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最強の暗殺者は田舎でのんびり暮らしたい。邪魔するやつはぶっ倒す。  作者: 高井うしお
第三章

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71話 黒い男

 フレドリックとイライアスはとある地方の街に滞在していた。平凡な宿屋に黒髪の深刻そうな顔をした男がやってきて二階に上がる。


「……サイラス」

「ご無沙汰しております。師匠」


 ぺこりと頭を下げるサイラス。そしてその横のイライアスの顔を見つけると顔を強ばらせた。


「気にするな。私は引退……いや、アーロイスにすでに大臣の椅子を追い出されたものだ」

「はい……」

「ま、座れ」


 フレドリックはサイラスに椅子を勧めた。


「どうだ、王城の様子は」

「王太子……アーロイス殿下が摂政になられてから、上の方は腹の探りあいが続いています。ただ……表だって反論するものもおりません。国政自体に無茶をなさらないというのも大きな要因かと」

「そうか……陛下とロドリック殿下は?」

「相変わらず原因不明の病です」


 重たい空気が流れた。イライアスだけが足を放り出して天井を睨み付けている。


「王城の御典医も治せぬ病……ね……」

「これは……私の憶測でしかないのですが……」


 サイラスが冷や汗をかきながら口を開いた。


「護衛中にアーロイス殿下の部屋に黒ずくめの妙な老人が何度か出入りしているのを見ました……」

「それが関係していると?」

「見た訳ではありません……が……」

「また証拠がない、か」


 イライアスはため息を吐いた。しかしフレドリックは首を振った。


「だが、その老人を捕まえれば陛下と殿下の病の正体も分かるのでは?」

「……どうやって? 私とお前が王城に侵入なんていまさら出来んぞ」


 イライアスの言葉にさらにサイラスは汗をかいた。


「私……私は……できかねます」

「よい、サイラス。疑いを持って我々に会ってくれただけで十分だ。それに……本当に伝えたい事はまだあるのだろう?」

「は、はい」


 サイラスは息を深く吐いて吸うと師にあたるフレドリックを見つめた。


「魔王討伐の夜の出来事を、お伝えしたくて」

「魔王……」

「はい、魔術師二名、剣士二名、回復術師、それからフェレール大臣……これが討伐隊の内訳です。私は剣士の一人として参加しておりました」

「お前の剣の腕ならばそうだろうな」

「私もそう思ったのです。しかし……魔王のいる洞窟の直前で私は待機を命じられました」


 その言葉にフレドリックはぴくりと眉を上げた。


「入れ替わりに討伐隊に入ったのは……私と同じ黒い髪の男でした」

「他にそれを見たものは……?」

「すでに大臣以外の討伐隊の者は……その時に……死にました」


 サイラスは腕を抱きしめた。


「近頃の殿下を見ていると思うのです。彼らは魔王にやられたのではない、と……私も、そう遠くない時に……殺されるのでは、と……」


 サイラスはそう言って顔を覆った。そしてくぐもった声で呟いた。


「私だけなら良いのです。妻や子が心配で……」

「……サイラス」


 フレドリックは立ち上がりサイラスの肩を掴んだ。


「その男は……お前のような黒髪で二本の小剣を携えていたか?」

「く、黒髪だったとは思いますが……そこまでは……」


 フレドリックは天を仰いだ。サイラスの代わりに討伐隊に加わったのはおそらくアルだ、とフレドリックは確信した。


「その男の顔を……見ればわかるか?」

「は、おそらく……」


 イライアスは突然妙な事を口走りはじめたフレドリックを見つめた。


「どうした老いぼれ。とうとう髪だけじゃなくて中身も足りなくなったか」

「黙れ、そっちも老いぼれだろうが!」


 口論をし始めた二人の間でサイラスは何がなんだか分からず目を白黒とさせていた。


「あ、あのー……」

「私にはサイラスと入れ替わった男に心当たりがある。その男はアーロイスの代わりに魔王を討ち取ったそうだ」

「なんと……」

「行こう。行って証言をとろう」


 今すぐにでも宿を出ようとするフレドリックの腕をサイラスが掴んだ。


「行ってどうするのですか? 告発をするのですか?」

「その通りだ」

「私だけの告発など……」

「そうだ。フレドリック。護衛騎士と素性の分からん男の告発はなんにもならん」


 イライアスも頷いた。しかし続けてこう言った。


「……今はな」

「どういう意味だ、イライアス」

「もし今後、アーロイスがなにか失態をして世論が傾いた時。これは着火剤になる」


 イライアスはどこか楽しげに指を数えた。


「物事が上手く行かない時、人は誰かに責任を押しつけたがるのさ。例えば神に背いた何者かがいるとか、王がふさわしくないとか理由を大衆は求めはじめた時に……」

「お前……悪いやつだな」

「ふふん、お前はいいやつだよ。だから好きさ」


 呆れるフレドリックにイライアスはからかうように答えると、フレドリックの肩を叩いた。


「その男を連れてきてくれ、フレドリック。私の方で世に広める手はずはとろう」

「……ああ」


 フレドリックはすぐに荷物をまとめて宿を出る仕度をした。


「……そうだ」

「どうした?」

「もし、私が戻らなかったらサイラスの証言だけでも大丈夫か」

「……お前にしては弱気な発言だな。まぁ、直接の目撃証言じゃないから弱くなるが」

「そうか。では行ってくる」


 そうしてフレドリックは部屋を出た。フレドリックはこれから名無しのいる村ハーフェンに向かう。それは彼の平穏に足を踏み入れるという事だ。


「娘がいる、と言っていたな……」


 守るものを前にして、名無しがどういう反応をするのか。フレドリックにはまだ分からなかった。


風邪ひいて更新遅くなりました! ごめんなさい

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