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2ー1 まずいからだ。

 2ー1 まずいからだ。


 わたしは、懊悩していた。

 食べるべきか、食べざるべきか。

 それが問題だ。

 「はやく食べちゃってくださいね、トガー様。じゃなきゃ、こっちの仕事が片付きませんから」

 料理人のサラさんがわたしを冷たい目で凝視している。

 わたしは、目の前に置かれている食事を前にごくりと喉を鳴らした。

 わたしの目の前には、どろどろの吐瀉物のような茶色いパン粥と湯気のたつホットミルク、それに何かわからないが緑色のペースト状のものが並べられていた。

 「はぁ・・・」

 わたしは、ため息をつくとスプーンを手に取り思いきってパン粥を一すくいし口の中へと放り込んだ。

 口の中に拡がる甘いおがくず。

 それは、衝撃のまずさだった。

 これは、いくら飢えてても食べないわ!

 わたしは、口の中でくちゃくちゃと咀嚼しながら涙目になっていた。

 なんでこんなにまずいわけ?

 わたしは、なんとか口の中のものをごくりと飲み込むと続いてなぞの緑色のペーストへと手を出した。

 思いきって口に入れると拡がる青虫感。

 何これ?

 ほとんど固形の青汁じゃん!

 「で?どうなんだい?トガー様」

 この辺りで一番の腕を持つという噂の伯爵家の専用料理人であるサラが鼻息も荒くわたしにきいた。

 「わたしの料理の何が問題だっていうんだい?」

 うん。

 わたしは、ひきつった笑顔を浮かべた。

 「全部、かな?」

 「なんだとぉ?」

 サラは、わたしの言葉に激怒した。

 「この、もと宮廷料理人であるサラ様の作る料理に文句をつける気かぃ?」

 文句というよりも、この世界の食べ物は、すべてがまずい。

 特に、このご主人様用の食事はひどいものだった。

 これは。

 わたしは、何度目かのため息をついた。

 早急になんとかせねばなるまい。

 

 話を戻そう。

 これは、わたしがご主人様の食事を介助していて気づいたことだった。

 いや。

 特にわたしが観察眼が鋭いとかいうことではない。

 わたしは、よくあんたの目は節穴だなといわれていたぐらいのぼんやりさんなのだ。

 これは、誰でも気がつこうと思えば気がつくことだ。

 ご主人様は、食事のほとんどを残して食べようとしない。

 普通、介助で食事を食べさせるとき、全量摂取させることが多い。

 そのための食事介助だしな。

 なのにご主人様は、食事をいつも残している。

 1口か2口食べると、もうぷいっとそっぽを向いて食べようともしなくなる。

 それは、なぜなのか。

 わたしがご主人様に問うと彼は答えた。

 「まずいからだ」

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