2ー7 思いもしなかったよ!
2ー7 思いもしなかったよ!
クラウスさんは、1人だけこの店の椅子とは違うアンティーク調の椅子に腰かけていた。
握手するために近づいて初めて気が付いたが、それは、横に小さな車輪がついている車イスだった。
そこで、わたしは、前に店員の女の子が言っていた言葉を思い出した。
『ルイーズさんの旦那さんは、前の戦争で片足をやられてて歩けないんですよ』
ちらっと見ると彼には、確かに、片足がないようだった。
クラウスさんは、どうってことない様に説明してくれた。
「これは、前の魔王軍との戦いでやられたものだ」
「クラウスは、こうなる前は、この工業ギルド1の魔道具製作者だったんだよ」
ルイーズさんが彼を後ろからバグしながらわたしに話した。
「こうして久しぶりにここにこれたのは、あんたのおかげだよ、トガー。これまでは、仕事もできずに家に閉じ籠ってたんだ。それが」
ルイーズさんが涙ぐんだ。
「この車椅子のおかげでまたここに来れた」
「ああ」
クラウスさんがにこっと微笑んだ。
「俺は、足を失くしてからずっと家にこもっていた。だって、そうしてるしかなかったからな。それがこの車椅子のおかげでここまで来れた。そしたら、ギルド長のやつ、いつから仕事に戻れるんだってきいてきてよぉ。俺、魔道具作りの工房に明日からまた戻ることになったんだぜ!」
「信じられないでしょ?」
ルイーズさんが溢れ出す涙を堪えきれずに泣き笑いをしている。
「一昨日まで家から出ることもできなかったのに!この車椅子のおかげで、明日から前みたいに仕事に戻れるんだよ!」
マジですか?
わたしは、幸せそうに見つめ合う2人をほけーっと見ていたがやがてはっとして口を開いた。
「おめでとう、クラウスさん」
「ああ、ありがとうな。すべて、あんたとこのルイーズが作ってくれた車椅子のおかげだよ」
クラウスさんが優しい眼差しで泣いているルイーズさんのことを見つめた。
「まさか、この俺が現場に復帰することができるなんて思いもしてなかった」




