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9ー11 ささやかな夢

 9ー11 ささやかな夢


 うん。

 鏡に写し出された自分の姿を見てわたしは、思わず目を疑った。

 マジかよ?

 馬子にも衣装かよ?

 なんか、ちょっといい感じじゃね?

 もし、ここにスマホがあれば絶対に写真を残しておきたい!

 それほど、今のわたしは、いけていた。

 「まあ、とってもお似合いですよ、トガー様」

 アエラさんが微笑んだ。

 「これなら立派な伯爵婦人に見えますよ!」

 伯爵婦人って、なんのこと?

 わたしは、ほけーとしていた。

 かわいらしいピンクのドレス姿のライザがそっとわたしをつついた。

 何?

 ライザは、少し屈んだわたしの耳元でそっと囁く。

 「トガー、口が開いてるよ」

 おおっと!

 わたしは、そっとほっぺにさわってから表情筋を引き締めた。

 アエラさんに手を引かれてパーティー会場になっている舞踏室へと誘導されていくとジェイムズさんが待っていた。

 ジェイムズさんは、わたしの姿を見ると少し涙ぐみそしてそっとハンカチで身元を拭った。

 「トガー様、大変お美しい。旦那様もお喜びになることでしょう」

 いや!

 わたしは、ため息をついた。

 別に、ご主人様に喜んでもらおうなんて思ってませんしね!

 わたしがジェイムズさんのエスコートで舞踏室へと入っていくときらびやかな室内がざわめく。

 何?

 感じ悪いな!

 わたしが思っているとエミリアさんがそっとよってきて囁く。

 「トガー、これは、ライザのための成人の祝いのパーティーでもあるのよ。あなたが出席することはライザの望みでもあるし。最後までがんばって笑顔よ、笑顔!」

 

 こうして今に至るのであった。

 わたしは、きらびやかな式服を身につけたご主人様に手を取られて思っていた。

 完璧じゃん!

 クラウスさんの義手と義足、まじ、完璧じゃん!

 マジで、リスペクトだな!

 ご主人様に手をひかれてわたしは、その舞踏室の中央へと導かれた。

 んん?

 わたしは、なぜだか少しドキドキワクワクしている自分に驚いていた。

 なんで?

 わたしは、ダンスなんて知らないし!

 まあ、一度だけ、踊ったことがあるけどな。

 あれは、何年前だったか。

 かつて踊り子をしていたという利用者さんとジルバを踊ったな。

 そして、言われたのだ。

 「あんた、才能ないわ」

 だがしかし。

 今日のわたしは完璧!

 ご主人様のリードも完璧だし!

 音楽にあわせてわたしたちは、踊っていた。

 こんなことこの世界に来た頃には想像だってしてなかったよ!

 ご主人様がワルツにあわせて踊りながらわたしに囁く。

 「これがわたしのささやかな夢、だ」

 ご主人様は、わたしに告げた。

 「お前が私の前に現れたときからずっと思っていた」

 ご主人様は、わたしを抱き寄せた。

「お前に振れたい。抱き締めたい、と」

 マジかよ!

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