが食べられますように、とな。
もしかして精霊さん、忖度してるの?
氷魔法で冷やされたスイカは、屋敷のみんなにも好評だった。
スイカは、とても甘くておいしかったし、なぜか、食べるとすぅっと汗が引いていく。
わたしは、畑でとれたスイカを治療院へと持ち込み裏にある井戸で冷やしておいた。
もちろん、精霊さんにお願いすることを忘れない。
「精霊さん、スイカが冷たくなりますように。お願いしますぅ!」
昼過ぎにわたしは、ライザと暇をもて余していたエミリアさんと一緒に冷やしておいたスイカを切り分けて工事現場まで届けることにしたのだった。




