10ー2 義肢の能力
10ー2 義肢の能力
わたしとライナス先生は、カイのそんな気持ちに寄り添っていくことにした。
何度かのカウンセリングを繰り返し、彼の不安な気持ちを理解できないまでも思いやれるようになった。
カイは、いい子だ。
毎日、新しい義肢のリハビリに励みながら、できる範囲で職員の手伝いをしたり、治療院の雑用もがんばっていた。
彼は、この治療院の外の世界をほとんど知らない。
だから、新しい義肢ができてだんだん生活に慣れていっても不安は、消えなかった。
だって、良くなるということは、彼にとってはここから出ていかなくてはならないということだったからな。
その相反する気持ちのなかで苦しんでいたカイを救ったのは、クラウスさんだった。
クラウスさんは、カイにきいた。
「もしよければここに残って俺のもとで義肢製作者の見習いにならないか?」
「義肢製作者?」
カイは、最初、自分がそんなものになれるとは思っていなかった。
だが、興味を持ってクラウスさんの仕事をみているうちにカイには夢ができた。
ある日、カイは、わたしに話した。
「僕も人の役に立つことができると思いますか?」
もちろん、わたしは、頷いた。
カイは、結構器用になんでもこなすタイプだ。
それに頭も悪くないし。
カイにとってクラウスさんからの誘いは、いい話だった。
わたしにできるのは、カイの背中を押してやることだけだった。
「未来は、誰にもわからないし、どんな不幸があるかも予想できない。だけど、今、できることをすることしかわたしたちにはできないよ」
クラウスさんがカイをスカウトしたのにはもう1つ理由があった。
それは、義肢装着者における著しい身体能力の向上だ。
もともとのポテンシャルの高さもあるが、義肢を装着してリハビリを繰り返したことによってカイたち被験者の身体能力は、もとの肉体に比べても高いものになっていた。
それは、たぶん義肢の持つ能力の高さもあるのだろうが、何よりも義肢の神経伝達速度は、もとの肉体に比べてかなり速い。
しかも、ロスが少なかった。
わたしは、それをクラウスさんに確認してみた。
もとの肉体と比べたときの義肢の能力の高さについては、クラウスさんも驚いていた。
「たぶん、実際の手足よりも人工の手足の方が伝達時の抵抗が少ないんだろうな。それに、義肢の能力が高いせいもある。義肢は、リミッターをかけることなく最強の力を引き出せるからな」




