4ー10 にぎり飯
4ー10 にぎり飯
それから御主人様は、わたしに頼んできた。
「1階のわたしの執務室へ連れていってくれないか?」
わたしは、もくもくと仕事をした。
そして、階段まで行くとそこにはすでにジェイムズさんと若い兄ちゃんたちが待っていた。
御主人様の執務室は、ジェイムズさんの執務室の隣にあった。
そこは、整然と片付けられている。
まるで、いつ主が戻ってきてもいいように。
わたしは、デスクの前へと車椅子を押していくと、ご主人様に訊ねた。
「どうされるんですか?」
「きまっているだろう?」
ご主人様は、わたしににやっと笑った。
「お仕事だ」
それから、ご主人様は、しばらくジェイムズさんと執務室にこもっていろいろと話していた。
わたしは、ぼんやりとそれを聞いていた。
外に出ていてもよかったんだが、一緒にいてほしいというようなことをご主人様が仰るものだから仕方がない。
だが、こうしてみると領主の仕事というものもなかなか大変なんだな。
道を直してほしいとか、畑を魔物があらしてるとか。
それらをききながら、いちいち的確に指示を出していくご主人様を見ているとちょっとすごいとか感心してしまった。
わたしは、昼頃に少し抜け出すと台所に行ってサラの横で白米を炊くと握り飯を作った。
サラは、さすがに一流の料理人と自分でいうだけあって少し教えるとすぐにちゃんとした味付けとかができるようになった。
わたしは、今じゃ、ほとんど指示を出すだけだ。
総監督って感じかな?
わたしは、塩握りをのせた皿とお茶を準備してご主人様の執務室へとお持ちした。
塩にぎりを見るとご主人様がじっと凝視していたのでわたしが訊ねると、ご主人様は、笑顔で答えた。
「いや、これが噂のにぎり飯かと思ってな。なんでもトガーの故郷の食べ物だとか」
「はい」
わたしは、にこっと微笑むと1つ手にとってご主人様の口許へと運んだ。
「食べてみてください!」
「ああ」
ご主人様は、ぱくっとおにぎりにかじりついた。
もぐもぐとしばらく咀嚼するとごくりと飲み込んだ。
「うまいな。塩味がちょうどいい」




