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追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに  作者: 怪ジーン
第一部 第二章 グルメール王国動乱編
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六話 幼女と青年、対策を練る

「いっただきますなのじゃ」

「えっ……あの、い、いただきます」

「はい、どうぞ。王女様にはお口に合うかどうか……」


 各々の前に置かれたレタスチャーハン。艶やかな米粒にレタスの鮮やかな薄い緑色が映える。


 ルスカは、チャーハンをスプーンで(すく)い口を大きく開けて放り込む。

大きく開けても元々小さい口のせいか、スプーンの持ち方が逆手だからなのか、ポロポロと口に入る前に溢れ落ちていく。


「ルスカ、王女様の食べ方を見習ってください」


 姿勢を伸ばし、必要最小限だけチャーハンを(すく)うと、スプーンの横腹から口に入れる。

一度入れたら、手はテーブルに添え置き飲み込むまで次の行動に移さない。


 その食べる姿はとても優雅で、アカツキもルスカも食べるのを忘れリュミエールを見ていた。


「あ、あの、私に何か……?」


 二人にジッと食べている顔を見られ、リュミエールは恥ずかしながら下を向いてしまう。


「アカツキ、アカツキ。掬って欲しいのじゃ」


 ルスカは突然自分のスプーンをアカツキに手渡す。アカツキは、訳もわからずスプーンを受け取ってチャーハンを掬う。


「アカツキ、あーんじゃ」

「へっ!?」

「なんじゃ、聞こえなかったのか。もう一度あーんじゃ」


 ルスカは目一杯小さな口を大きく開き目を瞑る。思わず、素っ頓狂な声をあげたアカツキに対し再び口を開けてきた。


 ちょっぴり恥ずかしがりながら、アカツキは溢れない様に上手く口に入れてやる。

ルスカは、背筋を伸ばして口を動かす。その間ずっと目を瞑っていた。


 ゴクリとルスカの喉をチャーハンが通り抜けると、手を自分の口にあてる。


「大変美味しゅう御座いますなのじゃ」


 アカツキがリュミエールを見習えと言ったので、ルスカなりに上品に優雅にしたつもりなのだろう。

アカツキは、一度プッと吹き出したあと大声で笑いだす。

リュミエールも、手で口を塞ぎ笑うのを堪えていた。


「楽しんでいる所悪いのですが、そろそろ入らせてもらってもいいですか?」


 三人が声のする方を見ると、玄関の扉を少し開けて覗いているアイシャが。

アカツキがすぐに扉を開けて家の中へと入れた。


「ノックくらいしてください。アイシャさん」

「しましたよー。声もかけましたし、仲良さげで入りづらいし」


 アイシャは、口を尖らせ不満を述べるがリュミエールの前に行くと真剣な顔に一変する。


「お初にお目にかかります。ワタシはリンドウギルドのギルドマスター、アイシャと申します。お見知り置きを」


 軽く膝を曲げ、アイシャは挨拶をする。


「グルメール王国、第二王妃の娘リュミエールです。こちらこそ、大変なご迷惑をおかけします」


 リュミエールは、アイシャを立たせると頭を下げた。


「アカツキ。アイシャより、まずご飯なのじゃ。冷めちゃうのじゃ」

「来て欲しいって言われて来てみれば、この扱い!」


 アイシャは結局三人が食べ終えるまで、玄関に立ったままでいた。



◇◇◇



 ご飯を食べ終え、アカツキとルスカが裏庭に皿を洗いに行っている間、アイシャはリュミエールから現状を細かに聞き取る。


「それでは、首都のギルドからも王族からも現状の伝令は飛ばしたのですね?」

「はい。しかし、なしのつぶてで」

「こっちには一度も届いてない所を見ると、握り潰されてますね」


 リュミエールも薄々それを感じていたのか首を縦に振り同意を示す。


「しかし、却って良かったのかもしれません。ギルドに届いていれば、本部にも連絡が行きます。

本部はレイン帝国と蜜月ですから、国王がそんな状態だとグルメール王国の国民の為と大義名分を掲げて、戦争になっていたかもしれません」


 戦争と聞きリュミエールは青ざめる。そこに丁度アカツキ達が戻ってくる。

話に参加すべく、桶をひっくり返し椅子代わりにして座ると膝の上にルスカを乗せた。


「それでは、初めに言っていた本部の協力は……」

「やめましょう。これはワタシ達だけで収めないと。もちろん協力者は必要ですが」

「今では誰が協力してくれるのかも、わからないですね」

「リンドウのギルドで信用出来るパーティーは居ます。彼らにも協力を頼むつもりです」

「こういう時はじゃ、問題点を挙げていくのじゃ」


 ルスカの言う通りだと、全員が納得するとアカツキ主導で問題点を挙げていく。


 大まかな問題点は二つ。


 国王をどうするか?

 麻薬をどうするか?


