10ー1 未来
10ー1 未来
冬が来る頃、治療院の改築が終わった。
前よりかなり増築されて広くなった治療院には、新しい職員も増えて、いろいろな変化が起きていた。
なにより、治療院に入っていた障害者だちにその変化は起きた。
みな、知ってしまったのだ。
自分達が変われるということを。
それは、クラウスさんの義肢の性能を目の当たりにしたせいだった。
みな、わけのわからないものに対して恐れを抱いていた。
だが、最初の義肢の被験者となった人々に何が起きたのかをみてしまうと、彼らの気持ちも変化していった。
すべては、 最初の被験者たち、セツとカイ、それにご主人様の頑張りのおかげだった。
彼らが毎日のようにリハビリに励んでいる姿が他の人々の心を動かした。
ここに来たときに彼らは、人生に対するすべてを諦めていた。
だが、じょじょに彼らの瞳の輝きは、増していった。
1人また1人と義肢の被験者になりたいと申し出るものが現れ、秋までには治療院の全利用者がなんらかの義肢のプロジェクトにかかわるようになっていた。
クラウスさんも1人ではさすがにこれだけの人々の義肢を作製することは不可能だ。
しかたなく、クラウスさんは弟子をとることにした。
彼は、かつて弟子はとらないと断言していた。
だが、この技術を広めるためにクラウスさんは、方針を変えることにしたのだ。
工業ギルドに所属する魔道具製作者の中から何人かの男女を選ぶとそれを弟子として自分のもとで修行させることにした。
今、クラウスさんは、工業ギルドに所属しているが、それと同時にこの治療院にある義肢研究所の所長も兼ねていた。
つまり、クラウスさんの今の立場は、地方公務員的な状態だった。
もちろんこの義肢研究所の職員となった彼の弟子たちも公務員的な扱いだった。
その弟子たちの内の1人がカイだった。
カイは、最初の被験者の中でも一番若い子だった。
子供の頃に魔物に襲われ家族と手足を失って以来、カイは、人生を諦めていた。
それが、突然、未来ができてしまったのだ。
カイにとっては、未来は、不安なものだった。




