0ー5 全てが悪夢でありますように。
0ー5 全てが悪夢でありますように。
わたしは、周囲を見回すとゆっくりとベッドから出た。
素足に柔らかい毛足の長い絨毯が触れる。
わたしは、窓辺へと歩いていくと大きな窓を押し開いて石造りのバルコニーに出ていった。
頭上を巨大なトカゲもどきが飛び去っていくのが見えた。
遠くに船のようなものも飛んでいる。
「あれは・・・」
未確認飛行物体?
わたしは、ごしごしと目をこすった。
だけど、その未確認飛行物体は、消えていない!
「ど、ど、ど・・・」
どういうことなんね?
取り乱しているわたしにルゥがにんまりと笑いかける。
「リージアスへようこそ。異世界人のトガー アリサ」
落ち着いて、わたし。
わたしは、数回深呼吸を繰り返した。
取り乱しててもいいことなんてないし。
ルゥは、ベッドに戻ってきたわたしに話しかける。
「あんたは、この世界に選ばれたんだよ」
「選ばれた?」
わたしが問うとルゥは答えた。
「そう。この世界の精霊たちがあんたのことを呼び寄せたんだ」
マジかよ?
わたしは、訊ねた。
「なんでそんな迷惑なことを?」
「それは、あんたが聖女だからさ」
はい?
聖女ですと?
わたしは、ぽっかんとしてしまった。
なんでまた、わたしが聖女なんぞに?
「普通、そういうのってもっと若くてピチピチしてて、その、なんというか、処女がなるもんじゃね?」
「はい?」
ルゥは、ため息をつく。
「確かに若くて純粋な娘の方が扱いやすいけど、それだけじゃ世界は救えないからね。何が神聖なものかは、世界によって違うし。この世界じゃ、聖女は、強くてたくましいものなんだよ」
「強くて、たくましい?」
わたしは、カチンときていた。
「悪かったな、たくましいおばはんで!」
「まあ、そんなに怒らないで、トガー」
ルゥは、媚びるようにゴロゴロと喉を鳴らした。
「とにかく、あんたがこの世界に選ばれたんだからさ。ずばっとこの世界を救ってあげてよ」
「無理です」
わたしは、答えた。
「そういうの無理なんで!」
マジで、勘弁!
わたしは、ため息をついた。
何展開これ?
「それで?帰る方法は?」
わたしは、すぱん、とルゥにきいた。
「どうすればもとの世界に帰れるわけ?」
「あ、それ、無理だから」
ルゥがずばばんと答えた。
「あんたは、もうこの世界とかかわってしまった。もう、もとの世界に戻ることはできないよ」
マジかよ!
わたしは、黙り込むとにっこりと笑った。
ベッドの上に横になって布団へと潜り込むわたしにルゥが問いかけた。
「まあ、ショックなのはわかるけど、しっかりしてくれなきゃ」
わたしは、ルゥを無視していた。
ルゥは、わたしにきいた。
「何してるの?トガー」
「寝まふ」
「ええっ?」
わたしは、とりあえず寝ることにした。
全てが悪夢であることを祈りつつ。