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最強の暗殺者は田舎でのんびり暮らしたい。邪魔するやつはぶっ倒す。  作者: 高井うしお
第一章

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12話 迫る脅威

「それじゃあ、早く帰ろ!」

「ああ」


 クロエと名無しはそのまま荷馬車へと向かったが、名無しはある露店の前で立ち止まった。


「クロエ、ちょっと待ってくれ」


 名無しの目に止まったのは露店の新聞だった。辺境まで届けられるそれは何日も前のものではあったが、名無しはそれを購入した。


「パパ、新聞読むんだね」

「……まあな」


 名無しがその新聞を買った訳は一面にあった第二王子が立太子した、という記事だった。


「なになに……魔王を討伐せし王子アーロイス、王太子となる、か」


 組織亡き今も、アーロイス王子を王に尽かせる工作は生きていたようだ。名無しに復讐の意志はない。名無しは痕跡を残さないようこの辺境に来るまで人里を避けて移動してきた。追手もそうは自分の居場所をつかめないだろうとは思っていた。


「じゃあクロエ、帰ろう」


 そしてまさかこんな小さな子供と畑に水をやり、クワを振るっているとは想像だにしていないだろう。

 名無しはくしゃりと新聞を丸めるとクロエとともに村に帰った。


「おお、クロエ、デューク。おかえり」

「ただいま、ヨハンおじいちゃん」


 名無しは食料品を家に運び込むと、荷馬車を返しにリックの元に向かった。


「助かった。返しにきた」

「おお、また必要な時は言ってくれ。それと、ちょっと相談なんだが」

「なんだ」

「この間の毛皮の代金なんだが、村じゃ教会に預けてもしもの時の積み立てに使おうって話してるんだがそれで構わないか」

「ああ」

「いやあ、じゃあ預けようってなった時にアルの意見を聞いていないってなってさ」

「気にしなくていいのに」


 そう名無しが言うと、リックはふるふると首を振った。


「そうはいかない。なんせ村を救った英雄だもの。それにアルもこの村の一員だろう」

「一員……そうか」


 名無しはその言葉を聞いて頭をがしがしと掻いた。



「……なんか機嫌がいいね、パパ」

「……そうか?」


 そんな名無しは夕食の時、クロエにそう指摘された。名無しはちょっと驚いてクロエを見た。


「パパはあんまりお顔が動かないけど、嬉しい事があった時はなんとなく分かるようになっちゃった」


 ふふふ、といたずらっぽく笑うクロエ。名無しはどの辺でわかってしまうのかクロエに聞いた。


「あのねー、ちょっとポワポワしてるの。麦を見ている時とか、今日も……お人形買ってくれた時とか」

「ポワポワ……」


 クロエの説明はちょっと要領を得ていなかった。しかし、名無しは当たっていると思った。そう、名無しは育っていく麦を見る時やクロエの笑顔を見る度に、くすぐったい気分になっていた。これが嬉しいという事。名無しはクロエの言葉を噛みしめた。


「もっともっとパパの嬉しい事が増えるといいな」

「何故」

「あたりまえだよ! パパの嬉しい事はクロエの嬉しい事だもん」

「そうか」


 名無しはそう胸を張るクロエの頭を撫でた。そして一家は今日も眠りについた。



 だが、その数日後……夜半に村の近くの森の中で不審な動きがあった。


「お頭、あれがその村だと思う」

「しけた村じゃないか」

「でもさ、町で聞き込んだ所によると近頃魔物を沢山狩ってその毛皮を売り払ったそうだ。今はほくほくのはずでさ。やつら教会にため込んでるらしいからそこを一気に襲えば……」

「へへ……易い仕事だな、そりゃ」


 夜の森の中、村を窺っていたのは盗賊だった。その数、およそ十数名。その盗賊団の名前は『赤蛇の団』。ゆすりにたかり、窃盗や人さらい、殺人もなんでもありの元は傭兵崩れの無頼者達であった。


「ついてないっすねぇ……俺達に目をつけられるなんて」

「まぁ、今夜にはみんなお陀仏だ」

「若い女は残しておいてくださいよ!」

「そらそうだな……がははは」


 予想外の驚異がハーフェンの村を襲おうとしていた。その頃、名無しは何か異変を感じたか、ぱちりと目を覚ました。


「……なんだ?」


 名無しの手が自然と小剣に伸びた。その二本の小剣を腰に差し、名無しは家を出た。寝静まった村は静寂に包まれている。しかし何かが違う。名無しの五感がそう告げていた。


「――……!」


 何かが聞こえた。方角は教会の方だ。名無しは教会に向かって駆け出した。



 その頃、教会では司祭が剣を突きつけられていた。


「さぁ、金のありかを吐きな!」

「わわわ、私は……」

「お頭! 女が居た!」


 教会を物色していた部下が見つけたのはエミリアだった。


「放しなさい。ここは神聖な教会ですよ」

「ほお、気の強いのは好みだぜー」


 エミリアの抵抗を盗賊達はあざ笑った。


「よし、この女が居ればいい。そっちの爺さんは殺せ」

「あーい!」


 盗賊が司祭に向かって剣を振り上げたその時である。まばゆい光が彼らを襲った。


「なっ、なんだ!?」

「暴力でしか生きられない……悲しい事です」


 それはエミリアの光魔法。光に包まれた盗賊達はへなへなと足をつく。


「なんだ……力が……」

「悔い改めてください」

「なんだこんなもの!」


 部下の大半はこの光魔法で床に倒れたが、数人なんともない者が居た。


「小娘、残念だったな」

「魔力障壁の防具……ですか」

「優しくしてやろうと思ったがやめだ。いたぶってやるから覚悟しな」


 エミリアは迫り来る盗賊を見て後ずさった。その手を盗賊ががっしと掴む。


「まずはその野暮ったい格好は無しだなぁ」


 にんまりと盗賊の頭領が笑った、その時。頭領の耳が消えた。


「……え?」

「お前の顔は野暮じゃないのか?」

「一体、どこから……」

「お前の死角から。基本だ」


 ――盗賊の頭領に刃を突きつける者、それは名無しだった。


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