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追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに  作者: 怪ジーン
最終章 幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに
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六話 青年、聖霊王と融合する

 アカツキは聖霊王を型どった赤いオーラを身に纏い姿を現す。油断していたとはいえ、人風情に傷つけられたルメールの表情が眉間に溝が出来るほど怒り狂う。


「やってくれたな、人間!」

「余所見とは、余裕じゃの!!」


 一瞬の隙をつき、ガロンはルスカの襟を咥えてルメールの側から離脱する。逃げる際、ルスカは、ルメールをからかうように舌を出した。


「人形が──ぐううっ!!」


 更に二本の蔦が背中を貫き、ルメールは顔を歪ませる。所詮は人間と侮っていたルメールは、怒りを露にするも、すぐに冷静さを取り戻す。


『来るぞ、剣を抜け!!』


 聖霊王がアカツキに呼び掛ける。アカツキは剣を持っておらず戸惑うが、その答えをすぐに見つけた。聖霊王を型どった赤いオーラの腰の辺りに剣を携えており、アカツキは柄に手をかけた。


 向かってきたルメールに対して、抜剣すると、ゆらゆらと炎のように揺らめく剣が徐々に、その揺らめきを止め赤く輝く剣と成る。迎え撃つアカツキは、ルメールの鋭い爪を剣で受け止めた。


「くっ……!!」


 アカツキ自身が宙に浮いているためか、地面の踏ん張りが弱い。そのまま押し込まれていき、破壊された屋敷やルスカのいる方角から引き離されていった。


 アカツキは背中けら赤いオーラを纏ったエイルの蔦を伸ばして地面に突き刺し踏ん張るも、荒く乾燥した最果ての大地を削りながら押されていく。


「ふはははは、無駄だ!」


 鋭い爪を持つ爬虫類のような両腕で交互に切り裂きながらルメールは、高笑いをする。アカツキ本体に爪は届かないが着実に赤いオーラは削られていく。


「ガロン! アカツキを頼むのじゃ」

『シカシ、オ前一人ニハ……』

「ワシは大丈夫じゃ。ガロン、アカツキに力を貸してやってくれ。聖霊王と化したアカツキに手を貸すのは嫌じゃろうが……長年、反りが合わない聖霊王と神獣。互いがアカツキを介して協力すれば、きっと……。ワシも……ワシも、覚悟を決めたのじゃ」

『……ワカッタ。聖霊王ニハ嫌ダガ、アカツキナラバ……』


 ガロンはルスカからアカツキの方に目を向け、そして駆け出す。一人残されたルスカの瞳は、先ほどの落ち込んでいた様子はなくなり、力強い光を見せていた。



◇◇◇



「なんだ、あれは?」


 アカツキ達のいる上空へと辿り着いたパペットから下を覗き見たナックは、今のアカツキの姿、そしてルメールの姿を遠目ではあるが、二人の大きさに驚いていた。


 人の倍以上ある背丈に背中から生えた六枚の羽を動かす全身が黒い男がルメールだとは知らないナックにとって、怪物のように思えてしまう。一方、アカツキも今はガロンの巨体に跨がれるほどの大きさの赤い騎士のような姿。その全身はルメールすら上回っていた。


「お、アカツキのやつ、あの赤い騎士の中にいるのか」

「どうしますか、降りますか? 風は止んだようですが……」

「ちょっと待て……。あれはルスカ様か?」


 目を細めてみるナックは、アカツキから少し離れた場所にいるルスカを発見して、一旦ルスカのところに降りるよう、アイシャに伝えた。


「おーーーーい!」

「ナックか?」


 降りてきたパペットから声が聞こえてアカツキ達からそちらに顔を向けたルスカは、よろよろと足元が覚束なく立ち上がる。


「おいおい、大丈夫なのか?」


 ナックはパペットが地面に着く前に飛び降りると、ルスカの体を支える。


「大丈夫じゃ……少し、疲れたのかもしれぬだけじゃ」

「あれって、アカツキさんですよね? もう人じゃないですね、あれは」


 どうしても力で負けてしまうアカツキは、ガロンに跨がることで機動力を生かし、剣とルメールの爪が何度と交差している。互角とは言えないが、それなりに対応しているようにナックとアイシャの二人には見えた。


「人じゃないか……」

「あ……ち、違いますよ! アカツキさんは人ですから!! 別に変な意味じゃ!」

「いや、もうあれは人では止められぬのじゃ……ナック、アイシャ。お主ら二人は流星と、それとローレライに行きたいと言う住人がいればそれらを連れて、ここを出るのじゃ」


 二人は驚く。それはこの地にアカツキとルスカ二人を残すということ。パペットの魔石の消費は激しく、そう何度も何度もローレライとここを行き来出来る保証はない。


「心配するな、二人とも。この地は、今以上に荒れ果てる。負ければ、どうせローレライも滅びかねん。じゃから今はワシらを信じて避難するのじゃ。アカツキは……アカツキだけは、ワシがきっとローレライに帰してみせるのじゃ」


 ナックとアイシャは黙ってしまう。そして己らの力の無さに何をしにここまで来たのだと唇を噛む。ならば、せめて出来る事をと、二人は俯き加減だった頭を上げた。


「きっと、きっと……二人で戻って来てください!」

「そうだ、ヤヨイーも待っている! 二人で戻って来い!!」


 ナックとアイシャの言葉にルスカは目を細めて微笑み、そしてキッと目尻を吊り上げ力強く頷いてみせた。


 アイシャ達は再びパペットに乗り、今度は流星の元へと向かう。


 それぞれの役目を果たすべく……そして、それはグランツリーにいる弥生も他人事ではなかった。今、グランツリーにも危機が迫っていたのだった。

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