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第6話



「ライドン元・公爵家。ジョシュア。アントン」


誰だろう。

父上の側近にしては声が若いし、今まで『聞いたことのない声』が名前を呼ぶ。

『ライドン』は宰相の名前だ。

兵士が『刑場』へ連れ出したのは、眠る乳児と小さな男の子だった。

唸り声をあげて宰相が身を(よじ)る度に、革のベルトが(こす)れて『串』が(きし)む。

宰相に気付いた子供が「ひいお祖父様!助けて!」と泣いて助けを求めると、宰相は更に身体を動かしたが、地中深く挿された丸太の串は音を鳴らすがびくともしない。

2人の小さな身体が『処刑台』にうつ伏せに乗せられて木枠で首を固定されていく。

泣き叫んで足をばたつかせて処刑台から『逃げ出そう』としていた少年だったが、再び銅鑼が鳴らされると同時に『ギロチンの刃』が落とされた。

場内に響いていた銅鑼の音が静まった時は、すでに少年たちの頭部と身体は台車に乗せられて、この場から運び出されていた。


何故だ。

何故、あんな『幼い子供』まで処刑されなければならないんだ。

――― 兄上は『悪魔』だ。

宰相がいつも言っていた通り、兄上は『人の心を失くした悪魔』になったんだ。

兄上のことを父上は嫌っていて、僕を可愛がってくれた。

いつも、父上は『公務』に僕だけを連れて行ってくれた。

そんな僕に兄上は『嫉妬』した。

だから「兄上は国王になりたくて、父上に謀反を画策した」と宰相たちは教えてくれた。

そしてあの日、「おめでとう御座います。本日よりゾルムス様が『国王』となられました」と(ひざまず)いて『臣下の礼』を受けたんだ。

――― 父上が・・・父上が『この場』にいたら、こんな『酷いこと』を止めて僕を助け出してくれるのに・・・・・・

こんな大変な時に、父上は何処へ『外遊』に出掛けているの?


子供たちが何十人も『処刑』されて、『処刑台』が片付けられた。

そして『絞首台』が30基用意された。

それは内側に向けて『楕円形』に並べられていく。

次に姿を現したのは20人近い大人だ。

彼らは口々に僕たちを罵っていく。

僕が自由だったら、『不敬罪(ふけいざい)』で手足の骨を砕いて苦しめてやったのに!

僕には『それ』が許されている。

父上がそう仰ったんだ。

だから、僕は『学院』でも『気に入らない教師や生徒』がいたら(バツ)として手や足の骨を砕いてきたんだ。

それを、ただ一方的に罵られて、言い返すことも罰を与えることも出来ない現状に、『実の兄上』とはいえ憎しみが湧いた。

こんなことが許されるのも『父上が不在』の今だけだ。

父上にお願いして、兄上への罰は絶対に僕がしてやる。




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