1ー7 最低底職の底力!
1ー7 最低底職の底力!
わたしは、ジェイムズさんの話にショックを受けていた。
異世界ってもっといいところだと思っていたんだがな。
夢のようなチートを得て、すごい冒険をして。
だけど、本当の異世界って残酷で、無情だ。
物語の中では、魔物との戦いで手足を失っても魔法でもとどおりになるのに、現実は、そんなことはないらしい。
「ちなみに、魔法で治したりすることはできないわけ?」
そう、わたしが問うとジェイムズさんは、頭を振った。
「確かに治癒魔法は存在しますが、それは、ほとんどが宗教上の儀式で行われるだけのものですからね。実際に、大怪我を治したり、病気を癒したりすることは不可能でしょう?」
そうなんだ。
わたしは、シリアスすぎてなんだか、気分が沈んでくる。
暖かくていい香りのするお茶も、いつのまにか冷たく苦いものに変わってしまった。
「この国では、多くの人々が魔物との戦いで手足を失ったり、死んでいったりしていますから。アルノルド陛下もなんとかそういった人々を救おうと治療院など作られたりはしておられますが、実際には、ほとんどの人々が放置されています。旦那様のように裕福なお方はまだマシなのです」
話終えるとジェイムズさんは、わたしに一枚の書類を渡した。
それは、わたしを正式にフェブリウス伯爵の専用メイドとして雇うというものだった。
わたしは、それに了承のサインをした。
こうしてわたしは、マクシミリアン・フォン・フェブリウス伯爵つきの介護人となったわけだ。
わたしは、ご主人様の隣室を与えられ、住み込みで彼の世話をすることになった。
給金は、週につき金貨が3枚。
いや。
金貨って、何よ?
この世界に来てまだ間もないわたしには、それがどれぐらいの価値なのかもわからないし。
だが週に1日は、休みをくれるというし、衣食住は、なんとかなる。
とりあえずは、異世界ホームレスになることだけは避けられたわけだ。
わたしは、ジェイムズさんに案内された自分の部屋でふかふかのベッドにダイブした。
「見たか、最低底職の底力を!」
「なかなかいい条件だったね、トガー」
わたしにすっかり取り憑いてしまったらしい黒猫またのルゥが興味なさげにベッドに飛び乗ってくるとアクビをした。
ルゥいわく、金貨3枚というのは破格の待遇らしい。
なんでも普通の領民が普通に暮らすだけなら金貨1枚あれば1年は暮らせるらしい。
マジか。