 リュミエールから聞いた現在の国王の状況から、とても治りそうにないと判断するしかなかった。

ルスカにも魔法で治せないか聞いてみたが、材料が分からないと厳しいらしい。

アカツキも常習性が高い麻薬と判断し、回復には相当の時間が必要だと考えた。


「問題はどうやって国王様に近づくかですね」


 リュミエールによると現在国王の周りには第一王妃の取り巻きだらけで、とても近付けない。


「民に国王の現状を知ってもらい蜂起させるのじゃ」


 ルスカは以前ルメール教を滅ぼした時と同じ案を挙げる。


「良い案だとは思いますが、我々が言って信用してくれるでしょうか? 王女様、他に味方になってくれる方は居ませんか?」

「母上の取り巻きで、現在左遷された方々なら……」

「うーん、好ましくないですね。そういう手合いは、私利私欲に走る可能性がありますし、出来れば中立の立場を貫いている方がいいですね」


 リュミエールは考える素振りを見せるが、どうも本当に振りっぽい。

既に心当たりはあるものの、言いにくいだけに見える。


「王女様?」


 アカツキの声で意を決した表情に変わる。


「一人おります。父上の弟、つまりは私の叔父にあたるのですが。ワズ大公という方が」

「ああ、確かに。あの方なら力になってくれるかもしれません」


 アイシャも、ワズ大公と面識があるのか手を叩き賛同する。

しかし、アカツキは一抹の不安を抱えていた。

問題は、ワズ大公の人柄だ。

それほど国王に近い人なら、下手をすれば敵対する可能性もあった。


「アイシャさん、ワズ大公ってどんな方ですか?」

「一言で言えば、頑固ですね。優秀な方で何より領民、国民の事を考える人です。

頑固と言えば、自分は弟だからと国王に推されても、頑なに拒んだと聞いています。

協力して貰えれば、パク……エルヴィス王子の後見人になって頂けるかも」

「しかし、それほど頑ななら、そもそも引き受けないのでは?」


 アカツキは頑固なら中立の立場を崩さないと考えたが、アイシャもリュミエールも否定する。

ワズ大公は最初に国民の事を考えるだろうと。


「何よりルスカ様に会われたら、引き受けてくれる確率は上がると思います」


 リュミエールは自ら意外な話を切り出すが何か隠しているのか、目線を下に向けて理由を話にくそうにしていた。


「どういう事じゃ?」


 ルスカは追及に答え辛いリュミエールは、口をモゴモゴと動かすのみ。


「ええい、はっきり言うのじゃ!」


 苛立ち始めたルスカに、リュミエールは体をブルッと震わし、渋々話を始めた。


「その……ワズ大公は、ルスカ様のファンなのです。今ある王室の絵本もワズ大公がボロボロだったのを直したとか……」

「ほぉ……」


 自分が壮健の老婆として描かれている絵本を直したと聞いて、ルスカは口角ヒクヒクと痙攣させコメカミには青筋が浮かぶ。


「よし、アカツキ。そのワズ大公も倒すのじゃ」

「倒してどうするんですか!?」


 怒り収まらないルスカはともかく、ワズ大公に協力してもらう事で皆の意見は一致する。

アイシャは、他の街のギルドと連携するべく動くので、ワズ大公の元にはアカツキとルスカとリュミエールが向かう事に決まった。


 外に出ると辺りは闇に包まれ、他の家々も寝静まったのか、静寂と僅かな明かりが窓から漏れているだけ。


 アイシャは一旦ギルドへ戻ると言い、アカツキ達と別れた。


 一方アカツキ達は、ランプを持ち全員である場所に向かう。

それは、西門近くにある豪華なお屋敷。

ここにリュミエールが乗っていた豪華な馬車を止めるように、御者に伝えていたからだ。


 御者の無事を確認するべく、お屋敷へと向かうと豪華な門の前には例の馬車が止まっていた。


 辺りを警戒しながら馬車に近づくが御者はおらず、馬車の中をランプで照らして見ても誰もいない。

少し心配になってくる。


「あそこじゃ、アカツキ!」


 ルスカの指差す方向にいたのは、路地の陰に隠れた御者だ。


「しっかりしなさい! ハンス!」


 リュミエールが呼び掛けると御者は、目を開ける。


「おお、王女様! ご無事で!」

「それは、私の台詞よ。ハンス……」


 御者のハンスに肩を貸し家へと戻る途中、ハンスの話では追っ手は来なかったらしい。

ハンスは、アカツキ達の方に追っ手が行ったのではないかと気が気でなかったと。


 しかし、実際はアカツキ達の方にも追っ手はなく全員が疑問に思う。

奴隷に追っ手をかけさせておいて、その後は無しと何か中途半端な気がする。


 不可思議な相手の行動に一抹の不安を覚えながら、家へと着くとハンスを休ませる。


「のぉ、アカツキ。相手の目的は何なのじゃ?」


 突然のルスカの疑問にアカツキも含め、リュミエールやハンスも考える。


「それは、やはり第一王妃の独裁……ですかね?」

「後継ぎの子供が居らぬのにか?」


 言われてみると、相手の目的が短期的な展望しか見えて来ない。


 養子。考えられなくはないが、エルヴィスという正当な後継者がいるし、国王がこうなったのも長男を惜しんでのはず。

養子で満足するならエルヴィスに期待を掛けただろう。


 相手の目的が不明瞭で行動も中途半端。この場にいた全員が一抹の不安を覚える。


 そして翌朝。全員の不安が的中する……

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