0ー6 仕事をください!
0ー6 仕事をください!
翌朝。
爽やかな小鳥たちの囀ずりと朝の光の中ですっきりと目覚めたわたしは、もぞもぞと起き出すといつの間にか閉められていたカーテンを開いて窓を押し開いた。
いつまでも戸惑ってばかりじゃいられない。
それでも地球?は回っているのだ。
わたしは、もとの世界に帰る方法が見つかるまではここで生きていかなくてはならないのだ。
「おはようございます」
可愛らしい赤毛の髪を結い上げたメイドさんが持ってきてくれた朝ご飯は、おが屑みたいな味のするパンと塩味のきつすぎるハムと味のないオムレツだったけどわたしは、それを懸命に租借し飲み込んでいった。
ああ、年老いた両親が心配しているだろうな。
そう思ったら涙が滲んだけど、わたしは、泣かなかった。
もう、そんな年は、過ぎてしまった。
わたしは、メイドさんが出してくれた白いブラウスに黒いロングスカートを身に付けると立ち上がった。
「あの、すみませんが、このお屋敷で何かわたしにできる仕事はないでしょうか?」
「はい?」
まだ若くてぴちぴちしているそのメイドさんは、困ったような表情を浮かべていた。
「少しお待ちください」
そう言って彼女は、あわてて部屋から出ていった。
わたしは、しばらくお茶を飲みながら待っていた。
ドアが開いて昨日の紳士が現れた。
「仕事をお探しだとか」
「はい」
わたしが頷くと、ジェイムズさんは、わたしに訊ねた。
「あなたは、何ができますか?」
うん?
わたしに何ができるかって?
わたしは、ちょっと考え込んだ。
なんだってできるけど、何もできないかもしれないし。
何しろ、ここは、異世界だし。
「わたしは」
わたしは、答えた。
「介護ができます」
「かいご?」
ジェイムズさんが奇妙な表情をした。
「それは、何ですか?」
「えっと、つまり、病気の人とか、お年寄りとかのお世話をする専門家のことです」
わたしが説明するとジェイムズさんは、頷いた。
「わかりました、トガー様」
ジェイムズさんがわたしに告げた。
「あなたにぜひお願いしたいお仕事があります」